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相手の頭蓋骨を褒める(7/19)

セーヌ川に最も近いレッドゾーンの住人、および通勤や物流など仕事でアクセスが関係の人。それからその周りをぐるっとグレーゾーンが広がっている。

オリンピックゲームがもうすぐという事で、重い腰のパリもいよいよ本当の本気で?設営を進めており、セーヌ川近辺と主要会場付近は物々しい雰囲気を醸し出す。

何もかもが後手、例えばそれは「カミング・スーンの”スーン”概念が我々とはかなり違って”スーン”していない」ことであったり、カンヌ映画祭にトム・クルーズ氏がヘリで登場という「アメリカのスターがスクリーンを飛び越えて、まるでトップガンのように登場する!....という演出の準備が前日になっても間に合ってなくてリハーサルも出来ないけど、まあイケるっしょ。最後の辻褄合わせは得意なんで!」みたいなことであったり、別に取るに足りないフランスの常識である。

しかしながら今回はほんの少しキリッとしている?ではないか!オリンピックとなると流石にパリプライドが黙っていないのかもしれない。
何せ、これまでの長い長い歴史で、世界一観光されている街の王座に君臨し続けているのだから。

はっきり言って、学生時代のパリ(2000年代)と比べて、2024年のパリは結構これでもちゃんとしてきた印象で、なんなら少し戸惑う。なんか....ちょっとちゃんとしてる?みたいな。ちゃんとしちゃってる、マジ?みたいな。

私が歳をとったことで、ノーキノコ状態で幻覚を見ることが容易くなったのかもしれない。はたまた、実際にパリも変わってきたのかもしれない。

7月時点でのプロ野球の順位がアテにならないように、パリの便利化にはまだまだ警戒は必要だ。(本日、カープは首位に返り咲いた)

さて、お恥ずかしながら上記ゾーンに生息するセブリー・イン・パリスは、徒歩で右岸へ橋を渡りたい場合「PASS JEUX」なる通行許可証を申請する必要があるのだ。「あるのだ」とエグいくらいの高飛車な態度で当たり前の如く申し上げたが、実際にはすっかり忘れており、というより「まあ、なんだかんだ通れんだろ?」とたかを括って、無申請のまま橋の側まで行った。

この数日間は、兎に角どこからそんなに湧いた?と驚く数の警察官や国家警察官が兎に角そこかしこに溢れている。独立記念祭が終わったフランス人たちはそそくさとバカンスに出掛けたのだから、余計に警察官の人数が際立っていた。

幾らまでも時間も人員も持て余した彼らに「パスがないなら通れません!」とあっさり拒否されて玉砕。

得意の白々しい演技で困り顔を作り「ええ、知らなかった... 助けて.... それってどうやったらできますか...?ぴえん」みたいな感じで、それはもう絶対にこいつとは友達になりたくないくらいの態度で、軟派な雰囲気の男性の警察官を選んで声をかける

(ええ、文字に起こすと本当に最低な女なんですけども。でもごめん、神に誓って日常生活で悪用はしていないから!切り札として持っているだけだから!!神とか信じていないけれど!)

案の定、「あらら、知らなかった?可哀想に!教えてあげるね」とウインクを飛ばしながら警察官の男性が親切にしてくれる。
泣き言を言い続けながら、どさくさ紛れで操作内容をいちいち見てもらうことに成功した。
こんなものは一人でやっても面倒くさいし、面倒くさいからよく分からないわけで、プロが見ている時に申し込んでしまうのが断然良い。

パリに移住してからというもの、この姑息さとだらしなさに輪をかけてしまい、グータラの上に樽のように肥えた腹を乗せてYouTubeなんか見ちゃうような私なので、こうして「一番早くパスを取得できる方法」を警察官に教わって早々とパスを手に入れたのであった。

それにしても、昔のマクドナルドの店員さんですか?みたいなクック帽(正式名称は存じ上げない)を被ってもサマになるなんて、欧州の方々は骨格とか頭蓋骨に恵まれているとしか言いようがないな。今度から、切り札の中に「相手の頭蓋骨を褒める」という項目を増やしておこう。何かと使えるかもしれない。

一握りの通行人だけが許されたセーヌ川沿いの道や、ほんの一部を除いた橋などはゾンビタウンのように物静かで、あまりに珍しくて無意味にウロウロとしてみた。自転車を漕ぐ人は快適そうに大通りのド真ん中を颯爽と通り過ぎている。パリはコロナの時にロックダウンが厳しかったから、その時もこんなふうにゾンビタウン化していたのかなぁなんて思いながら、なかなか撮れない光景のパリを、品のないミーハーのように出し惜しみなく撮ってきた。

明日も無意味に通行してみようかな。

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