【将棋】観る将が女流棋界のイノベーションを思い描く
第2回女流ABEMAトーナメントがおもしろかった!
先日ちょっと心を動かされちゃって、思わず記事を書いてしまったのですが
昨晩、第2回女流ABEMAトーナメントが決勝まで終わり
早くもちょっとしたアベトナロスになっております。
ほんとに全6チーム応援したくて負けてほしくなくて、最後までたのしかった!
チーム戦で皆んなプレッシャーに押し潰されそうになりながらチームのために必死に戦っていて
監督制度、女流棋士同士の友情などいろいろあって
笑いあり涙あり、名勝負ありで。
ABEMAプレミアム限定のコンテンツなので、どれだけの人が観たかわからないけど
これだけ多くの女流棋士たちが「対局で」スポットライトを浴びて、ファンの心を動かしたのは、これまで無かったんじゃないかなぁと思います。
女流棋界のイノベーション!?
ここからは僕個人の思いになりますが…
この半年ほどで、女流棋界に大きな変化がおこってるのかも?と想像しています。
ここ数年の女流棋界の話題といえば
「里見、西山がめちゃくちゃ強い、二強時代」
「加藤桃子が里見から数年ぶりにタイトル奪取、二強を崩す」
「○○女流がかわいい」
みたいなことくらいがメインで、
良くも悪くも、ある程度落ち着いていた状態だったのかなと。
僕らファン側も、女流棋士側も。
女流棋士の主な活動としては「対局」と「普及」の二本柱と言われていて
どちらも大事なことで、皆さんすごい努力・活動されていると思いますが
人によってそれぞれの割合、力の入れ具合はけっこう違うのかなと想像します。
ちょっと穿った言い方をすると、一部の女流棋士にとっては
「対局」そして女流棋士間の関係も
ちょっとドライな、でも敵対するでもなく、なんとなく一緒に仲良く仕事するみたいな感じだったのではないかと。
ちょっと、勝負の世界らしからぬ感じで。
そんな中今回の女流アベトナで、女流棋士の間で、友情・結束力、あるいはライバル心といった
今まであまりなかった熱い思い
そして今回はドラフトで指名されず出場できなかった女流棋士にとっては
悔しさ、発奮材料になっているかもと思います。
「私も出場したい!」「公式戦ではあの子には負けたくない」みたいな。
そんな今回の女流アベトナでしたが
もうひとつ、僕が思う女流棋界の変化のキッカケとして
白玲戦・女流順位戦というタイトル戦が昨年創設されたことが大きいと思っています。
棋士にとっての順位戦とは
以下、あまりお詳しくない方に向けて
僕の超薄っぺらい知識で述べようと思いますが…
(お詳しい方は飛ばしてくださっても大丈夫ですw誤りなどありましたらコメントでご指摘いただければ嬉しいです)
白玲戦・女流順位戦は、昨年創設された八番目の女流タイトル戦で、
男性棋士の名人戦・順位戦を踏襲したものになっています。
で、そもそもその名人戦・順位戦てどんなもの?という話なんですが、
名人戦というのは、将棋界八大タイトルの一つで、最も歴史と権威のあるタイトルです。
順位戦というのは、名人への挑戦者を決めるリーグ戦です。
サラッと書くとこれだけなのですが
他のタイトル戦・予選とは歴史や重みがちょっと違います。
そもそも名人って、江戸時代から続くものですが
元々は幕府が認める家元制(世襲制)名人だったんです。
名人は亡くなるまで名人であり続け、亡くなった後に次の名人に世襲される。
ですが昭和10年(1935年)に、ときの名人、関根金次郎十三世名人が
「将棋なんだから、世襲制なのはおかしい。将棋勝った人が名人になるべきだ。」
みたいなこと言い出したんです。
要は、名人位を一般の将棋指したちに開放してくださったんですね。
何百年も続いた世襲制を変えたのは、かなりの大きな決断だったのではと想像します。
ということで、
「全ての棋士に順位をつけて、順位一位になった棋士が名人に挑戦する」
ってなりました。
これが、現在まで続く実力制名人・順位戦の始まりです。
この順位戦はリーグのクラス分け(A級~C級2組)がされ、どのクラスに在籍するかによって収入や地位が明確に大きく違ったようです。
良くも悪くも、「将棋強い人が偉い」という、分かりやすくてシビアな世界。昇級は大出世。降級は都落ち。
近年では他のタイトル・一般棋戦の数も増えて、いろんな棋士が露出できるメディア・イベントも増えて、また時代の変化もあって
クラスによる格差は小さくなってきていると思いますが
それでも今もなお、待遇の違いや風潮は強く残っていると思います。
順位戦は期初に各リーグの対戦相手、日程、先手後手が発表されるので
棋士たちは一年をかけて研究・準備して対局に挑むことになります。
持ち時間は全棋戦最長の6時間なので、対局が終わるのは日付をまたぐこともザラにあります。
特に、A級順位戦最終局は通称「将棋界の一番長い日」と呼ばれ
ある意味タイトル戦の番勝負よりも悲喜交々で、美しくも残酷な、毎年の一大イベントです。
つまり、順位戦は棋士の生活であり、名人は生活の頂点なのです。
↓今期のA級順位戦対戦表
(羽生さんなんとか残留してほしい…泣)
女流棋界にも順位戦が始まった
そんな順位戦が、昨年ついに女流棋界にも創設されました。
上田初美女流四段がそのときの思いを記事にされています。
そして今年の8月に第1期の女流順位戦が終わり、10月に第1期白玲戦が終わり、初代白玲西山朋佳が誕生しました。
そして、全ての女流棋士に初めて順位付けがなされたわけです。
そして現在、第2期の戦いが既に始まっています。
↓今期の女流A級順位戦対戦表
前述した「対局」と「普及」の二本柱、両方大事ですが
そのうち「対局」について、本当の意味でシビアな勝負の世界に近づいた
と言えるかもしれません。
弱い人の淘汰、そして強い人の価値の向上がありえます。
また、各女流棋士の対局数が、数年前に比べて(他の棋戦創設もあったので)格段に増えたのも大きいと思います。女流棋士全体を平均して、大体5年前から2倍くらいになっているんじゃないでしょうか。
そして白玲戦の優勝賞金は1,500万円。
女流順位戦の対局料(ファイトマネー)は不明ですが
対局数(真剣勝負の機会)も収入も、男性棋士の待遇にだいぶ近づいたのではないかと思います。
(今までは多くの女流棋士は対局だけでは生活できない待遇だったそうですし、今もなおそうかもしれません。)
女流棋界の未来を夢見る
というわけで、僕が思う女流棋界の変化のキッカケ2つ
・第2回女流ABEMAトーナメント
・白玲戦・女流順位戦の創設
について長々と書いてしまいましたが
最後に何が言いたいかと言いますと
僕が死ぬまでに見てみたいのは、女性初のプロ棋士誕生です。
将棋の歴史上、女性のプロ棋士は未だ誕生していません。
里見香奈、西山朋佳があと一歩で叶わなかったのはほんとに残念に思いました。
(誕生しない理由はいろんなことがあって難しいでしょうし、またいつか思いを書ければと思いますが)
ひとつ間違いないのは、女の子の競技人口の増加が不可欠でしょう。
奨励会員(プロ棋士養成機関)は女の子は数えるほどだし
将棋連盟道場に行くと、お子さんがたくさんいるけどほんとに男の子ばっかりw
今後、女流棋士がレベルアップして、世間の認知度も高くなって、待遇も向上して、
(広告戦略とかお金のこととか論じられるほど詳しくないので書けませんがw)
いつか女の子たちが、
「アベトナにでてたお姉さんが憧れ」
「白玲になりたい」
「将来の夢はプロ棋士」
といった子が増えていって、いつの日か、女性初のプロ棋士が誕生するといいなあ・・・なんてことを夢見ています。
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