春花秋月 《詩》
「春花秋月」
春の花が咲いていた
時折 雨も降り風も吹く
それでも いつか陽の光が差す
そんな夢を見続けている
あの日 君は僕の知らない誰かと
楽しそうに話をしていたね
何でも無いふりをして
君の横顔を見つめていた
そんな僕の事を君は知らない
何処の誰よりも
僕は自分の事を
偽り続ける事が上手くなっていた
ドフトエフスキーの長編小説を
1カ月以上かけて読む君に惹かれた
いつだったか 君と話したね
貴方が不幸だと思うのは
貴方が幸福である事を
知らないからだと君はそう言った
僕は愛がありさえすれば
幸福なんて無くても生きていけるし
なんとかなるんだと思うよ
愛せないと言う苦しみこそが
地獄だと そう答えたんだ
君は 愛は何も支配しないものだよ
育てるもの
そう言って
ゲーテの様な微笑みを浮かべた
完璧だ いつだって君は完璧だ
少なくとも僕の目には
そう映っていた
僕は歪にゆがんだ夢の中で
君を求め続ける
何故だろう
あの日みたいに君が僕の直ぐ傍に
居る様な気がする
僕の告白が
君との最後の会話になりそうで
ずっと言えなかった言葉がある
其の大切な言葉を静かに
胸にしまった
春に見た花
愛せないと言う苦しみ
君の隣にはいつだって彼が居て…
あの日
見た花を僕はずっと探している
僕は育てるべき花を見失う
淡い秋の月明かり
時は止まらず流れて行く
雨も降り風も吹く
そしていつか
陽の光も差す
そんな夢を見続けている
春花秋月 時一刻