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anarchism - ミラの女 - 《小説》
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「anarchism」 - ミラの女 -
あの すいません
ミラの方ですよね
僕はそう声をかけた
何? アンタ…
ぶっきらぼうにそう答える女性
玲子さんの友達ですよね
そうですよね
あっ アンタが誠君?
そう言って
僕の事をしばらく見ていた
頭の先から爪先まで
まるで何かの事件の
検察官の様な眼で僕を見ていた
僕は焦っていた
玲子さんの友達ですよね
もう一度そう訊いた
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その女性はポケットから
ハイライトを取り出し
火を付け吸い込み
煙草の煙を吐きながら
そうだよ
良くわかったね そう答えた
車でわかりました
前に玲子さんが
友達に借りて来た
車だってそう言ってたから
お姉さん玲子さんは
今何処に居るんですか?
お姉さんは知ってますか?
間髪入れずに問い続けた
やっぱり 玲子は
君に何も話さずに行ったんだね
玲子らしいや そう答えた
私 美幸って言うの
誠 アンタの話は
玲子から だいたい聞いてるよ
美幸さんは煙草を
アスファルトに投げ捨て
コンバースで踏み消して僕を見た
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