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Photo by
tocotori
筐底 散らかる文
走って走って走り続けて
息が切れて突っ伏す。
走るのは何処だっていい。
丁度都合の良い場所が心の中だっただけだ。
あまりにも多くのものが
指の隙間から零れ落ちた。
繋ぎ止めようとしても
掬ってみようとしても
それは、叶わず。
凍みるほど綺麗な闇だけがあった。
闇は私を隠し、時に守り時に葛藤を与えた。
圧倒する無力を全てにて覚える。
静謐なこくりとした闇の中でみたのは
【何も知らない】私であった。
私の中は問で埋め尽くされている。
恐らく、問の答えは出ない。
だが無力を地として、私は其処に立つ。
変えられる過去は無いが、遺ったものを引き継ぎ意志を灯す。
その先にあるものを失わないために。
私は、また走り出すのだ。
それが生き残ったものの出来ることだから。
正解の存在しないその問に挑み
最善を尽くす。
「相変わらず…早死にしそうだな。」
あなたならそう、私に話しかけただろうか。
筐底に秘す想いまで立ち上らせてしまうのは、秋だからか。
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