あのとき書くのをやめた私へ
書くのってしんどい。書く行為そのものがというよりも、書き上げたものに対する評価や、人の目を気にするのがしんどい——。
何億回でも書くんですが、まだ会社員だったころ、私はそのしんどさにすっかり病んでしまい、文章を見るのも書くのもイヤになった末に、すべての執筆活動をお休みした時期がありまして。
よく「筆を折る」って言いますが、私の場合は、なにもない荒野にかろうじて立っていた筆が、静かに音もなく、
ファサッ……
と倒れたような、そんな感覚でした。
うじうじ悩んで、いろんな気分転換を試して、でも全然気分がすぐれなくて、なんだかんだ回り道をして再び砂漠から砂まみれのペンを拾い上げたのは、やっぱり書くのが好きだと自覚したからでした。
それから何度かTwitterの創作アカウントを作ったり消したり作ったりして。
いろんな人に出会って刺激を受けて。
1ツイートで完結する、140字小説というものにハマって毎日投稿を始めて。
好きこそものの上手なれ。
果たして「上手」になったかはぜんぜんわかりませんが、やっぱりあの時書くのをやめなくてよかったなぁって。
筆、砂に埋めるだけにしておいてよかった。ポッキリ折ってしまわなくて、本当によかった。
*
先日、Twitterで開催された「#140字小説方丈杯」で賞をいただきました。
方丈海さんの140字小説集『#140字小説 意味が分かるとゾクっとする話』の発売を記念して、ワニブックスさん主催で開催されたこの賞には、なんと1002作もの応募があったそうです。
(↓ご本と方丈杯の詳細はこちら)
140字小説というのは、Twitterの1ツイートで完結する140字前後の小説です。「マイクロノベル」とか、「Twitter小説」とも呼ばれ、noteに投稿している方もいます。
正直に白状すると、過去には、140字小説を書き続けるにあたって悩みもありました。どうしてもこれ、「たったの140字か」ということで軽視されがちじゃないですか?(私だけの感覚ですかね?)
そして私自身、140字小説を書き綴りつつも、心のどこかで「でも140字だしな」「これを続けたところで特に次の展開もないしな」という惰性のような気持ちがありました。(世の140字作家のみなさん、すみません)
書くのはものすごく楽しいんです。鮮烈なオチを思いついたときや、できあがったものをどうやって140字に収めるか考える瞬間にこれ以上ない快感をおぼえるんです。
1つの作品を考えるのに数時間かけることだってあるし、数十回書き直したこともあります。作品数は500作くらいしかないはずなのに、下書きに使っているドキュメントの文字数は、推敲を重ねすぎて今や12万字を超えました。
字数的には1冊の本が作れる。
ところがどっこい、これを書き溜めたところで別にどっかの新人賞に応募できるわけでもないし。ツイートして、イイネの数に一喜一憂して、これになんの意味があるというのかね、ワトソンくん。
と心の中のシャーロックホームズがしたり顔で語りかけてくる日々だったわけですが、とはいえやっぱりネタを思いついたらツイートしたいし。思いついたストーリーを、140字にぎゅうぎゅう押し込めてる時は楽しすぎて悩みなんて忘れるし。
まあ、なにものにもならないかもしれないけれど、このままタラタラっと続けるかぁ、と開き直り始め。フォロワーさんにも、「短編小説よりも、140字小説を書いているときのほうが楽しいんですよね、最近」なんて言っていた矢先の受賞で。
この「楽しい」という感覚ってバカにならないなぁ。大事にしなきゃな、とあらためて思ったできごとでした。
審査員の方丈さんが、Twitterで、
とおっしゃっていたのも印象的でした。
本を何冊も出版されるような作家さんでもそんなふうに……!
賞に選んでいただいてビューン!!!と天元突破していた心が、ストンと自分の手元に戻ってきたような心地がしました。
そうだ、ここで歩みを止めたらなんの意味もない!
一に継続、二に継続、三四も継続、五も継続だ!
というわけで、これからも変わらず仕事のかたわら、じわりじわりと物語をつむぎ続けていきたいと思います。(最近忙しくて、頻度は落ち気味ですが。)
続けることはとても孤独な作業です。
誰も私の作品なんて求めてないのに、コレになんの意味があるのだろう、と私は時計の針を見つめながら毎分毎秒、奥歯を噛み締めている次第ですが、それでもやっぱり見てくれている人はどこかにいるのかもしれないし、続けてさえいれば、「好き」と言ってもらえる日が来るものなのかもしれません。
すごく疲れるけどね。でも疲れただけ、いいこともあるのかもしれないな、と。
そんなわけで、「1か月間だけ週1で更新します……」という震え声とともに、よわよわメンタルで始まったこの週1noteも、もう少しだけ続けてみたいと思います。
(第4回の今日の更新も、正直危うかったんですけど笑)
おーい、うじうじ悩んでいた私。聞こえますかー!
あのとき筆を折らずにいてくれてありがとう! 砂に埋葬するだけにとどめてくれて、本当にありがとう!
あなたは大丈夫。落ち込むこともあるけれど、また、前を向けるから!
だからポケモンGOもアプリゲームもほどほどにね!!
いまが辛くても、書きたいという気持ちを大事にしてさえいれば、またいつか、やり直せる。
あのときの自分をぎゅーっと抱きしめて、続けた先の景色を見るための旅を、今日からまた、始めたいと思います。
*