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PiCNiC 《詩》

「PiCNiC」

僕等は塀の上を歩いている 

世界の終わりを見に行く為に

君はハンプティ•ダンプティが
好きだと言っていたね

マザー•グースの童話の事なんて
よく知らない

そう言った僕に 

嘘だ、ハンプティ可愛いよ 

そう言って君は微笑んだ


随分前に精神病棟を抜け出した

男女が塀の上を歩く映画を見た

何だったっけ そうPiCNiCだ

僕はその映画の話しを君にした

ストーリーはいまいち覚えてない
忘れてる

もう一度 其の映画を観てみようよ

そう言って君とふたりで映画を観た


カラスの羽根を身に纏う彼女 

黒い羽根の天使

彼は地球が滅亡する日が来る事を
毎日祈り続けていた

彼女は彼に言う 

世界の始まりは私が産まれた時 

そして世界が終わるのは私が死んだ時だと

そうかもしれない 

僕等にとっての地球や世界なんて

僕等が産まれた時に始まり 

僕等の死と共に終わる

牧師のくれた本にも
地球は滅亡すると書いてあった

信じる者は救われると 

僕等は其の言葉を
信じてみる事にしたんだ

そうすると少しだけ気持ちが楽になった


世界の最後の日を見に行く為に

僕等は塀の上を歩き続けた

君はバスケットから目に見えない

サンドイッチを取り出して
ふたりで食べた 


天国は退屈そうで嫌だな 

地獄は熱いのかな 
それとも寒いのかな

そんな話しを僕等はしていた

世界で最後の食事を済ませた頃

空から世界で最後の雨が降り始めた

そして世界で最後のキスをした


君は自分自身の世界を
自分の手で終わらせたんだ

彼女は死んだ 

それは病気のせいなんかじゃ無い

其れを隔離し阻害し黙殺し嘲笑った
お前らのせいだ

僕は彼女を強く腕に抱いたまま 

地球が滅亡する日を夢見ている

世界の終わりを待ち焦がれている



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