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中国の政治家から学ぶ中国語(7)──リズムは大事

中国の指導者のスピーチを翻訳していてつくづく感じることがあります。それはリズム、つまり語句や文節、はたまた文構造を繰り返すケースが多いということです。これはやはり、「人々の心に訴えかける」というスピーチの特性上、繰り返すことで印象付けをするという狙いがあるのでしょう。

そして、私たち中国語学習者、日中中日翻訳者にとっても中国語の文章を書く上で参考になりうるものだと言えます。そこで今回は指導者のスピーチにおけるリフレイン効果について語っていきたいと思います。

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実はこのリフレイン・並列表現について私は以前当noteにおいて詳しく解説したことがあります。

当初はフォロワー数も多くなく、あまり「いいね」がつかなかったわけですが、私自身とても重要だと感じているので今回もnoteにしてみました。

どの点が重要なのか。やはりこれは、どの語句や文節が並列で対応しているのかということを、「何も情報がない状態」から見抜くテクニックの一つとして、安定した翻訳文構築にとって非常に有用だからです。

そこで今回は最近のニュース記事からリフレインや並列文と思われるものをピックアップして、再度紹介していきたいと思います。皆さんも見抜く力を養ってみてください。

まずは簡単な文から。

ここの記事にあるこちらの文です。どれが並列になっているかわかりますか?

两国走和平共处、世代友好、互利合作、共同发展之路,符合两国人民根本利益

はい。これはたぶん多くの人が分かると思います。なぜなら、文中に並列を表す「、(読点)」があるからです。視覚的に「和平共处」「世代友好」「互利合作」「共同发展」がそれぞれ並列の関係になっており、共に「之路」にかかっているのだということが分かりますね。

ちなみにこれら4つの文節についても「和平+共处」「世代+友好」「互利+合作」「共同+发展」となり、「2文字」+「2文字」という同じ文節構造になっていることが分かります。

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もちろんですが、もっと長文にわたるものもあります。特に習近平総書記のスピーチにはそれが顕著ですね。例として次の記事を見てみましょう。

この記事の中間部分につぎのような文章があります。

推进中国式现代化,必须始终坚持党总揽全局、协调各方的领导核心作用,坚决维护党中央权威和集中统一领导,持之以恒推进全面从严治党,努力以党的自我革命引领伟大社会革命。必须始终坚持中国特色社会主义道路,进一步全面深化改革、扩大开放,着力推动高质量发展,努力把国家发展进步的命运牢牢掌握在中国人民手中。必须始终坚持以人民为中心,一切为了人民,一切依靠人民,努力让全体人民在共同奋斗中共享改革发展成果。必须始终坚持走和平发展道路,高举和平、发展、合作、共赢旗帜,努力促进世界和平安宁和人类共同进步。

とても長い文がずらずら続くのですが、どれも開幕は「必须始终坚持(必ず終始堅持しなければならず)」で、最後に「努力(努力しなければならない)」で締める文構造になっていることが分かるでしょう。

ここまでは分かると思います。そしてここまで理解すれば、裏返して言うならば一番冒頭の「推进中国式现代化」は「別の文節」であるということが分かるでしょう。だからこそ、冒頭のこの文節は「中国式の現代化を推進するには~」という訳を当てはめることができるわけです。

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お気づきの通り、並列、リフレイン構文は文節の中身も同じ構造でそろえるというのが一般的です。

「修飾語」+「被修飾語」、「修飾語」+「被修飾語」~

と言った並列構造になっているものもあれば、

「副詞」+「動詞」+「名詞」,「副詞」+「動詞」+「名詞」,~

といった並列構造もあり、バリエーションで言うならば無限大にあります。

つまり「同じ構文、同じ語句が文中、段落中に存在しているかどうか」をいかに、素早く判断できるか。これこそが、この構文を見抜くコツと言えます。あと、マクロ的視点を持つこと。並列、リフレイン構文は文中のみに存在しているとは限らず、段落中に存在していることもありますし、段落自体がリフレイン構造になっている場合もあります。記事全体を見渡す俯瞰の目が重要になってきます。

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どうでしたでしょうか。

この並列、リフレイン構文は指導者や閣僚のスピーチ、はたまた声明やコミュニケなど、ある一定レベルの格式ある文章では見ないときがないほど頻繁に出てきます。

われわれ翻訳者としては見つけさえできれば、訳はとても簡単にできますので、訳語の解説をする必要がないとは思います。むしろ原文の文構造で語句の修飾、被修飾の関係を見極めるときに利用することが多いでしょうか。

例えば「我帮助你找工作」のような文で「找工作」の後に「,」(カンマ)を伴って文節が続く場合。「私はあなたが仕事探しをするのを助け、~する」なのか、「私はあなたが仕事探しをし、~する手助けをする」なのか。

例えば「我希望你早日找到工作」のような文で「找到工作」の後に「,」(カンマ)を伴って文節が続く場合。「私はあなたが早く仕事を見つけてほしいと思っており、~していく」なのか、「私はあなたが早く仕事を見つけ、~してほしいと思っている」なのか。

・・など「AはBがCすることをDする」という文構造でどこまでが、Bが主語をとる文なのかを見極めるのに難しいときは、こういう並列、リフレインの構造を見て、途切れるところが文の終わりだと判断したりしています。

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このほかにもリフレイン構文を利用して文構造を判断する場面はたくさんあります。より正確な翻訳を目指すニュース翻訳者になるために、「どこからどこまでがリフレイン構造なのか」を見極める習慣をぜひ意識して養うようにしましょう。

私も今後、このニュース記事や指導者のスピーチで出てくる「リフレイン」について解説していきたいと思います。

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