物欲の生成と無意識下での行動について考察してみた話
自転車に乗る人たちの間で有名なフレーズの一つに
‟ホイールを買ったらフレームが生えてきた”
というものがある。
故障による買い替えなのかグレードアップのための買い足しなのか、理由は色々あるんだろうけれど、自転車(特にロードバイク等のスポーツサイクル)で結構ストイックに走ってる人たちは数年に一度くらいのペースでホイールを買う。すると、新しいホイールに合うフレームが欲しくなって、明確な購買意欲を持ちながらも無意識の内にフレームも買ってしまう。
この無意識下で起こる現象を指して「フレームが生えてくる」と表現する。
‟だって自分のせいじゃないもん。(勝手に)生えてきたんだもん。”
これが彼らの言い分である。
僕が知っているロードバイクおじさんの中に「花咲か爺さん」と呼ばれる人がいる。
氏はロードバイクに興味がある友人にホイールだけ譲り渡す。するとその友人はホイールだけ持っていても仕方ないので、フレームをはじめとしたパーツを買い足し、いつの間にか1台の自転車が完成する。こうやって花咲か爺さんは自分のお古のパーツを譲り渡しては、そこから新たな自転車をどんどん生やしていく。
この時に譲り渡すパーツはグレードが高ければ高いほど効果がある。種の質が高いほど良い花が咲くのだ。
「え、ホイールだけで○万円?!」
そう、一般人にはそれだけでは何の用もなさないホイールが余りに高価なことに驚く。
「こんなに良い物をもらったんだから、ちゃんと乗らないと。」
と思ったが最後、自転車沼にようこそ。
ホイールを譲り渡すときに、合わせてライトや携帯ポンプなども加えると効果的だ。人によってはこれらのオプションパーツを加えることを「追肥」と呼ぶ場合もある。沼の住人の罪は深い。
さて、前置きが長くなったけれど、ここからが本題。
‟レンズを買ったらカメラが生えてきました。”
自分でも良く分からないのだけど、いつの間にか手元に新しいカメラがあった。この不可思議な現状を検証するため、僕の中に残る微かな、そして曖昧な記憶を辿ってみたい。しばしお付き合い願おう。
過日息子の運動会があって、久しぶりにズームレンズを持ち出した。E-520時代の開放のf値が3.5程度のキットレンズなので、テレ端150mm(35mm換算で300mm)だと何とも暗くて緩い画になる。これはこれで雰囲気があって好きなんだけれど、運動会のように躍動感を残すにはもう少しパリっとした感じが好ましい。
また別の日には息子を連れて遊園地に行った。年賀状に使う素材集めのために写真を沢山撮った。この時に持って行ったのが25mmと42.5mmの単焦点レンズ2本。どちらの解像度も素晴らしく、まあまあの写真が撮れた。それでも歩き回るときは25mm、乗り物に乗る息子を遠目から撮るときには42.5mmと、レンズを頻繁に交換するのは少々煩わしかった。
その結果、
‟明るいズームレンズが欲しい。”
そう思ってしまった。
人間というのは動機が明確ならば行動は早いもので、気付くとそれから毎日のようにネットで望遠レンズを探していた。
E-M1ユーザーなので、やはり1番の候補はm.zuikoのPROレンズ。ワイド端からテレ端までf2.8の通しでレンズ自体の質感も良い。もう少し望遠側が欲しいならf4の通しでテレ端150mmのレンズもある。どちらも評判も良い銘玉だ。欠点としてはどちらもかなり高額ということ。中古市場でもなかなか値は下がっていない。
最近レンズを2本続けて買ってしまったので、少し懐が寂しいことになっている。予算はそこまで潤沢ではない。
そんなとき、某ヤ〇オクというオークションサイトで程度の良さそうな望遠レンズが出品されていた。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.
https://panasonic.jp/dc/products/g_series_lens/leica_dg_vario_elmarit_12-60.html
言わずと知れたパナライカの標準ズームレンズ。35mm換算で24mmから120mmまでをカバーする万能レンズ。テレ端でもf4.0の明るさは魅力的。
実際に使っている人の話を聞いても高評価。
にわかに興味を引かれたわけだけど、相場よりも値段が高いことが気になった。詳細を見てみるとカメラ本体とセットだった。
ここからはよく覚えていない。
カメラ本体の中古価格の相場を調べたところ、レンズとセットの値段としては破格だった。手元のパナライカのレンズも多くなってきたので、パナソニックのカメラも使いたいなと考えたのかもしれない。
気付いたら目の前にカメラとレンズのセットがあった。
ヤフ〇クは軽い気持ちで覗いてはいけない。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
ネットを彷徨っていたら、考えなしにカメラを買ってしまったという話(ただし、1mmも後悔していない)。
LUMIX G9 PRO を買いました。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mmはG9のレンズキットとして販売されているだけあってボディとのバランスは良好。
ボディもレンズも新品同様で、試しに数枚撮ってみたけれど動作も写りも問題なし(冒頭の写真は試し撮りで近所の猫を撮ったもの)。
E-M1とPROレンズの組み合わせと同様に、G9とパナライカ12-60は防塵防滴とのことなので、せっかく前の持ち主が大事に使っていたところ申し訳ないのだけど、比較的ラフに扱っても大丈夫そうだ。
E-M1はサブ機ということになるけれど、別のカメラを使うからこそ分かるE-M1の良さというものもある。一眼2台とコンデジ1台の体制でこれからのカメラライフを楽しもう。
年末にもう1台くらい増えてるんじゃないかという一抹の不安を抱えつつ。