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全ての夜は 《詩》
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「全ての夜は」
全ての夜は彼女の為にある
魅力的な気まぐれさを漂わせる仕草
煙草を口元にやる時の手
其の指先を見つめていた
日々の時間の単調さや
面倒な色々な出来事など
とりとめのない事柄は
背景の中に沈み込み消える
物事をそれぞれに帳尻を合わせ
それぞれの棚の上に
おとなしく収める
僕の現実そのものが…
其の何もかもが
手違いであるかの様に思えた
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彼女の指先の赤いネイルが
夢の欠片の様に
僕の意識の中に象徴的に形成され
輝かしき夢想を生む
僕は探る様に君を見つめている
ヴァイオレット ブルーの
アイシャドウ
救いと絶望が入り混じった瞳
世界の一番浮ついた部分を
寄せ集めた見本帳の様な
景色が流れている
惑わされる事なんて無い
誰も君を傷付けたりしないよ
ただの群衆だ そう君に話しかけた
だって不安になるから
いつだって最後は裏切られる
何度も彼女は僕にそう言う
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街には年末の
祝祭的雰囲気が漂っている
僕等は其の店の一番混み合って無い
テーブルに座り手を握った
ドーナツと珈琲を注文した
正面の大きなガラス窓から射し込む
青みを帯びた月光と
店内の薄れ行く黄色い電灯の色が
混じり合う
神秘的な魔法の様な夜明けを
頭の中に描いた
ずっと傍に居るよ
何度でも伝えるから
クリスマス ツリーの装飾の明かりが
キラキラと流れる様に輝く
可愛い
そう言って彼女は小さな声で笑った
全ての夜は彼女の為にある
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