2021年、読んで良かった『小説の技法書じゃないけど小説づくりの助けになった創作の本』三冊
今年も創作のことばかり考えていた。
自身の小説力不足を痛感したり、マンガやゲーム、映画ジャンルの隆盛を眺めて小説を書き続けることについて色々考えさせられたり。
そのためか、一年で読んだものを振り返ってみると、小説以外の創作に関するものがとにかく多い。
インディーズゲーム制作やアナログゲームのデザイン、ファンタジー背景イラスト、Vtuberの番組づくり、漫画づくり、文章でバズる方法……
そして、映画。
それらの中でも個人的に読んで良かったと思う本、小説づくりに多くの学びを持ち帰ることができたおススメの本を三冊、備忘録代わりに書き記しておく。
たぶん小説以外の創作にも役に立つので、気になった人は読み進めてもらえば幸いだ。
〇『ストーリーの解剖学ーハリウッドNo.1スクリプトドクターの脚本講座』
今年の六月から三か月間ぐらい、映画を一日一本観る習慣を続けた。
結論:映画、面白すぎる。
その面白さ奥深さに衝撃を受け、どのように映画が作られているのか(どうすれば同じぐらい面白い作品が作れるのか)を探るべく技法書、特に脚本関連を読み漁ったのだが、個人的に一番しっくり来たのがこの本だった。
『解剖学』と銘打っているだけあって、物語作品の創作工程を細かく分解し、各レイヤーごとに名作を例に挙げながら設計思想や構造、それらが観客にどのように作用するかを解説している。
物凄く基礎的な部分から書かれているので応用が利くうえ、いわゆる『ドラマの作り方』など感覚的な説明で済まされがちな部分までしっかり言語化してくれているので、多少創作に慣れていてもどこかに必ず得る物があるように思う。
個人的には、物語の構造を概念的に言い表す『設定原則』の考え方と『キャラクターの欠陥』に関する項で目から鱗が出た。
独学で小説をやっている身としては、こういう本が一冊手元にあると凄く助かる。もっと早く読んどけばよかった~! となった一冊。
ただ、作品が売れるかどうかみたいな部分にはあまりフォーカスしていない(解剖学なため)ので、同じく脚本を扱った『SAVE THE CAT の法則 本当に売れる脚本術』などと合わせて読み進めると互いに補完し合っていい感じだ。
あと、作例に『ゴッド・ファーザー』が頻出するので、予め見ておくとGOOD。
〇『ルックバック』
「マンガじゃねーか!」と思われるかもしれないが、
『小説の技法書ではない』し、
『小説づくりの助けになった』し、
『創作の本』でもあるのでタイトルに偽りはない。
『面白い作品を読むこと』ほど、面白い作品を作る糧になる体験はたぶん無い。
その意味で、今年一番衝撃を受けた作家『藤本タツキ』先生の作品から『ルックバック』をピックアップした。
そもそも、↑の映画習慣を始めたのは同先生作『チェンソーマン』の面白さを理解したかったからだ。
そんな中で先生が世に放った長編漫画が『ルックバック』。
『チェンソーマン』の無情な部分やテンポの良さばかりに目を囚われていた自分が、ぐっと『感情』の世界に引き込まれてしまったのを感じた。
後述する経緯で自分は『感情』表現の重要性を明確に意識することになるのだが、その端緒は『ルックバック』に深く感情を掻き立てられたことにあると思う。
藤本タツキ先生作品、特に『チェンソーマン』と『ルックバック』は、今後とも影響を受け続けることになると思う偉大な作品だし、『小説で漫画に勝ちたい』という密かな野望における最大の仮想敵でもある。
っていうか単純に面白いので、おススメ。
たぶん皆もう読んでるとは思うけど……
〇『図解だからわかりやすい映像編集の教科書』
『編集』とは、映像製作の一工程だ。
映画づくりにおいては、脚本に沿って撮影された生の映像素材や音声を再構成し、一本の映画として完成させる作業のことを指す。
つまり、作品完成に一番近い部分、観客の存在を最も意識する工程だ。
上述した藤本タツキ先生作品において、独特のテンポや面白さを生み出している一因は『編集』技術なのではないかと仮説を立て、編集を学べる書籍を探した末にこの本にたどり着いた。
タイトル通り、教科書である。
『つくりかた』系の技法書にありがちな制作ソフトの使い方解説ではなく、いかに断片的なカットを繋ぎ合わせて観客の意識にとって自然な物語を作るか、理論や知識が初学者向けに分かりやすく紹介されている。
他の分野ではあまり触れられていない、シーンの連続性やテンポの正体、視覚メディアの特性、情報量と時間の相関、人がシーンをどのように認識しているかなどに触れられていて、映像で小説をイメージする自分にとっては最適の教材だった。
俳句を題材に、文章がイメージを想起させる仕組みについても触れられているので、文章表現に関してもここでしか得られない栄養素があった。
上で立てた仮説は部分的には正しかったように思う。
複数の断片から連想によって一つの感情を組み立てる『モンタージュ理論』は藤本タツキ先生作品の感情表現にも見受けられる考え方なので、小説に取り入れられる部分は積極的にものにしたい。
また、まだ読んでる途中なのだが、映画の編集に関しては『ゴッドファーザー』などの編集を手掛けたウォルター・マーチさんの『映画の瞬き』という本も良い。
映画編集においては、『感情』に最も重きが置かれる。
今にして思えば『チェンソーマン』に感じた表現の凄まじさも、読者やキャラクターの『感情』を最大化するべく組み上げられたモンタージュと解釈できる。
『編集』を知ってからは、明らかに『読者』を意識して小説を書けるようになったので、そういう部分が気になる人にはおススメだ。
〇おまけ(本ではないけどオススメしたい)
さて、三冊のおススメの本を紹介してきたが、最後に『本』ではないものを紹介させてほしい。
イラストレーター『さいとうなおき』先生のyoutubeチャンネルだ。
さいとう先生は主にイラスト制作についての動画を投稿されているが、生活習慣やメンタル、SNS運用、努力のしかた、タスク管理や効率化やインプットについてなどなど、クリエイター全般に適用できる幅広い知見を提供してくださっている。
イラスト制作に興味が無いからと見逃してしまうにはあまりにもったいない『生きた情報』の宝庫なので、リンク先のチャンネルから動画一覧をスクロールして眺めてみて欲しい。
必ずどこかにビビッとくる動画が見つかるはずだし、観た後は創作へのやる気がムクムク湧き起こっているはずだ。
また、先生は来年の頭に新しく技法書を出されるらしい。
自分は情報が流れてきた瞬間に即予約したが、どうやら予約開始から二日ぐらいで一旦完売状況になっているようだ。
もしかしたらこの本が来年のおススメに入ることになるかもしれない。
〇来年につづく?
……と、こんな風に創作のことをまとめていたら意欲が高まってきた。
色々なメディアに触れたことで小説の強みが(僅かながらに)分かったのでで、ひとまず小説で行けるところまで行ってみようと思う。
新作、来年も出せたらいいなぁ。
できれば、物理書籍で。