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血と汗を流して作り上げてきた土地は大切に~オランダ振り返り投稿6~

「窒素危機」に対するオランダ政府の対応を調べていて驚いた。
なんと、農地(畜産)を買収して住宅地や自然保護区に転用するというのだ。窒素の排出量を各産業でパズルのように削減していく政策に、畜産業者や動物たち、木々までが単なるパズルの一ピースのよう扱われていると感じてしまった。

計画好きな国だな、と思ったのだが、文献を読んでいたらまさにそうだということが分かった。参考にしたのは関西大学のこちらの記事


さて、英名「The Netherlands」が「低い国」を意味することからも明らかなように、オランダはほぼ平地・低地の国だ。国土の6分の1が水路や運河などの水面で、残りの陸地の3分の1が干拓地。もともと海だった場所から風車などで水を抜き、陸を作ってきた。


1900年から1990年にかけて、西海岸の陸地が増えていることが分かる


自ら血と汗を流して作り上げてきた空間だからこそ、国土の隅々まで残らず、効率よく使いたいという強い気持ちが生まれる。さらに、低地を水害から守るためにも、国土をどう管理するかは重要課題だ。

EUレベル、国レベル、そして地方自治体レベルの規制に従い、厳密な土地計画が立てられる。だから農村地など郊外に市街地が無秩序・無計画に広がっていく「スプロール現象」は全くもって見られない。逆に、どの都市からも電車で数駅か自転車で数十分移動すればすぐに農村地にアクセスできるというような、近すぎず遠すぎずの程よい距離が保たれている。

余談だが、最近オランダで盛り上がってきている「フードフォレスト(食べる森)」の取り組み。聞いた話によると、ある農村では住民にフードフォレスト・プロジェクトを立ち上げたいと説明したところ、この真っ平な土地に森ができるなんて目障りだ、と反対されたらしい…それほど平地の風景に誇りを持っているのだろうか。

オランダ東部のあるパーマカルチャー・ガーデンには、フードフォレストが広がっていた(手前は菜園。奥に森)

話を戻して…そんな中、土地不足は深刻な問題だ。農業界・エネルギー業界・住宅業界などが土地を引っ張り合いっこしている。
農地価格も住宅価格も、ここ数年ずっと上昇傾向にある。2021年の農地価格の平均は1ヘクタール当たり67100ユーロ(1ユーロ=150円として約1000万円)で、2020年に比べて5.5%高かったそうだ。
私がオランダに留学していたころも、同じ部屋に3年間住まわせてもらっていたのだが、家賃は2回段階的に上がった。


国土の隅々を計画を基に効率よく使おうとする国だからこそ、前回紹介したHerenboerenのような、ひと区画の土地に多面的機能を持たせる取り組みはなかなか理解や支援が得ずらいのだろう。ここにはオランダ人の国民性も関わってくるし、土地事情が実は国民性に大きな影響を与えてきたのだが、これはまた次回の記事に書こうと思う。


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