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「変わらないために変わること」の話

second placeの佐藤です。
どうぞよろしくお願いします。

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大学卒業後にアメリカでバスケットボール選手として武者修行をしていたときの話です。

当時は武者修行として、主に現地に精通されていた方にご紹介いただいたシカゴや、フロリダにあるIMGアカデミーを拠点としながら、NBAやマイナーリーグの各チームが全米中で開催する多くのトライアウト(各チームが優秀な選手を発掘する機会)に参加しました。

決して安くない参加料を事前に支払った上で、飛行機を乗り継いだり、3時間以上自ら運転して会場にたどり着いてみると、紙の切れ端に「中止」の張り紙が入口にされているのみ、などというようなことが頻繁に起こる(当然ながら返金はありません…)、とても勉強になる?経験でした。

トライアウトでは、個人スキルをチェックするメニューを行い、最後に簡単な戦術などの説明があった上でゲーム形式のメニューを行う、というのが各チームの基本的な流れとなっていました。元々選手として得点を多くするよりも、守備だったり、コーチ陣が行いたいプレーや戦術を理解してすぐにコート上で表現することを得意としていましたので、トライアウトでも得意な部分をアピールすべくプレーをしました。ある程度自分の中でも手応えがあることが多かったのですが、なかなか評価されないことが続きました。

当時ではとても珍しいアジア人の参加ということで、地元のメディアから取材を受けたり、チーム側の方々から声をかけていただくことが多かったので、この機会を利用して毎回わずかながらフィードバックを聞いてみる中で、おぼろげながら根本的な考え方の違いが見えてきました。

あくまで当時の話としてお話しますが、評価基準として①シュートを決められる②シュートを打てる③パスができる、の3つがあると単純化したとき、当初の私は最初に①と③が重要で、最後に②が評価されると考えていましたが、どうやら②が①と同様に最も重要で、③は最後に評価される、というものでした。

NBAの試合を観ていると、地味なプレー、数字に残らないプレーを黒子として黙々とこなす選手を何人も見つけることができましたが、そんな彼らもトライアウトのような環境では、相手からボールを奪い、パスをすることなくひとりでボールを運んで、ダンクシュートを決めることがほとんどだということです。自ら得点を取りにいくスキルや姿勢があることが大前提として、初めてパスをする選択肢が出てきて、評価されるとのことでした。

評価をしていただくためには、この評価基準に適応していく必要性を痛感し、多少戦術を無視してでも「得点を取りにいくこと」(得点を取ることではありません)にかなり意識的に注力するようになりました。最終的には当初と比べて多くのチームから評価をしていただけるようになりましたが、アメリカのバスケットボールの奥深さ、埋め切れない違いのようなものを身を持って体感することになりました。

この経験を通して、ひとつの環境の中でも、価値観や立場によって役割や取り組み方が変わること、環境に適応していく必要性に触れることができました。自分の中で変えてはいけないと感じる本当に大切なものとのバランスを追求しながら、「変わらないために変わること」とはどういうことなのか、今も考え続けています。

second place 佐藤

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