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新規事業開発におけるPoCの重要性
PoCとは
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PoCは Proof of conceptの略で、直訳すると概念実証という意味になります。事業開発、特に新規事業開発の領域では実証実験と訳されることも多く、弊社もその意味合いで事業開発をできるだけ費用をかけずに素早く回していくために活用しています。PoCでは、サービスや製品に用いられるアイデアや技術が実現可能かを確認することになります。
事業開発における実証実験とは
事業開発における実証実験とは、事業者サイドで仮説として立てた顧客ペルソナに具体性があるか・プロダクト(新商品や新サービス)に市場に受容性があるかを検証することです。基本的に、机上で検討した事業モデルには、考慮不足や検証不十分な点が見受けられます。特に新規事業開発では検証をなるべく小さく早く回して、仮説検証から学びを得る機会を効果的に得て事業が失敗するリスクを極力減らすことがこのステップでの目的です。また、実証実験を通して、サービスモデルやWTP(wilingness to pay:顧客の支払い最大意向)を明確にすることで、その後の社内上申の際の投資判断を行いやすくします。
PoCをしないとどうなるか
PoCのステップを経ないと事業者側の仮説のみでプロダクトがローンチされることになり、想定した顧客が存在しなかったり、プロダクトを導入してもらえなかったりすると損失が大きくなります。
PoBとの違い
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必要によってはPoCの後にPoB(Proof of business)を実施します。PoCは顧客への提供価値とサービスのオペレーションの検証をするのに対し、PoBはビジネスモデル検証と定義し、受容された後にマネタイズ可能であるかの検証をするところに違いがあります。
>PoBについて
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PoCでもフェーズを分ける場合があり、初期PoCでは商品やシステムの開発に着手する前に、3ヶ月程度で提供価値の検証を行い、MVPを明らかにするために行われることもあるためMVP検証と同一に実施されることもあります。
それに対して後期PoCではより多くの顧客候補に、小規模・短期間でサービスの無料トライアルを実施し、最後に有料でプロダクトを利用したいかの意向の検証を行うものになります。
PoCのポイント
PoCの前のステップで作成したMVP(Minimal Viable Product)を検証することになるので、MVPを作成していない場合はまずMVPの作成を事前に取り掛かります。
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MVPを設定できた後に、需要があるかの検証を行うために、実証実験に取り掛かります。事業者が設定したコア価値に熱狂的に共感して、お金を払ってまで利用する価値があるかを顧客に確認します。
ユーザー起点で事業の解像度を高めるために適切な方法を選択し、コストと時間をなるべくかけずに素早く検証してきます。インフラにはお金をかけず、ノーコード・内製でクイックに顧客体験を再現することをお勧めします。予算があるからといってサイト制作やシステム開発に投資してしまうと、検証の段階で内容を変更する必要が出ても柔軟な改善がしにくくなります。内製(または専門人材のアサイン)によって、低コスト・高回転で改善できる体制をお勧めしています。
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SEEDERでは実証実験の段階から商品開発・サービス開発の前に、 初期顧客を獲得して顧客開発を行うことを念頭に受容性の検証を行います。いきなりプロトタイプ開発に費用と時間をかけずに、プロダクトの哲学に共感してくれる生活者(最初のファン)を先に獲得し、顧客が見えた状態で開発することを重視しています。これによりその後のフェーズでの開発が進めやすくなります。
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そのため事業者サイドとしてもPoCに臨む姿勢としてはプロトテストではなく、プロダクトのトライアルローンチであるとした前提で臨むことがより重要になります。これにより検証を行う初期顧客が”営業”された時も「自分が最初の顧客である」と理解して「自分がこのサービスを使いたいと思うか」という素直な評価を得ることができます。
もしプロトテストとしてユーザー候補に「このサービスをどう思うか」という”プレゼンテーション”をしてしまうと、「いいと思う(ただし自分はお金を払ってまでは利用しない)」というアウトプットを得てしまい、事業者として誤った判断をしてしまうことにつながるためです。
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ここまでお読みいただけるとイメージがつくかもしれませんが、オペレーション構築としても「守り」に当たるカスタマーサポートよりも「攻め」に当たるカスタマーサクセスを重視して構築していきます。初期顧客に対してデプスインタビューを実施したり、LINEなどを通じて攻めの接点作りを重視していきます。
PoCの実施方法
PoCの実施方法には大きく分けて4種類あります。
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プロトタイプ型
試験やデモ用に制作された実験機を活用した実験手法。
例:Twitter:社内でグループチャット型のテストモデルを活用して実験する手法
オズの魔法使い型
本来は自動化されたプロセスやシステムを伴うプロダクトをの一部手作業型のwebページ開発手法。LPや注文画面を作り、裏側は手作業で行う
例:Zappos:webページだけ作成し、注文が来たら手作業で購入・配送
コンシェルジュ型
全て手作業で行う型の実用機能および体験開発。アナログにイベントを実施したり、プログラムを体験してもらう手法。
例:Foodonthetable.com:直接スーパーで主婦に声かけ、サービス内容を訪問して提供した
カスタマーリサーチ型
制作物を用意することなく、紙一枚でMVPを表現し
そのプロダクトを利用したいか、なぜ利用したい(利用したくないか)をヒアリングしてプロダクトのブラッシュアップに活用する実験手法例:AppSocially:商品の機能説明をPDFに用意し、見込み客の声を確認しては、PDFを更新し、ニーズを確認した
日本企業では伝統的には1が採用されてきましたし、今でもハードウェアのメーカーなどでもまずプロトタイプを作成してみて、と考える会社は多くありますが、MVPとして顧客に届ける価値を定義しておかないと、製造上の課題から作りやすさのために顧客に届ける価値を知らず知らずの間に既存するプロダクトになっていたりするので、MVP定義から小さく早くPoCをして検証していくプロセスは事業の成功確率を高めるためには必須ではないでしょうか。
先進的な生活者”トライブ”にインタビューし検証していく
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MVPの記事でも触れていますが、SEEDER独自の先進的な生活者”トライブ”と一緒にプロトタイプ(ペーパープロト)で実現できるか検証していくことが有効です。トライブは一般の生活者と違い、自身の”義憤”を解決するために選択的に尖ったライフスタイルを送っているため想いの言語化ができます。彼らは自身の義憤を解決できるプロダクト開発に寄与できるので、開発にも協力的に応えてくれる場合が多いです。
SEEDER独自の先進的な生活者「トライブ(TRIBE)」について知りたい方はこちら
>トライブとは
PoCの前のステップ、MVP作成についてはこちら
> 新規事業開発におけるMVPとは?
PoCの次のステップ、PoBについてはこちら
>PoBとは