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仮面の瞳 《詩》

「仮面の瞳」

鮮やかな光 くっきりとした雲

空気はとても綺麗だった

この景色は何かしら懐かしい

前に何処かで見た事がある

ずっと考えていた

草の匂いと風の肌触り 光の輝きも

此処にある全てが僕が子どもの頃に
体験したものによく似ていた

其の僕の乗った電車は
いくつかの駅に
止まったはずなのだが 

思い出せない 

誰かが電車の非常ベルを鳴らした

何処だかわからない 

電車は何事も無かった様に
走り続けて行く

これは何かが変だ 

言葉にならない声がする

凄く綺麗な夢と 凄く怖い夢を見る

夢は夢でしか無い 破られるんだ

その事は僕にもわかっていた

出来る事なら怖い夢だけ
消して欲しい

ずっと綺麗な夢だけ見続けていたい

僕は此処を見ている様で 
ずっと向こうの遠くを見ている

同じスーツに同じ靴 
同じコートを着た人達が歩いている

そんな街にある駅で電車は止まった

僕は電車を降りずに
座席に座っている

此処は僕の降りる場所では無い 
そう感じたからだ

随分と待って居たが
電車はもう動き出さない 

ドアは空いている

仕方なく電車を降りた 

ピエロの仮面をつけた
無数の人の海 人間

クリーム色のビルディングが
スクラップに見えた

男が僕に仮面を手渡す 

ピエロの仮面だ

その仮面の瞳からは涙が流れていた

僕のスーツの内ポケットには
銃が入っていた 
僕は入れた覚えは無い

其れで全てを理解した 

僕は銃を取り出した

無知な奴等の無知な笑い
誰に僕達が裁けるのかと

だから銃を取れ

綺麗な夢だけ見ていたい

草の匂いと風の肌触り 光の輝き
くっきりとした雲

空気はとても綺麗だった

電車はもう動き出さない


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