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セビー、町医者に行く(5/9)

身体中が痛い。特に前に屈んだ時などは「びよーん」と餅つき大会のお餅になったみたいに、杵に肉片を持ってかれてしまった気分になる。あくまで想像だが、今ならあいつ(お餅)の気持ちが分かる。
そして、きな粉かお醤油どちらかで食べるなら私は絶対にきな粉派だ。ちなみにお正月のお雑煮は白味噌派だ。

昨日の日記では「同情」についての話が長くなってしまったため消してしまったのだが、実は町医者に罹った。以前、テキトーな町医者の処方のせいで薬の副作用により脾臓の肥大、体調不良が思わぬ形で悪化し長引いた。
エコーの専門医、CTの専門医... と高額な医療費を払った上に、フランスは全て専門医が別れているため、病院もバラバラ。何週間も待たされては予約の医院に足を運ぶ、を何度も繰り返し、当然その間はずっと具合が悪いまま。

町医者を二度訪れた時は「とにかく具合が悪いならもう一回同じ薬出しとく?でも新鮮なフルーツを食べて寝るしかないわよ」という、そんなんうちのおばあちゃんとか近所のおばちゃんでも言ってたわ!みたいな事だけ言われて終わった。
その先生が二度目に処方した薬がオーバードーズで、さらに膀胱炎を併発する事態に。これは日本に帰国してから診てもらったらあっさり治った。

「なんでこんな悪化するまで放ったらかしにしてたの?」と日本の医師に聞かれたが、放ったらかしどころか、大枚叩いて何度も医者に罹った話をした。
あゝ日本の医療!日本の医師の優秀さ!(何も医師だけではないが)と、しみじみと思ったものだ。

当時付き合っていたドイツ人は祖父が医師で、わりと医学にも知見のある人だったのだが、エコーの専門医から異常がないと言われた私の膨れ上がった脇腹をさすりながら「これは、脾臓が肥大しているか、あるいは腎臓に何かしら問題があるよ。エコーで映らないわけがない!これだからフランスの医療は本当にどうしようもなくダメなんだ!(以下、お馴染みのフランス悪口大会が始まったら止まらない。欧州随一の嫌われ大国・フランス(笑)」とプンスカしていたが、日本の病院で診てもらったら彼が言ってたことは的中していた。そしてこれも、あっさり治して頂いたのである。ありがたや....

そんなトラウマから、今回は自力で治すのさ!と思っていたのだが、とにかく広告の音楽を掛け持っているし、今月中に仕上げなければならない歌モノの制作に映画のサントラに、パリのエージェントに言われていた仕事に、フランスの行政手続きを終わらせないと...など、休んでいる猶予などどこにもない。

パリに住んでいるA君の彼女にお勧めのお医者さんを教えてもらうも、住んでいるエリアが遠すぎる。
正直言って家の中で立ってるのもきついのに、メトロに乗るなど言語道断だった。何より予約がすぐ取れなくて、最短で四日後と聞いて絶望的な気分になった。

仕方なく、本日すぐに取れる病院を探したら「町医者ですら予約がとれない」で悪名高いフランス。ひとつだけ枠が空いていた先生がいたので直ぐにアクセスすると、保険適応外の文字。なるほど、だから空いているのか。

徒歩圏内だったし、もうお金のことを言っている場合ではないので予約をしてすぐに病院に向かった。
病院と言ってもフランスでは、住居用アパートと殆ど同じ状態の建物(というか、普通の住居用アパートの一階とか二階とかに)先生毎が部屋を構えているシステムだ。士業の先生方のオフィスのイメージ。

13時に予約したけれども、実際に部屋に入れるたのは13時50分だった。入ったら、どんどん質問されて答える。先生は感じが良くて、私の好きなタイプの飄々とした美人だった。基本情報と、これまでの医療機関の受診歴とか、常用薬について伝える。たまに「それって要するに◯◯ってこと?」と医学用語で聞き返されるも、そもそも日本語でも詳しい成分を把握していないので、フランス語で分からない点もいくつかあった。単語力不足を感じる場面だが、それも聞き返すと応じてくれた。

それから、検査をしてもらう。どうやら流行の扁桃炎ではなさそうだ。「インフルかコロナかも知れないけど、興味あったら自分で調べてみて!だからって何も変わらないけどね!」という、日本だったら速攻で消費者ホットラインにクレームか、インターネットで拡散されて大炎上案件な態度だろうけれど、こんなの全然朝飯前のスタンダードだ。

「とりあえずドリプラン」という、これまた誰でも分かる処方(日本で例えると、病院の先生が「薬局でバファリン買って下さい」と言うようなもの)と、フランス人が大好き(まあ、実際に嘘ではないのだが)「フルーツでビタミン沢山取って、沢山水飲んで!」を聞くために70€も払ったのであった。

いや、ほんま...

70€でこれは惜しい!と思い、自炊する元気がないから、何か手っ取り早く出来合いのもの買える場所とか知らないですか?と尋ねた。
考えついても良さそうなものだったが、すっかりその存在を忘れていたピカール(フランスの有名なオシャレ冷凍食品専門店)を紹介される。で調理していない野菜やフルーツ、お魚なんかが良いわよ。もちろんビオでね!とのこと。

70ソンチームくらいの価値の情報かとは思うが(失礼)自分がうっかり忘れてたことを思い出させてくれた有り難さで、お金のことはまあいいやって気分になった。

帰りに薬局によって、処方された薬(ドリプランと同じ役割の鎮痛剤、日本のロキソニンの5倍の強さ!あとはほぼ自然系のもの。マグネシウムやプロポリスなどサプリに近いかな?)を購入。

40歳にもなると、体調不良の時だけは贅沢を惜しまない、と多少気持ちも財布も緩くなり、オシャレカッフェでアサイー・スムージーを購入した。6.5€も出して、私は地獄へ堕ちるのか?と危惧したが、具合が悪いのだから、と自分を鼓舞して勇気を出した。
そして翌日(今日)はフランスに来て初めて寄ったスタバではトールサイズのアイスラテを購入!調子に乗ってブイブイ言わしている。
日本のものとは違って、しゃっばしゃばのシャバダバ娑婆アイスラテだったが、それでも心は踊った。そして価格は4.5€とそんな高くもなくて、もう私スタバでええやん、とすらなったくらいだ(調子乗るな、世武)。
なんとなく、飲み物は5€までで抑えたいお年頃 a.k.a 円安だ。

ロキソニンの5倍の効力を発揮しているこちらの鎮痛剤でカラ元気の私はマルシェでアプリコット、ペッシュプラ(平たい桃)、那須、マンダリン(みかん)などを購入して帰宅。鎮痛剤依存が多くなるのも分かるくらいの効きっぷりである。

過去の失敗から学んで、次に同じことをしない。それだけでも少し幸せな気持ちになれる自分のチョロさを愛したい。



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