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箱庭 《詩》

「箱庭」

自然に流れる思考水路 

幾つかの可能性を示唆し僕自身を導く

焦点をひとつに定め
鋭く意識を其処に集中させる

だからと言って簡潔に

要を得ている物語が降りて来る訳では無い


色々な外部的価値には
たいした意味は無く

想いの全てを言語化する必要も無い

僕は意識と現実の中間にある

箱庭に居る


かつては其処にあった体制に向かい

反体制の旗を掲げる事が出来たが

辿り着いた場所には反抗しようにも

反抗すべき物が殆ど
残って居ない事に気がつく

心の片隅で漠然と感じ続けていた事

其の言い様の無い不安や葛藤を
少しづつ頭の中で実像化して行く

僕の視線は無意識のうちに

何処か落ち着ける場所を探し求めている

此処もどうやら違うらしい


僕の身体から温度を奪う様に刻々と
冷たい風が吹き付ける

そして冷酷に自分自身を追い詰め

成し得なかった事を
自分に対して言い訳する


孤独が人の心を蝕み 

約束された価値は何処に

そう自問自答を繰り返す

勝つ事だけなのだ 

勝てば其れが全て正しい

手を伸ばせば勝利はいつも其処にある

そう言った奴に

負けた事ねーだろう アンタ

小さな声で呟いた

肉を削ぎ血を垂らし どれだけ
長く手を伸ばしても

勝利とか言うやつは遥か遠くにしか無い


僕等がひとりの人間として 

世界をどう切り取って行くかは自由だ

其れに正しいとか

間違えだとかは存在しない

永遠に勝ち続けられる人間なんて
何処にも居ない


僕等の夢と欲望を巧妙に
現実そっくりに再現した映像を

グロテスクな装置が映し出す

勝利した者を愛し敗北した者を
極めて深く愛する

そんな物語のエンディングを嘘でも描いた

せめてもの別れの証に

意識と現実の中間にある箱庭で



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