食欲の秋に聞いてほしい体重の話 <特にアレルゲン除去食療法を行っている飼主さんへ>
今回は、当院で《アレルゲン除去食療法》を行っている、わんちゃん猫ちゃんの飼い主様に伝えないといけない話です。
(診察時・フード購入時にすでにお話しした方にも、大事な事なので繰り返し読んでください^^)
『寒くなると要求量が増えるので、フードの量を増やしてくださいね!』
以上です。笑
伝えたいことはその一点だけなんですが、理由も知ってもらえると食事管理がもっと上手にできるので、以下もぜひお読みください。
涼しくなって体重減ってませんか?
年々長くなっている夏が終わり、わずかな秋を感じられるこの頃、来院されるわんちゃんの体重を測りながら
「少し体重減りましたね」と伝えることがしばしばあります。
続いて「ごはんの量は夏と同じですか?」と尋ねると、大体Yesの回答。
そこで冒頭のフレーズをお伝えするというパターンです。
同じ量与えていて、どうして体重が減るのでしょうか?
夏と冬でエネルギー消費量は違います
理由は単純で、主に2つあります。
①夏は暑いので、体温を維持するためのエネルギーを消費しない。
②暑くて散歩量が減るので、運動によるエネルギーを消費しない。
それが涼しくなってくると、
①寒い環境で体温を維持するために代謝が活発になります。(震えるのも筋肉で熱を作るための反応ですね)
②散歩で歩く量が増えるので、運動によりエネルギーを消費します。
体格や運動量などの個体差はもちろんありますが、冬は夏より10%程度エネルギー消費量が増えるとされています。
つまり、エネルギーを消費する分、たくさん食べるようになります。
それが【食欲の秋】の正体です。
人間も、夏は食欲が落ちて「素麺でいいや〜」って日も多いのが、冬はお鍋をモリモリ食べるようになりますよね。
冬に食事量が増えるのは自然なことなのです。
アレルゲン除去食は食べ過ぎにならない
さてでは、この話をアレルゲン除去食療法をやっている飼主さんに特に聞いてほしいというのはどうしてでしょうか?
実際、この話は当院でアレルゲン除去食をきちんとやって、良好な体重管理ができているわんちゃんで多いのですが、それは
適切なアレルゲン除去食は必要以上に食べなくなるからです。
私も、アレルゲン除去食を始める際に
「最初は食いついても、いずれ渋々にしか食べなくなりますよ」
「パッケージに記載されている量より、かなり少ない量で足りるようになります」
と伝えているので、飼主さんが"たくさん食べないことに慣れてくれている”ことが多いです。
多めに入れても残しますよね。特に夏は少量になっています。
夏場の適正量のまま秋も続けていて、気づくと体重が減っているのですね。
動物にはある程度『貯蓄』があるので、すぐに飢餓状態にはなりませんが、
体重が減ってきたら、エネルギー消費が摂取を上回っていますので、ごはんの量を増やしてあげてOKです。
どのくらい増やせばいい?
まずは5%程度から。完食してくれたらもう5%という風に徐々に増やしてみましょう。
多過ぎたら残すか、次の食事を食べなくなりますので、そうなったら適正量です。
"消費量=摂取量"になったらそれ以上は食べないということです。
ライオンは捕らえた獲物を食べ残します。ブクブク肥えてまで完食しようとはしませんよね。
必要量以上に食べないのは、生き物として適切な行動なのです。
「ウチの子は一年中食事を要求してきます」という飼主さんへ
ここまでの内容を読んで、
「ウチの子、まるまる肥えてるけど毎食もりもり食べてるわ〜」と感じた飼主さんは、この記事は自分には関係ないと思わずに読んでくださってありがとうございます!
そのような勉強熱心な方に、是非ともお伝えしたいことを書きますね。
脂肪を多量に蓄えながら、食事の要求量が高い動物は《代謝が悪い》かもしれません。
理想的なエネルギー代謝は、炭水化物(糖分)を水と二酸化炭素にまで分解して、その過程で発生するエネルギーを自分のものにするのですが、
代謝が悪い動物は、〈炭水化物→脂肪〉までで止まってしまい、〈脂肪→水+二酸化炭素〉への分解が弱いのです。
なので、脂肪を蓄える割に、取り出せるエネルギーが少なくて、常に空腹感を感じてしまいます。
『貯金はあるけど(暗証番号忘れて)引き出せない』様な状態です。
原因はその子によって違うかもしれません。(単純に美味しいもの食べさせ過ぎのことも)
でも、カロリーを抑えて減量を頑張っているのに痩せない!とお困りのようなら何かしらの《基礎疾患》があるのかも。
本記事の食物アレルギーはそのひとつですが、慢性炎症は代謝を悪化させる一つの病態です。
もしかしてと気になったら、ぜひ健康診断を受けてくださいね。
血液検査だけじゃなく、尿検査やレントゲン、エコー検査なども行うと、隠れている異常が見つかるかもしれませんよ。
もっと言えば、腸内フローラも調べてみたいところ(今さかんに研究中されていますので将来の話です)。
ちなみに犬だけでなく、猫にも人にも当てはまる話です。
体調体質を見直して、理想の体になりましょう!