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NO 《詩》

「NO」

其の場所で

人々は望みもしない
花輪を首に無理矢理かけられて

天国へ入る為の手続きが
保留無く進められている

もちろん全ての人が

天国に行ける訳では無い

選別、区別が巨大な機械的な
システムにより事務的に遂行される

決して暴力的では無いが
幻想的でも無い 

其処に神は不在だ 


其の場所の壁には

スキャンダラスな落書きが
無数に書き込まれている

其処は約束された場所では無い

選ばれなかった者達の恨みや憎しみ
に満ちた叫びに似た言葉が

殴り書かれている

嘘と不正義と書かれた壁の下で
一人の少女がうずくまっていた

自己満足で有頂天になった
名誉と誇りの旗を掲げた人達が

幾つもの花輪を首にかけ

少女の前を通り過ぎて行く

哀しみの衣を身に纏う僕に
話しかけて来る人は誰も居ない


沢山の人々が声に出してうなずく

YESの前で僕と少女は居場所を失う

YESと言えないのは僕等の
最後に残る純粋からだ

物陰に隠れて抱き合い

涙を拭きながら

声を殺してNOだと囁いた

独りじゃ無いよ 

そう言ってくれた君の言葉が
他の誰の言葉よりも嬉しかった

最後まで僕の手を離さずに居てくれた

非礼で軽率な風が吹き荒れている

ふたりは憎悪 戦争と書かれた
壁の前で愛を語る

日々 想う事が本当の言葉 

確かめる様に重なり合い

時間の中に溶け落ち 

無音の螺旋を描く

そして僕と少女の姿は少しずつ
消えて行き透明に近づいて行く

花輪も無く 静かに幕は降りる

深い霧と闇が僕等の匂いを
消し去って行く

少女の夢を見る様な黒い瞳の中に
僕が映っている

僕の瞳には君が

消える事無く いつまでも 

いつまでも


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