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3)患者教育に必要な基礎的理論 パートA

 「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)」では、心不全の疾病管理では、患者教育・社会資源の活用・心理的サポートなどが必要とされている。その中の患者教育においては、ヘルスリテラシーを考慮した援助が必要とされる。具体的には心不全に関する知識・セルフモニタリング・増悪時の対応・アドヒアランス・禁煙など多岐に渡る。患者教育にあたって心不全療養指導士が備えるべき基本姿勢は「患者・家族の自ら学ぼうとする姿勢を援助する」「患者自身のこれまでの経験、知識、スキル、持てる力に着目する。特に、患者が症状をどのように体験しているかを理解することは、援助の第一歩となる」「患者の行動変容の段階やヘルスリテラシーを考慮し、適切な支援を患者と共に考える」「患者自身の力を引き出すと同時に、力を発揮しにくくしている環境要因にも着目し働きかける」ことが求められる。
 成人教育では、小児期の学習と違い教師主導型ではなく自己主導型である。心不全患者に対しても自己主導型の教育が求められる。自己主導型学習を通して学ぼうとする患者・家族を、医療者が援助する。心不全患者の療養指導において、医療者はまず、患者が何を問題と捉え、どのような動機と経験に基づき、どれだけ主体的に解決に向けた取り組みを行なっているかをアセスメントする必要がある。
 
心不全療養とセルフケアに関して、セルフケアとは「自然主義的意思決定プロセス」であると定義されている。同理論においてセルフケアは3つの主要概念で説明される。メンテナンス、症状の知覚、マネジメントである。この全てにおいて心不全患者はエキスパートとなり、毎日体重を測るべきか、息切れや浮腫など症状が出ているか、早急に受診すべきかなどの意思決定を行なっており、この一連の意思決定プロセスがセルフケアとされている。ここで重要なのは、心不全患者のセルフケアは、「メンテナンス」に相当する目に見える具体的な行動だけでなく、その背景となる動機や経験、生じている症状に気付き意味づけること、その後どのような行動を取るべきかまでの全てを含むということである。
 次に症状の知覚において、ここで言う症状とは、第三者が客観的にその有無や程度を把握するものでなく、患者自身が体験するものを指している。症状マネジメントに関しては「症状の体験」「症状マネジメント方略」「症状の結果」の3つの構成概念からなる。心不全療養指導に関しては、これら全てが重要なファクターとなる。また患者の身体機能面のみでなく、ヘルスリテラシーや経済状況、介護者の有無など、活用できる社会資源にも目を向ける必要がある。

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