anarchism - サヨコ - 《小説》
「anarchism」 - サヨコ -
腕のデジタル時計は
20:50を示している
10分前に待ち合わせ場所に着いた
高台にある市営住宅を
降りた小さな川沿い
其処に神社がある
周りには公衆電話と
自動販売機だけがあり
ぼんやりと暗闇を照らしていた
沈黙の夜を裂くように
渇いた重低音の
排気音が響いた
白いミラターボXXだった
運転席のドアが開き
玲子さんが降りて来た
玲子さん
この車…そう言ってミラを見回した
車高短にフルエアロ
社外マフラーに斜め45度に
取り付けられた字光ナンバーそれは
玲子さんには不似合いな
ヤンキー臭が漂っていた
このミラすごいでしょう
友達に借りて来たんだよ
そう言って玲子さんは微笑んだ
その夜の玲子さんは
黒いロングスカートに白いブラウス
黒いジャケットに
髪をおさげに結んで
黒い帽子を頭の上に
ちょこんと乗せていた
可愛い 車じゃ無いよ
玲子さんだよ
ゼルダのサヨコみたいだね
そう言った僕に
うん そうだよ
サヨコのイメージで
コーディネートしたんだよ
そう嬉しそうに答えた
乗ってよ誠君 そう言って
車の助手席のドアを開けてくれた