『GO! DX プロジェクト』 STEP2 DX専属の組織(2)
今回も「GO! DX プロジェクト」として、DXプロジェクトの推進について書いていこうと思います。基本的には毎週金曜日の配信を予定してます。
さて、今回は前回の続き「STEP2 DX専属の組織」(2)です。
前回、前々回は、こちらのマガジンから参照いただけると嬉しいです。
では、また「DXの実現ステップ」から始めます。
前回は「STEP2 DX専属の組織」では「まずは人材です」という話をしました。
今回もその続編として「STEP2 DX専属の組織」(2)です。その人材をどういう枠組み(組織)として運営していくかということを考えていきたいと思います。
もう一度、おさらいとして、DXとは、企業変革のための手段です。
下の図のように様々な環境変化に対応するための変革です。
企業変革については、こちらも参考に、、、
では、「その企業変革を実施していくために必要なDXを推進する組織構造はどうあるべきだろうか?」を考えていきたいと思います。
前回は、「目的を的確に理解し実行できるリーダーを選出してください」という話をしました。
そして、目的は企業変革なのでDXプロジェクトのオーナーは経営者、CEOであるべきですと。
「その体制はどうあるでべきか?」ということで、いきなり体制(案)を示します。
まあ、こんな感じです。奇抜なものではないと思います。
重要なのは、上位の2つのポジション「プロジェクトオーナー」と「プロジェクト・リーダー」です。
DX推進プロジェクトにかかわらず、上位2つのポジションは重要です。
その配下に、DXのビジョン・戦略を検討するチーム、それと連動して、UX/CXの顧客起点での体験価値を検討するチームと業務起点での体験価値(従業員起点)を検討するチームを据えます。
あとは企業の状況や必要性に応じてチームを作れば良いと思います。
それと、もう一つ重要だと考えるチームがアーキテクチャ設計するチームです。
これも前回の記事を参考にしてみてください。
次にその組織、チームをどのように運営していくかということを考えてみたいと思います。
理想は、いわゆる「アジャイル組織」での運営です。
「アジャイル型組織」とは、新たな価値を素早く継続的に提供するために、迅速な意思決定や開発サイクルを可能にした組織理論です。
「DX」は、デジタル・テクノロジーを活用した企業変革です。
そして、企業変革を行うには、人的資本とその資本を有効活用するための組織は重要です。
この環境変化のスピードが速く、混沌とした時代において、どのような組織が理想なのかを考えてみたいと思います。
多くの企業は、階層型の組織が多く採用されていることと思います。
トップダウンで強力にマネジメントできるのであれば、それは問題はないでしょう。しかし、多くの企業は意思の伝達に問題や課題を抱えているのではないでしょうか。
トップは、伝えたつもりになっているだけかもしれません。
そのトップの意思はどのようにすれば伝わり、全ての従業員がその意思を持って行動を起こすにはどうしたら良いでしょうか?
「アジャイル」には、俊敏な、素早いと言う意味があります。「ピラミッド型の組織」では、権限がトップにあり、組織に上下関係が明確に存在します。
情報の伝達に時間がかかり、柔軟性に欠け意思決定も遅れるといった、典型的な大企業病です。
「アジャイル型組織」は、フラットで風通しがよく、各レイヤーや個人に権限が委譲されます。そのため、意思決定までの時間が短く、素早く行動することが可能となります。新たな価値を素早く継続的に提供するために、迅速な意思決定や開発サイクルを可能にした組織理論なのです。
では、階層構造を排除したフラットな組織にすれば良いのでしょうか?ただ組織の構造をフラットにするだけではダメです。
逆に、組織自体は階層型であったとしも、意思伝達、情報伝達の仕組みがフラットであれば良いのです。
そのような組織を、「無重力組織」と呼んでいます。
上図のように、階層構造の組織では、上下左右のさまざまな壁に阻まれ情報の伝達等が滞っています。
その一方で「無重力組織」とはどのようなものかみてみます。階層構造の組織図のピラミッドを円錐に見立ててみます。
ここで、円錐を縦に割った断面図と円錐を横からみた断面図、横から見るか、上から見るか、ただそれだけで、物事は一変します。
ここで重要なのは、「重力のある組織」と「無重力な組織」の切替です。
フラットな組織とは?「無重力」であることと考えています。
逆に「無重力な組織」であれば構造は階層構造でも良いのです。
組織構造は、階層型の組織であったとしても、組織の運営や情報伝達、権限の委譲を「無重力組織」でオペレーションするという考え方です。
世の中の構造は、複雑で市場や顧客のニーズは常に変化しています。その変化に対応するために柔軟な組織を構築するということが重要です。
では、そのような組織はつくれるでしょうか…
もし、その時に最適な組織ができたとしても、その時点から組織の陳腐化は始まっていきます。複雑で変化の激しい不確実性の時代において、複雑なものは複雑なまま認識しましょうということです。
未来を想定した組織など作れないであれば、運用方法だけでも柔軟にしましょうと…
それが、「無重力組織」です。
階層構造の組織はそのままで、組織の運営を「無重力組織」で行うということです。ここに簡単に説明したいと思います。
【情報伝達の拡散と集約】
Why(リーダー)を中心に上から下への情報伝達ではなく、水の波紋のように全体に広がる構造です。情報が満遍なく、伝言ゲームにならず、フィルターなしに伝わります。無重力な構造なため、組織間の壁もなく、情報が横にも中央にも広がります。
【意思決定の層の分散化】
階層的な構造のハコから飛び出し、「何をするか」を重視します。そのため、「Why」を意識しつつ、その仮想的な無重量な組織で、素早く意思決定できるように権限を委譲します。各チームで意思決定された内容についても無重力なため、情報や状況が共有されます。
【壁の撤廃】
「無重力な組織」では、組織間の壁も撤廃します。壁を撤廃することによって、セクショナリズムもなくなります。一度、上にあげてから別の部署と連携をとるような重力がなくなり、企業内の取引コストが削減できます。
【情報共有の範囲】
情報共有の範囲が広がります。階層的な組織では情報の伝達は、社内にしか伝わりません。(社外に発信するには、別の経路で発信します。)
無重力な組織では、中央のリーダーから波紋のように情報が伝達し、組織の外にも広げることが可能です。その情報は誰もが認知されていてオープンです。
資本主義の限界がささやかれる中で、CSVやESG、SDGsといった社会貢献の価値が高まっています。社内も社外も企業に関わる全てのステークホルダーに対して情報発信することも重要です。このような全てのステークホルダーとの接点を持つことにより、イノベーションの種が生まれます。その種を、デジタルテクノロジーを、活用してビジネスモデルにのせる。そのような組織体系を作っていくことです。
構造的な組織に対して、無重力なバーチャル組織で運用することです。無重力な組織にすることで、「近くの知を結合するだけでもイノベーションは起こる」かもしれません。「灯台元暗し」です。
最後に、人材と組織運営について書いてきましたが、最初から完璧にDXを推進する人材や組織は構成はできないことの方が多いと思います。
そのプロジェクトを通じて、変革人材の育成、継続的な人材の確保を行なっていく必要があると考えます。また、環境の変化も非常にはやい中で、最初の組織や運営方法についても状況に応じて変容させていく必要があります。
この人材と組織とそのマネジメントについて最終的な意思決定について、プロジェクトオーナーである経営者・CEOが深く関与しながら推進していくべきだと考えます。
組織が構築できたら、次はデジタル化のアイデアを出して実行していきましょう。
次回は、STEP3「デジタル化のアイデア」について考えていきたいと思います。
では、また来週〜
つづく