鏡の国 《詩》
「鏡の国」
すすきの穂を揺らした十月の風
金木犀の香り
銀杏の色彩
微かな
冷たさを含んだ風を感じていた
細長い雲が線を引く青
空は高く
高過ぎる空を見上げていた
その情景が映し出す過去の特異点
喪失の中に絡まる愛憎は
やがて再生に似た世界の終わりを
導く柔なか弧を描く
細い塀の上を辛うじて
バランスをとりながら歩く
静かに暗唱を繰り返す
鏡の国に君は居た
そして今も
澄んだ泉に君の姿が浮かぶ
僕は夕暮れの影から
それを見つめていた
君は黙って
高過ぎる空を見上げている
あの日と変わらない十月の風
限られた空間 鏡の国の中で