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肩書の訳し方について考える(再び)

翻訳していると、処理するのが厄介なものの一つに「肩書」があります。

これはやはり翻訳している皆さんの現場のローカルルールに従うのが一番なのですが、ローカルルールがない場合はどうすればいいのか。

正直言うならばこれは難しいところです。ただ少なくとも、一般的に「報道向けの原稿」ではなく、「翻訳原稿」として出す場合は私たちにも最低限守るべき、「暗黙の了解」みたいなものはあるとは言えるでしょう。

この肩書きの表記については以前の私のnoteやXでも触れたことがありますが、まだ混同している人もいるような気がします。

そこで今回は新たに私のnoteをフォローしていただいた人向けに、私が翻訳している場合の「私ならこうしている」という一例を今一度お見せしましょう。「これが翻訳界の共通ルールだ」とは言えないのですが「ひとつの参考」として考えてもらうと幸いです。

◇◇
ただ、そうはいっても国内と国外では同じ政府・政党要人といっても表記の仕方も変わっていますので、今回は国内の要人編、国外の要人編の2つに分けて解説したいと思います。

やはり大陸や台湾の政府要人、政党指導者の肩書はそのまま残しておくのが一般的だと考えます。

例えば「外交部长王毅」ならば、「王毅外相」とはせずに、「王毅外交部長」とそのまま表記するのがベストと言えますし、中共中央总书记习近平ならば、「習近平中共中央総書記」としています。

また台湾总统についても「台湾大統領」とはせず、「台湾総統」とするのが一般的でしょう(中国大陸はこの呼称を認めていませんが)

ややこしいのは「香港立法会议员」と「台湾立委」です。どちらも「立法」という言葉がついているので混同しそうですが、しっかり「香港立法会議員」「台湾立法委員」と表記するよう心がけましょう。

では大陸の「常委」「常委会」についてはどうでしょうか。私は一般的に「常委」「常委会」の後ろに何も肩書がついていない場合は略称にせず、肩書がついている場合は略称にしています。

例えば「中共中央政治局常委、全国人大常委会委员长赵乐际」の場合を考えてみましょう。

この場合は「常委」の後ろに何も肩書などはついていない一方、後ろの常委会の後には「委员长」の肩書がついていますから略称にします。そうするとこうなります。

趙楽際中共中央政治局常務委員・全人代常務委委員長

略語の処理の仕方はかなり人によって違うとは思いますし、どれを略称のままに留めておくのか、どれを略称ではなく全称にするのかという判断は極めてあいまいですが、少なくともこの「委員会」は、日本語でも「委」で略称できることができると言えるでしょう。例えば

「中央军委主席习近平」は「習近平中央軍事委主席」になりますし、「中共中央纪委主席李希」は「李希中共中央紀律検査委主席」

まぁ、これも「委」とする人もいれば「委員会」とする人もいるんですけどね。

ただ少なくともベテランニュース翻訳者さんの処理の仕方を参考にしつつ、「自分はこうやる」という自己ガイドラインみたいなものをあらかじめ決めておき、それに沿って翻訳することを心がけましょう。

人物の肩書に限らず、中国語では組織名や会議の名称などあらゆる場面で略語が登場します。上述の趙楽際にしても「中共は中国共産党にすべきだ!!」と主張する人もいるかもしれません。これについては「翻訳界のローカルルール」、そして「最近では中国共産党を中共と訳している」という暗黙の了解に従ってやっています。

というわけで、今日は国内の要人の肩書きについてお話をしました。



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