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弱者の歴史

悲劇のヒロイン症候群


大抵の方はしばしば過去を悔やむようです。問題はそのときの思考方法です。

そのとき誰かを責めてはいけないのではないかなと私は思うのです。
「現在の自分が悲惨なのは、Aさんのせいだ、Bさんのせいだ、Cさんのせいだ」みたいに過去を悔やむのは、どうなのかなあ、と。

私はそのような過去へのまなざしを「弱者の歴史観」と呼んでいます。
「歴史観」とか言うと難しいと感じられる方もいらっしゃると思いますが、一個人レベルで捉えるならば「悲劇のヒロイン症候群」のことです。

つまり現在の自分の悲惨さの原因をすべて他人のせいにする、自分の周囲の人物をみんな悪者にしてしまう、そんなものの見方です。
でも、みんな、神様から祝福されて生まれてきたはずなわけで。生まれながらの悪者なんていないはずなわけで。周囲の人の悪いところしか見ていないんじゃあないかな、とも言えるわけです。

自分の周囲の人々をすべて悪者としてみなすというのは、周囲には敵しかいないというわけで、要するに、自分には友達がいないと言うことだよね。
別の言葉で言えば、自分には社会性がないと。
それって、人間(=社会的動物)として、間違えているんじゃないのかなあ。

誰でもかかる可能性のある病気


恐ろしいのは、誰でもこの悲劇のヒロイン症候群にはかかる可能性があるということです。
実際、たしかに悲惨なめにあった方はしばしばこれにかかるのです。具体的な人物に言及するのは難しいので、国で説明してみましょう。

例えば韓国みたいに本当に可哀想な旧植民地諸国。
「日本もアメリカも中国もソ連もみんな悪者だ、みんないじめっこだあああ」みたいな。
そのくせ自分がベトナムにしたことは都合よく忘れているとか。

もちろん日本だって例外ではありません。
「折角、アジアを白人たちの帝国主義から解放してやろうと大東亜共栄圏構想を掲げたのに、結局、日本人だけが悪者にされて、アメリカから原爆は落とされるわ、ソ連にはシベリア送りにされるわ、そのくせ未だに中国や韓国からは植民地責任を訴追されて、ひどいわひどいわひどいわ」みたいな。
まったく共感できないわけじゃあないけど、でも何故、他国がそのようなまなざしを日本に向けているのかを理解しないと。

さらに最近では、あのアメリカでさえ悲劇のヒロイン症候群にかかったようです。
トランプさんなんかは、典型的でしょう。「アメリカの白人は不当にいじめられている」というのが彼の主張みたいです。

間違えた治療法


どのようにしたら悲劇のヒロイン症候群にかからずにすむのでしょうか。
あるいはどのようにしたら悲劇のヒロイン症候群を治すことができるのでしょうか。

しばしば見られる間違えた治療法が、自分を悪者扱いして、自己批判を重ねるケースです。「自虐史観」とも呼ばれますよね。
「すべては私が悪いのです。謝罪します。謝罪します。謝罪させていただけないでしょうか」みたいな。リベラルさんがお好きです。
でも「すべては私が悪いのです」って、「私以外のすべてが悪いのです」の裏返しですから、やっぱり正常ではないと思うのです。他者との普通にニュートラルな関係ではない。

国家単位ならともかく、個人単位ですと、この種の方々は最終的には自殺にたどりつくと思います。
遺書にはただ一行、「ぜんぶ、私が悪いのです。生まれてきてすみません」みたいな。
これはこれで違うでしょう。

すべての悪を自国(自分)のせいにするのも、すべての悪を他国(他人)のせいにするのも、おかしいですよ。間違えています。

正しい治療法


私は悲劇のヒロイン症候群の原因は二つあると思います。①善悪にとらわれすぎていること。②未来志向ではないこと。ですから正しい治療法はその二つの逆を行くことになると思います。

つまり過去に自分(自国)の身の上に起きた出来事を善悪から捉えるのではなく、善悪を超えたところから観察して、過去から未来のための教訓を引き出そうとする―、それが悲劇のヒロイン症候群の正しい治療法ではないでしょうか。

けれどもこれを実践するためには、自国(自分)を、ある程度つきとばして、距離を置いて、冷静に見据える眼が必要となります。
それは孤独な眼でしょうが、その眼に映っているものは、自国(自分)と他国(他人)との多様で複雑な関係であり、また、当事者たちの意思や行動を遥かに超えた時代的被制約性であることでしょう。誰もが自由意思に基づいて行動できるわけではない、フリーハンドを持っているわけではない、そのことも肝に銘じておくべきですよね。

ではでは。
自分の弱さを認めたうえで、弱さのなかにとどまっているのではなく、強くなろうと、そしてそのさいできることなら周囲の国々(人々)と手を携えて共に強くなっていきたいと、そんなふうに願いながら、生きていきたいものです。自戒を込めて。

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