思いつきのキャンプ。非日常は、子どもたちの成長に気づくチャンスだった
「明日キャンプに行こうか。河口湖で楽しそうなクラフト作り見つけたからさ」
夫から突然、提案があった。先日の週末は、上の息子のサッカーが唯一ない土日。しかも、この梅雨時だというのに天気予報は晴れマークだった。
連日の雨続き。つらいニュースも多く、すっかり気持ちが滅入ってしまったのか何をするのも億劫で、しばらくボンヤリと過ごしていた。しかし、この一言でムクムクとやる気が湧いてきた。
「いいね!」とさっそく、キャンプ場探し。あいているロッジを見つけて予約。これまで何回かキャンプをしてきて、テントをはるのが実はとてつもなく面倒だと気づいてしまった私。最近は、もっぱらロッジ派だ。
息子たちは、キャンプ行きを聞いて大喜び。上の息子は、夫が見つけてきた「バードコール」クラフト体験(鳥のなき声のような音がする木の筒を作る)が楽しみのようだった。
久しぶりの家族旅行での非日常で、私は少し元気を取り戻した。やはり、たまに味わう非日常は大事だ。非日常だからこそ気づける2人の成長も沢山ある。相変わらず、2人の感情の乱高下は激しかったけど。でも、あと何回、家族旅行に行けるかしら?とも思う。
そんな貴重な家族の、非日常で見つけた気づきを書いてみる。
波乱の幕開け。「バードコール」作り
行きの車の中。私は、あらためて夫が探してきた「バードコール」作りのHPをチェックしてみた。もしかすると予約が必要かもしれない。
そして、HPをよくよく見てみると、このご時世の中、一般客は受け付けていないとの旨の記述を見つけてしまった……。あちゃー、長男あんなに楽しみにしてたのに、「やってないやん?」。
それを聞き、まず長男が荒れた。
「せっかく楽しみにしてたのに!バードコール作りできないなら、もう帰る!!」
車にのせられて、絶対に帰れるはずのない状況で、そのようなことをのたまう9歳息子。いやいや、他に楽しいことあるからさぁ…と声をかけるも、そんなに楽しみにしていたのか…と不憫に思い、他にできるところはないか探してみた。
すると「西湖野鳥の森公園」でバードコール作りができそうな記載を見つけた。でも、HPに告知が大々的にのっているわけではなく、誰かがそこで体験したよ、というような、さらっとした記載をみつけただけで、やっている可能性は高くない。
さっそく、ダメ元で電話をかけてみる。
「あの~すみません。そちらでバードコール作りをやっているのを見かけたんですけど…?」
「えーと何人?いつですか?」
「2人です。今日なんですけど…難しいですかね?」
「あ~、やってるけどもねぇ。何日か前に予約してもらわなくちゃいけなくて。それに6人からなんだよね。受付に私1人しかいなくて、準備もいるからね。」
「そ、そうですか…、でも息子がバードコールづくりをとても楽しみにしてて。やっぱり人数は4人でお願いしたいんですけど……(そこをなんとか!!)」
最初は、こどもたち2人でいいかと思っていたが、急遽変更し家族全員でやることにして交渉を試みる。これで6人に少し近づいて、交渉成立なるのか?(実は交渉好きな私)
「うーん。そうねぇ。何時?」
「14時ごろでどうですか?」
「わかった。いいですよ。」
やったー!!!いい人で良かった。というわけで、無事、バードコールづくりの予約を取り付ける。波乱の幕開けではあったが、コレで一安心だ。
その後も、夫が案内を楽しみにしていた「胎内洞窟」は連日の雨降りで、洞窟内が水浸しで入れないなどのプチ波乱は続いた。そこで計画を変更し、風穴、氷穴へ。満を持して念願のバードコールづくりへ。
これが、木をノコギリで切るところからやるという本格派だった。直径3cmくらいのイチイの木の枝を、ノコギリで切っていく。木工工作が好きな息子たちは、目を輝かせている。親切に教えてもらえて、とってもよい体験になった。
木を切った後は、ヤスリにかけて、ケバをとっていく。
そして、電動ドリルで穴を貫通させる。
そこに金属のネジのようなものをはめ込む。そのネジを回すと「キュッ、キュッ」と音がして、鳥の鳴き声のように聞こえるのだ。
高原の中で、これを鳴らすと、高らかに澄んだ美しい音が出る。私達は気に入って何度も鳴らした。高原の木々の中で音を鳴らすと、同じようななき声で鳥たちが答えてくれたような気がした。
思いがけず手に入れた、4このバードコール。良い思い出になったが、家で鳴らすと、全く音の趣が違った。ただの高い音のような気さえする。あれは、高原マジックなのか。
また、いつか高原に行って鳴らすのが楽しみだ。
キャンプ場で火遊びに目覚める
その後、キャンプ場に移動。木で作られた簡易ブランコがあり、そこで2人は楽しそうに遊んだ。ブランコだけで、よくそんなに楽しそうに遊べるなと感心する。車から荷物を運びだして、いよいよ料理の支度タイムに突入。炭に火を付ける。
いつも、この火起こしの役目は夫がやっているのだけど、今回のキャンプでは、上の息子が興味を持ち、やりたいと言い出した。
家族では、夫は「火起こし先生」ということになっている。夫から火起こしを学びつつ、息子たちは、「たいまつ」という遊びに夢中になった。ヒノキやマツの木の先の葉は、非常によく燃えるので、枯れ枝を見つけてきて、その先に火をつけて遊ぶというものだ。
「たいまつ、たいまつ~!!」と、うまく、火をつけては、写真を撮ってくれとせがむ。松明をもっているのは、どうやらイケていることのようだ。
危なっかしくてたまらない遊びだが、火に親しむことは大事だと思うから、できるだけ冷静に見守る。でも、ついつい「危ない、ああ、あぶないっ~~」と声がもれる。
「そんなにアブナイ、アブナイ!言われると、楽しくなくなるんだけど!」と長男に言われて、こちらもムッとしてしまう。
だって、危なそうなのよ……。私も言われたのが癪で、少し遠くへ移動して夫に2人の見守りは任せることに。
まぁ、そんなプチいざこざもありつつ、火起こしや火遊びに興味を持ったことにも成長を感じた。今までは、怖がってやろうとしなかったからね。
思いがけず見せた「優しさ」
ふだんから、仲良く遊んでいるかと思えば、そんなことで?なことで、いざこざがしょっちゅうある2人だ。今回のキャンプでは、2人で遊んでくれて親の介入が必要のない時間が長くなり、そこにも成長を感じた。
ちなみに長男は、わかりやすい優しさをあまり表現しないタイプだ。TVもiPadも、自分の見たいものを優先して、弟に譲ってあげるという優しさは今の所はあまりない。それで、いつも「お兄ちゃんが見せてくれないー」というトラブルが起こっていたりもする。
その度に、「どんな気持ちになるかな?何が見たいか聞いてあげよう?」などの声をかけているのだけど、なかなか難しいようだ。
しかし、危険から弟を守ろうとすることにかけては、いつも一生懸命だ。突然走り出した弟に、すごいスピードで追いついて、「おい、危ないだろう」と言って止めてくれたり、弟を守ろうという気持ちは強い。
河口湖で、モーターボートに乗ってみたいといい出した次男。モーターボートでも、そんな優しさが垣間みられた。
モーターボートは白いハットをかぶった、いかにも湖の男?風に日に焼けた運転手さんが乗せてくれた。湖の端まで来て、ルートを折り返す時に、「ちょっと回るよ。危ないからねー」といって急旋回。そのため、ボートが30度くらいに傾いて、思わず振り落とされそうになるほどだ。
そんな時に、「おい、俺につかまれ!!」と言って、しっかり弟を引き寄せて振り落とされないように抱きかかえた長男。そんなところに優しさを感じる。モーターボートの最中、彼はずっと小さな弟が振り落とされないように、腰に手をあてて守ってくれていたのだ。
(今思えば、この2人を左右逆に乗せればよかったなと思う……)
帰宅してから、その写真を見て、夫がポツリ、「長男くんも、優しいところあるよね」。うんうん、優しさには色んな表し方がある。普段はなかなか見られない彼の優しさが垣間見られ、私も嬉しくなった。
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その後、長男が恒例のトンボとりをしたいといい出す。彼のお気に入りの本栖湖のトンボスポットへ移動。こういうときは、何が何でも、自分のやりたいことを優先させようとするのが彼流。
今回は、ギンヤンマを狙っていたけど、まだあまりいなかったようで、全く獲れなかった。今回は、とれなくても泣かなかったし、自分の中で折り合いをつけ、スッとトンボタイムを終えることができた。
昨年だったら捕れるまでずっと動けなかったはずだから成長だ。次男も、機嫌よく長男のトンボとりタイムを待つことができた。
私はと言えば、キャンプとなると、必ず夜中にトイレに行きたくなる性質は健在。今回、トイレへの行き帰りの道で見上げた空が、満天の星空だった。なんだか、ご褒美みたいな星空に感じた。私以外に、他の家族は誰も見ていない星空。夜中のトイレはいつも億劫だけど、そのおかげで美しい星空との遭遇率は高い。
もうすぐ、本格的な夏がやってくる。
夏休みは、まだほとんど予定は立てられていないのだけど、こうして、何かできれば非日常な想い出ができるといいなと思うのだ。