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3/23 山梨で和紙工房見学と紙漉きワークショップ開催

クラウドファンディングのリターンのひとつ

日本国内の古紙を原料にしたシードペーパーを作りたい、そんな夢を実現した「花咲く和紙」。手漉きで自然乾燥させるこの紙は、4週間で600枚の製造規模しかありません。この紙をより多くの皆様に知っていただきたいと考え、昨年秋、設備の見直しや開発費のためのクラウドファンディングを実施しました。

ワークショップ当日は、なんと雪が降っていました

西嶋和紙の山十製紙さんで、つくり手の思いを知る

そして3月の春休みの土曜日、クラウドファンディングのリターンのひとつとして、紙漉きワークショップを企画しました。場所は「花咲く和紙」を共同開発した山梨県身延町にある西嶋和紙の山十製紙さん。花咲く和紙がどんなふうに作られているか、伝統の和紙の技術ものづくりの思いも含めて知っていただきたいと思ったからです。

参加者は、クラファンのご支援の方2名と、直前のイベント告知で集まった鎌倉のみなさん、春休みで子ども連れのスタッフの家族など、総勢12人ほど。出発地がさまざまなので西嶋和紙の里に現地集合です。

3月末というのに、この日はあいにくの天気。途中の高速道路では横なぐりの雪で、積もったら大変とヒヤヒヤしました。ゆっくり到着した頃には雪が雨に変わりましたが、木に雪がうっすらと積もっていました。1日中寒かったのですが、朝7時に出発して、夜遅くに帰宅。とても充実した長い1日となりました。

江戸時代から続く西嶋和紙の山十製紙

武田信玄に認められた、三椏からつくる和紙

午後1時に集合したあと、まずは和紙工房、山十製紙の見学から。代表であり13代目の笠井さんからご挨拶。

西嶋和紙は戦国時代に現在の伊豆で三椏(みつまた)から作る和紙の製法を学んで持ち帰ったことに由来し、武田信玄に認められた逸品。つるっとした手触りが特徴で、虫がつきにくい三椏は保存がきき、一万円札にも使用されています。

江戸時代にはこのあたりに百軒以上の工房があったそうですが、現在、手漉きで和紙をつくる工房はわずか4軒となり、希少な存在です。

三椏(みつまた)を手にする笠井さん。後ろは三椏の花

加える材料で紙の表情を変えていく

山十製紙は通常は書道用紙を作っていますが、笠井さんは他にもいろいろな新しい紙作りにチャレンジしています。シードペーパーもその一つ。

原料はどんな和紙をつくるかによって、変えているとのこと。例えばダンボールの古紙を少し加えるときれいな滲みになったり、果物の葉を加えてツルツルにしたり、あるいはざらつかせたりと技があるようです。

山十製紙の書道用紙は、三椏が高価で入手困難になったことから、今では主に古紙を原料としているとのこと。なので、花咲く和紙の原料と同じです。シードペーパーは種子を入れることで紙の表情が変わります。

見慣れない機械に参加者一同、興味津々

すだれで大判の紙を漉き上げる

その後、ふだんなかなか見ることのない、和紙の製造工程を順に案内していただきました。中でも大きなすだれと水槽にみんなの注目が集まります。この機械は笠井さんのお父様が発明したそうで、パルプが上から流れ込み、それを畳のような大きなすだれで漉き上げます。

この薄い紙は、1日600枚ほどつくれるそうで、書道家、武田双雲さんも使っているそう。

竹ひごでつくった繊細なすだれで紙漉き

その奥には水を含んだ和紙を油圧で絞る機械もあり、絞るときはなんと30トンくらいの力がかかるというから驚きでした。

笠井さんは、ここで1日の大半を過ごし作業をしているそうです。

書道用紙を乾燥させるのは女性の役割

工房の屋上はトタンの屋根をふいた半屋外で、漉き上がった紙の乾燥場所です。束になった大きな書道用紙を乾かしており、数日でカチカチに乾燥させます。その一角には「花咲く和紙」を乾かすための板も並んでいました。

紙を屋外で乾燥させた後、再度水につけてやわらかくし、一枚一枚薄皮を剥がすように剥がして熱乾燥させるのは熟練の技。これは女性の繊細な指先の方が向いているそうで、そこでは女性スタッフが担当されていました。

屋上には花咲く和紙を乾かす板もありました

花咲く和紙」も、この同じ女性スタッフさんたちが漉いています。すき枠ですくい上げるパルプの量で紙の厚さが決まるので、1日200枚を均一の厚みに漉くのは、彼女たちの手先と腕の感覚のみ。素晴らしい熟練の技です。

さて、参加者のみなさんも、ここで「花咲く和紙」がつくられていることを実感してくれたようです。屋上からは山梨の山々が見渡せ、雄大な自然を肌で感じることができました。

花咲く和紙をつくる女性スタッフ

工房見学が終わると、いよいよ紙漉き体験

さて、イベントの後半は紙漉きです。このまま山十製紙さんで行う予定だった紙漉きワークショップは、あまりの寒さに、場所を和紙の里の体験工房に移して行いました。

和紙の里には、紙漉きの道具が揃っています。そもそも観光客向けにうちわや掛け軸など好きなものを作る体験教室が多数。

あらかじめ古紙と水を合わせてどろどろにしたパルプを手でかき混ぜます。参加者のなかには家族で訪れた、この春、中学校に入学する男の子や女の子もいて、楽しそうに混ぜ合わせていました。

古紙と水を合わせてどろどろに

シードペーパーづくりのメイン作業といえば

水槽に入ったパルプと種を木枠ですくいとり、そっと不織布の上ではずしていきます。

「表面を平らにしなくては」と、さすがにみなさん緊張気味。
続いて吸引機の上に置いて水気を吸い取り、台に移して乾かしていきます。
ゴーッと下から掃除機をかけたように、水分が引いていきます。

木枠を揺すって表面を平らにしていく

紙漉きはハガキサイズを予定していましたが、参加者のリクエストに応えて、コースターのような丸い紙が作れる木枠も用意していただきました。

「シードペーパーはたった1枚漉くだけでも力と技術が必要だったので、たくさん作る職人さんはすごいと思いました。また行きたいです!」

とは、この春、中学生になる男の子。

乾かすには晴れた日でも半日はかかるので、今回はクリアファイルにはさんで持ち帰ることに。家の窓に貼って陽を当てれば、翌日は乾きます。

どろどろの紙をハガキ大に仕切られた木枠ですくう

手仕事のすばらしさを感じていただいて

後日、埼玉県から参加してくださった女性から、このような嬉しい声をいただきました。

「生産者様に直接お会いし、工房見学や紙漉き体験までできて、応援のはずが、それ以上のリターンを逆に頂いてしまい、感謝の気持ちでいっぱいです。世界の技術の進歩はすさまじい勢いですが、日本の手仕事のすばらしさを改めて感じることができました。この素敵な取り組みや商品をわたしもたくさんの方に知ってほしいです。山梨まではるばるいった甲斐がありました!

こちらは丸型。コースターにもぴったり

地球に優しい花咲く和紙をもっと多くの人々に

こんな感想をいただき、私たちも嬉しく、ますますパワーが湧いてきました。「花咲く和紙」を通して、このような活動を続けていけたらと思っています。体験で得られることを通して、地球に優しく、SDGsに貢献し、もっと多くの人に「花咲く和紙」を知ってもらえるように日々、がんばっていきたいと思います。ありがとうございました。

みんな笑顔で楽しそうでした!

※西嶋和紙の里は、リニューアルオープンのため、6月から当面、長期休館となります。


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