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逃げることを忘れた戦士たちへ

今更Final Fantasy XII(FF12)をやっている。

およそ17年ほど前に出たFFシリーズの12作目である。
当時はバトルシステムが画期的すぎて評価されなかった異色作だが、今でも色褪せないと再評価され、最新のリメイクがPS4とSwitchで出ているというなんだかんだで名作である。

無印とは違ってリメイクはジョブシステムが追加されているのでまた違う楽しみ方が出来るらしい

結構序盤で、主人公ヴァンの幼馴染(上記パッケージ画像の左端の子)が攫われたというので助けに行くと、バッガモナンというワニみたいな顔のわかりやすい悪党が出てきて主人公たちをボコボコにしてくるので逃げろ!というシーンがある。

手下を三人も連れてくる

これまで力にはさらなる力をもって叩きのめす、という感じで敵をなぎ倒してきた主人公PTなので(序盤なので当然である)、すっかり「逃げる」という選択肢を失っていた。
悪党を見かけたら、一匹たりとも見逃してはおけない。主人公とはそういうものである。

実はこの悪党との戦闘、まじめに戦って倒さなくともいいのだ。
ちょっと強めに設定されているので、意識してレベル上げをしていないとあっという間に倒されてゲームオーバーである。

攻略にも「ダンジョンの入り口まで逃げたら戦闘を回避できる」とあったので愚直に走って戻ろうとするのだが、
回復魔法と回復アイテムを使いまくっても逃げる途中でPT全員をボコボコにされるので、
何度やってもいけ好かない悪党に一方的になぶられるだけだった。その度に「なんだこのクソゲーは」と投げ出していた。

実は今まで三度ほどここで詰んでいた。
その度にFF12を諦めては、数年後に思い出して初めから再開をして、同じところで詰んでやめる、ということを繰り返していたのである。

初プレイが大学生の時だったので早10年、ついにそこを逃げ切ることができたのだ!

実は、FF12には逃げる用のコマンドとして「R2ボタンを押す」というものがある。

最初にチュートリアルで教えられるのだが、そこからの展開では逃げる必要性がほとんどないので存在自体を忘れてしまっていた。

いざ逃げようとしても逃げコマンドを忘れていて(画面にもボタンを押さないと『escape!』と表示されないので)、のんびり逃げる方向に移動している間に敵からボコボコにされて詰んでしまう、という状況だったのだ。

R2ボタンを押しながら逃げると、今までノロノロと移動していたキャラクターたちが攻撃や回復する手を止めて全力疾走で逃げ始めたので笑ってしまった。初めからそうしろ。
いや、そう指示をしなかったのは自分なのだが。


そこでふと、思う。これは私たちのリアルにも言えることなんじゃないだろうか。

いつも逃げるという選択肢を取っている人はそうそう多くない。
私達はどうにかして目の前の課題に立ち向かおうとするのが大多数の常というものだ。

しかし、苦難を乗り越えたときの達成感を踏み台にして、次の壁に向かっていく、そのことを繰り返していると、いつしか私たちは「逃げても良い」ということを忘れてしまうのではないだろうか。

どうやっても解決できない、自分の現状では倒せない課題にぶち当たった時、様々な方法を試すだろう。
しかしその選択肢に、逃げるということも忘れないでいたいのだ。

人生は詰んでもゲームのように投げ出すことができない。
どれだけ行き詰まっても向き合わざるを得ない世界に生きている。
しかし忘れないでほしい。
私たちの心にも「逃げる」コマンドは実装されている。
それを押すかどうかは私たちが決めて良いのだ。


現状では倒せないように見える敵、一方的にわたしたちを傷つけてくるような相手に、無理に立ち向かう必要などない。
ゲームのように人生にも立ち向かわなければストーリーが進まないように思えることもある。
しかし自由度なら他の追随を許さない人生というゲームでは、何をどうしたってあなたというストーリーは進んでいくものだ。

だから、逃げることは恥ではない。
自分が倒されてしまう前に、自分を守ってほしい。
あなたの心にR2ボタンをいつも用意しておこう。


ちなみに後日談。
無事逃げられてシナリオが進んだはいいものの、これまで幾度となくボコボコにされたのが癪だったのでセーブせずにやり直し、全キャラのレベルを18まで上げて悪党を一人ずつボコボコにした。
力こそパワーである。
レベルを上げて殴れ(比喩)ば大体の事は乗り越えられるので、あなたはどちらを選んでも良い。

FF12、面白いよ。やってみてね。

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