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中国語翻訳者・通訳者向けマガジン

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主に中国語上級者向けのマガジンです。
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#中国語通訳

ちゃんとやろうよ。翻訳を!

遅ればせながら。 今回は何を話そうかと思っていた矢先に出たあの話題。 Xでは私の考えをいろいろポストはしてみたのですが、翻訳者の目線から見た、ディープシーク社AIについての感想をやはりここでももう少し話りたいと思います。 このニュース、日本や西側にとっては経済安全保障上問題があるとか、中国側は「いやそうではない」とか、いろいろ言われていますが、驚きを持ってこのニュースを見た人はかなりいたという印象を私は受けました。それは「この中国産を使えば、安価でOpenAI並みのAI

中日・日中翻訳者、通訳者に未来はあるのか(2024年編)

最近、米国株に注目しています。現在米国ではエヌビディアを始めとした半導体関連、AI関連の銘柄がバブル状態になっているのは、株を少し知っている皆さんならもうお分かりになっているのではないでしょうか。 かの有名なアップルもこのほど、iPhoneの「Siri」にオープンAI社のChatGPTを導入することを決定したというニュースが報道され、大きな話題になりました。 多くの人が持っているiPhoneでさえ、日常的かつ気軽にAIが使える時代が近く来る。このようなニュースを見て、現在

翻訳・通訳で原文にない言葉を付け加えるのは善か悪か

先日Xをつらつらと見ていたら、次のようなポストが目に入りました。 ポスト主の尾形さんは、先日開催された大谷翔平選手の釈明会見で通訳を務めたウイル・アイアトン氏が、大谷選手が発した「僕自身は何かに賭けたりしたことがない」という言葉を、「野球だったり、何かに賭けたことはない」と英訳し、「野球だったり」という大谷選手本人が発していない言葉を付け加えていたことを問題視しています。 これに対して、後になって「いや問題ない」というコミュニティノートがつきました。このあとのポストで尾形

水原氏の騒動で私が思うこと

米国メジャーリーグの球団ドジャースの大谷選手の専属通訳である(だった)水原一平氏が、球団から解雇されたというニュースが駆け巡りました。このニュースに多くの人は驚いたのではないでしょうか。 私自身も驚きました。今でも水原氏や大谷選手を取り巻くニュースが後を絶たない状況ですが、私は同時に現職の翻訳者として、そして昔通訳を目指していた一個人として、このニュースに違う意味で胸がざわついたのも事実です。 私は今でこそ中日の翻訳者として携わっていますが、今の仕事に就く前は日中・中日の

2つの意味がある語句の採用

今回は久しぶりに中日・日中ニュース翻訳についてお話ししたいと思います。訳語の選定についてです。 通訳・翻訳を目指しているみなさんは、中国語→日本語、日本語→中国語の翻訳をするにあたって、「訳語の選定」について考えたことはありますか? 実のところ、原文の日本語、中国語の語句に対応する中国語訳、日本語訳が「1つだけ」というケースはそんなに多くはありません。辞書を引けば多くは、一つの語句に何種類もの訳が存在するということが分かるでしょう。 翻訳者(通訳者もそうなのですが)はそ

記事要約のすすめ➁

2年前、私は「記事要約のすすめ」というnoteの記事で、中日日中の翻訳能力を高める上での記事要約の重要性を説明しました。 この考えは今も変わっていません。その証拠に、今でも私はX(旧ツイッター)の自分のアカウントで、その時その時に華字メディアで報じられたニュースを日本語の短文で投稿することを続けています。 これは、今中国・台湾・香港・マカオで報道されているニュースを日本のみなさんに紹介したいという思いのほかに、自分自身の翻訳能力を高めたいという気持ちを持っているからです。

中国語文はSVOとは限らない

先日、次のような文章をポストしました。 中国語の文構造で最も基本的なのは「S(主語)V(述語)O(補語)」であるのは間違いないでしょう。私もそこには賛成です。 しかし実は「すべてSVOだ」と思い込んでしまうとそこには落とし穴が存在します。特に台湾にはこの手の文が多いですね。 そもそも中国語の単文は、主語が存在する「主述文」と、主語がそもそもない(または冒頭に来ない)「非主述文」に分けられます。 主述文はわれわれが中国語を勉強した時に勉強した、あの典型的な「SVO」構文