還暦を過ぎても、“若々しく”生きるためのひとつのアイデア
「人生100年時代」をいかに生きるか?という問いについて考える時に、余りにも当たり前なこと過ぎて、見過ごしてしまいがちなのが「年齢」というものの多面性だと思います。
ほとんどの人が当たり前に考える年齢は、「暦年齢」でしょう。生まれてから何年経ったかを表す数字ですね。
「今、おいくつですか?」
「はい、もう少しで60歳になります」
「そろそろ還暦ですね。おめでとうございます!」
「還暦」の何がおめでたいかは別にして、この会話に特に違和感を感じる人は少ないでしょう。
「年齢」とは、生まれてから何年を生きて来たかを表す数字だと、多くの人が思っています。
しかし、ちょっと考えてみると、この世の中には、実にさまざまな「年齢」があることに気が付きます。
例えば、「健康年齢」という考え方があります。
「あの人は、若い」という言う時は、対象となっている人が「暦年齢」よりも「若く見える」とか「若い人と同じレベルの運動能力を維持している」といったことを表しているでしょう。
逆に「あの人は老けている」と言う時は、「若い」とは反対に、対象の人が「暦年齢」よりも「歳をとっているように見える」とか「実際の歳よりも運動能力が低下している」といった意味で使われるものでしょう。
この「健康年齢」という考え方は、肉体がどれくらい若いか(or 老いているか)を表す「生物学的年齢」に基づいたものだといえるでしょう。
また、年齢には「主観的年齢」というものもあります。
他人からの評価や“見た目”ではなく、あくまでも自分が自分自身の状態をどう感じているかを表す年齢です。自分はどの程度若いのか、あるいはどの程度老いているのか、ということに関しては、誰もが何らかの感覚を持っていることでしょう。
しかし、こうした「健康年齢」や「主観的年齢」といった考え方や概念は、「社会的年齢」というものの影響を極めて強く受けていると思います。
「社会的年齢」とは、個人の年齢を社会の常識や規範に照らし合わせて認識される、その年齢の“イメージ”といえるかもしれません。
「まだ、10代なのに、なんと恐ろしいことを…」とか、
「そろそろ30歳にもなるんだから、もう少ししっかりして!」とか、
「60歳にもなって、何をしているんですか?」とか、といった言い方は、全て何らかの「社会的年齢」を前提にした発言でしょう。
そして、日本という国は、この「社会的年齢」というものが、とても大きな存在として、社会に定着し、強い影響力を持っているように思います。
例えば日本では、テレビや新聞のニュースに人が登場する時には、ほとんど場合、その人の年齢が表示されています。これは、暗に該当する人がやったことの是非を判断するためには、年齢を伝えることがとても重要だと社会的に信じらている(又は、一定の合意がある)からでしょう。
また、日本の働き方を規定している「新卒一括採用、年功序列人事、定年制」という3点セットは、まさに「社会的年齢」に基づいた社会のオペレーション・システム(OS)ともいえるものだと思います。
このOSが広範に社会に定着しているために、私たちは、自分自身の年齢に対する認識(「主観的年齢」)ではなく、「社会的年齢」に自分を合わせてしまう傾向が身についてしまったのではないでしょうか?
特に「定年制」は、一人ひとりの健康状態や職務の遂行能力、体力、健康状態といった諸条件を一切考慮せずに、「暦年齢」のみで強制的に社会的役割を変更するものといえます。
「人生100年時代」といわれる超長寿時代を楽しく生きていくためには、この「社会的年齢」の呪縛から逃れることが必要です。
そこで、還暦を過ぎ、定年を迎えた皆さんにオススメしたいのが、「還暦で0歳に戻って、暦年齢をカウントし直す」ことです。
私は、61歳の誕生日を迎えた時に、フッとした思いつきでしたが、「60歳で還暦を迎えて、人生一回りしたわけだから、もう一度、0歳からカウントし直してもいいのではないか?」と考えて、家族に「今日は、パパの1歳の誕生日!」と宣言しました。
最初は、怪訝な顔をしたり、首をひねっていた家族も「まあ、そうしたいならお付き合いしましょう」というノリで、特に否定も反対もしなかったので、我が家では、私は「1歳児」ということになりました。
しかし、このバカバカしいアイデアは、意外な効果を生んでいるように思います。
何といっても61歳になった時には、やはり「社会的年齢」の影響からか、自然と「もう61歳か〜」という言い方が口を突いて出てきてしまうのですが、さすがに1歳と認識すると、「もう1歳」とはいわず、「まだ1歳」としか言えないわけです。
この「もう」と「まだ」の違いが大きい。
「まだ」と口にするだけで、ほんのちょっと“若さ”を感じることができます。そして、常に「まだ」と意識していることによって、何となく元気が出たり、身体に力を感じたりということも、実感として感じることが出来るようになって来ます。
「人生100年時代」を元気にワクワク生きていくために必要なことは、とにかく“若々しさ”を失わないことです。
そのためのひとつのアイデアとして、「還暦で0歳に戻って、年齢をカウントし直す」は、オススメです。
仏教の世界では120歳を「大還暦」というそうです。60歳の還暦を迎えたら、一度、0歳に戻って、次の60年後の「大還暦」を目指してみるのも一興です。