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文学的自我 《詩》

「文学的自我」

夢見る事を 夢に見ていた俺達

明日が導いていると信じた

人の波に紛れた 

自分が何処に居るのか
わからなくなった

其れでも 

自分自身を捨てちゃいない

俺達はきっと同じものを探す為に
生まれて来たんだ 

手に入れたいものは 新しい朝


彼奴の苛立ちが
まだ風の中に残っている

まるで微小な埃の様に 

彼の文学的自我が空間を漂っている 

死者の形見の様に

彼の苛立ちと
俺の苛立ちが合致する時

俺は其の漆黒の空間に火を付ける

風に吹き消されない様に
用心深くマッチを擦る

記憶の導火線に火を付ける

奴等の掘り起こした死体は
俺によく似ていたらしい

違うんだ 全然似てない俺じゃ無い

もちろん彼奴とも違うさ

奴等には其の違いもわからない

俺達は誰にも似てやしない

良く見てみろ 心の中でそう叫んだ


インクとウィスキーの混ざり込んだ
匂いの中に

彼奴と俺の言葉が眠っている

其処には

確かに俺達ふたりの体温がある

誰かが忘れた
ガラスの靴なら此処にある


風の森から見上げた夜空

背徳の憂鬱を焼き尽くし

朝には忘れる呪文を唱える

俺は彼奴の教えた魔法を身につけ

半月夜に火を付ける

見えるだろう此の炎の灯りが

答えがもし同じなら間に合うはずさ

救いようの無い
絶望の影を消してやる

夜明けはまた夜を連れて来て

俺達は紅く尾を引く流星を見た

薬とアルコールが砂の絵を描く


お前達の掘り起こした死体は 
俺じゃ無い

お願いだシンデレラ 

俺達の朝を教えてくれ

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