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ビートルズくらいは知ってる 《詩》
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「ビートルズくらいは知ってる」
喪失感の淡い翳りが包み込む
簡潔で無口ではあるが確実に
ある時は鮮明に
そしてまたある時は曖昧に
反社会的な要素を内包する
限り無く漆黒に近い群青の夜に
音も無きピアノの旋律
僕は其の免疫効果を徐々に失って行く
聴かせてくれよ指先が失くなる前に
リッケンバッカーの楔形をした
サウンドホールの奥に
いつか見た夢を探していた
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痛みはいつも
何の前触れも無く唐突に訪れる
痛みを示唆する感覚は消える事無く
群青に混ざり込む
僕等の意識の迷路の中にある
暗闇と死角
全ての感覚を奪い去り
沈黙の響きに耳を澄ませるのをやめ
暗闇の色に目を凝らす事をやめた
あてもなく夢を見る人達へ
僕はまた此処に戻って来たよ
相変わらず世界は 名指しで
お前のせいだ!
そう指を突き付ける事の出来る
特定の悪者を必要としている様だ
ヘイ•ジュード
ビートルズくらいは知ってるよ
始めよう
ロクでも無い朝がやって来る前に
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