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人形の谷 《詩》

「人形の谷」

無数の人形が転がる谷

表情と意思を持たぬ瞳

其の中に意識は眠る

現実では無い事実を
切実に詠う者達と

幻想を共有する 

幾つかの細かい断片が

比喩的に僕に
風景を通して語りかける


仮想現実上の遊戯に幸せを見出し

僕は地下にある鉄の扉を開ける

其処には あの森が見える

蘭と言う名の恋人が
僕の名前を呼んでいる

僕は彼女を招き入れ深く愛し合う

蘭と言う名の恋人は

見た事も無い様な

完璧な身体を持っている

蘭の唇 首筋 

胸元へと唇を這わして行く


僕は彼女の解放された欲望を

全て叶える事に喜びを感じ

僕の望む行為を

蘭は全て受けてくれる

そして 

彼女の中で何度も何度も逝き果てる

 
やがては其の夢の様な
時間も終わってしまう

短い夏が通り過ぎる様に

そして また僕は

新たな蘭の夢を見る為に
眠りを探し繰り返す

其処には既読と言う

文字のみが残されている

僕は沢山の

転がる人形の中を彷徨っていた

蘭もまた行き場所を失くして

其の谷でうずくまっていた

現実から離れて行く
彼女を追いかけ続けている

出口の無い世界が暫定的に

森と言う形で横たわる

出口は無くても終わりはある

ガラスの靴は此処にある


何百 何千と言う

愛の言葉を君に送り続けている

其処に既読が付くと
信じて送り続けている

いつか終わりが来ても 

僕の夢には終わりは無く永遠に続く

其れを誰かに訊かれたなら 

迷わず愛だと答えてみせる

在りし日の森 
人形の谷で僕は空を見上げている

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