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宇宙について「考えずにいられない人」と「考えないと決めている人」
何気ない話の流れで、私が学生時代に宇宙進化やブラックホールについて研究していたと話すと、必ず
「どうして、宇宙に興味をもったの?」
と、親切に聞いてくれる人がいる。
それで私は、「そういえば、何故なんだろう?」と考えることがよくあった。思えば私は、子どもの頃から「考えずにはいられない人」だった。今も、ふとしたときに宇宙について考えるし、宇宙に関する仕事もしていたりする。
一方で、全く宇宙について考えない人、もしくは「考えないと決めている人」がいるらしい、ということにも、大人になってから気がついた。気づいたときは、軽く衝撃だった。
そういう方たちから見れば、きっと私は、不思議な存在にちがいない。
というか、宇宙について、日常的に考えている人の方が、実は珍しいのかもしれない。
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NASAの最新の宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope,JWST)から最初に送られてきた画像。約40憶年かなたにある銀河団 SMACS 0723
宇宙について考えないと決めている人
「宇宙について考えないと決めている人」がいることに、初めて気がついたのは、社会人になって何年もしてからのことだ。
オフィスの席で向かいに座っている、とある先輩が、それを教えてくれた。
本が大好きな先輩だった。
先輩が最近読んだ本の話をして、私が興味を持った様子をみると、必ず、その本を持ってきて貸してくれるような優しい先輩。
その頃、私は子ども向けの宇宙の本を編集していて、いつものように、なぜ私が宇宙に興味を持ったか、という話になったのだと思う。
その理由を熱っぽく語った私に、先輩が「実は…」と少し言いにくそうに話し始めた。
「実は…、宇宙のことを考えると何か怖い感じがするんですよ」
「なんていうか宇宙って真っ暗で、空気もないでしょ。暗くて深遠で吸い込まれそうな感じで。なんとなく考えるのが怖いなって思っちゃうんですよね。だから、あまり考えたことはないんです」
そのとき、私は本当に驚いてしまったのだ。
でも、同時にとっても新鮮な気持ちで話を聞いた。
たぶん自分は、ある程度鈍感なんだろうなと思った。私の場合、宇宙は純粋に好奇心の対象で想像力や思考の遊び場でしかない。リアルに自分が存在する場所というふうに考えたことは、ほぼなかった。だから冷静でいられるのだろう。
たしかに宇宙とは、空気はなく、水もなく、ただひたすらに寒く、暗い世界だ。実際にそこに自分がいったと思うと、怖いのはよくわかる。
先輩と私は、リアリストかどうかとか、何か物事の捉え方が決定的に違うのかもしれない。それが、一体何なのか。うまく言語化はできないのだけど、この違いは、ちょっと面白いなとも思った。
このセカイには、どうやら宇宙について「考えずにいられない人」と「考えないと決めている人」がいるのだ。
ちなみに、気になって他の方にも聞いてみた。彼女は同世代の女性で、アートを愛するセンスにあふれた知的な女性。
「そうね。宇宙はどこまでも終わりがなくて。死んだらどうなるのかなって思うかな。なぜか、私の中で宇宙は死と結びついていて。死んだら、私の意識は宇宙のどこにいくのかなって。ブラックホールに吸い込まれちゃうのかなって」
そこで、彼女はにやりと笑う。
「でも宇宙の最新の話題を聞くのは、好きかな」
そう、彼女は付け加えた。
これは、彼女の優しさかもしれないし、自分からは積極的に考えないけど、宇宙の話は面白いなと思うのかもしれない。
やはり一定数、宇宙の話が怖い派はいらっしゃりそう。いや、8割方もしかしたらそうなのかも?
私は、これまで宇宙について話したときに、弾まなかった会話の数々を、うっすらと思いだした。
「考えずにいられない人」と「考えないと決めている人」が出会ったら、それは話が弾まないよね。これからは、充分気をつけよう。
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NASAの最新の宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope,JWST)で撮影したカリーナ星雲(NGC3324)。
星が活発に生み出される「星形成領域」を撮影したもので、今まで見ることができなかった星の誕生領域を初めて明らかにしたもの。
宇宙について考えずにいられない人
一方で、私は小さな頃から、宇宙について考える子どもだった。
小さな頃からというと、少し語弊があるのかもしれない。正確には小学生中学年頃からだ。
母が子ども達だけで、星を見る一泊のバスツアーのようなものに申し込んでくれたのがきっかけだったと思う。「こんなのあるけど行ってみる?」と聞かれて、断る理由もなくて、どちらかというと消極的に「うん」と返事をした。
一緒のクラスの、絵が得意なエミちゃんも行くというので、それなら安心ということになっていた。
私は、たぶん、そこで初めて宇宙が無限に広がっていることや、その宇宙の中に、星が数えきれないほどあることを教わった。
そこは長野県の、なんという名前の村だったか。
もう忘れてしまったのだけど、そこで見た星空は今でも忘れられない。
星が爆発的に多くて、星の明るさよりも、夜空の黒い部分の方が少ないように感じ、完全に私は度肝を抜かれた。
いつも見ている空は、暗い夜空に、ほんの少し点々程度に星が輝いている。
それが、星で空が明るすぎて、暗いほうが少ないくらいに感じるなんて。
ほんとうに宇宙に、星は無数にあるんだな。
その日の衝撃がいつまでも私の身体の中に残った。帰りのバスの中は、なぜか、エミちゃんと一緒でも一言も言葉を発せなかった。
いつか同じような星空を見たいと思うのだけど、未だそのような星空には出会えていない。
あの経験が、現実に起こったことなのか、記憶も遠くはるか彼方にぼやけている。
でも、それ日以来、私は宇宙に興味を持つようになったのだと思う。
小学6年生の頃、ぼんやりと空を眺めながら歩いていたとき。
ふと「なぜ人間は地球にいるのかな」と思った。
「この宇宙はこんなにも広いのに、今のところ地球にしか人間のような生命体が存在しないということになってる。人はなぜ地球にいるんだろう。自分はなぜ生まれてきたんだろう」
と、そんなことを考えていた。
とてつもなく不思議だなと思い、宇宙について考えることを止められなかった。
夏に、鈴虫の入った虫かごを見て、「実は人間は、もしかしたらこんなふうに虫かごで飼われているのかもしれない。それをぼんやり見つめている何か神様のような存在がいたりするのかも。だって鈴虫は、私の存在に気づいてないし、これが5次元とかそういうことなのか」などと考えたりした。
自分で考えるだけなら、どこまでも自由で、どんな突拍子もないことも許されるような。
そんな自由さが楽しい。私にとっては思考の遊び場みたいな感じなのかもしれない。
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国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された地球
昨年、取材をした小惑星探査計画「DESTINY+」のリーダーの荒井朋子さんも、「宇宙について考えずにいられない人」だとおっしゃっていた。
小さい頃、バスに乗っている頃、「なぜ、人は存在するんだろう」ということを考え出したら止まらなくなり具合が悪くなって……、というようなことを取材中におっしゃっていたのだ。
私は非常に恐れ多くも、お仲間に出会えたような気がして、とても嬉しかった。
宇宙への興味の持ち方も、人それぞれ
それに「宇宙」と一口にいっても、人によって色々な興味の持ち方があるだろう。
例えば、
★宇宙進化やビッグバンだとか、ダークマターだとか。
宇宙の始まりや、進化、膨張など、大きく宇宙の存在や謎について興味がある方。(私は、どちらかというとこのタイプ?)
★星や天体の観察にロマンを感じる人。星座と神話に興味があったり、天文現象の撮影に興味がある方もいるかもしれない。
★宇宙開発や、宇宙探査機、望遠鏡など、宇宙にまつわるテクノロジーに興味がある方もいるだろう。そういう方はNASAや、JAXAの情報を逐一チェックしているかもしれない。
★地球外生命体とか、SFとか、そういう想像力をはばたかせるような世界に興味を惹かれる方
色んな興味の持ち方があるんだろうな。
「宇宙について、考えずにはいられない人」
「宇宙について、時々、考えるのが好きな人」
「宇宙について気になっているけど、今まで、きっかけに出会わなかった人」
「宇宙について考えないと決めている人」
きっと、単純ではない、ここもまた虹色の世界。
あなたは、どうだろうか。
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