“描き続ける”という一つのルールが、到達するところ
努力や根性と言った精神論で、地味にコツコツひたすらに頑張ることが古いやり方と言われるようになってきた。水を飲まずに運動し続けることは体に悪いし、毎日筋トレをすることは超回復の性質を存分に活かせず効率が悪い。
この潮流はビジネスにも及んでいて、最近の自己啓発本、ビジネス本では、そういった古臭い旧来の考え方を一度リセットして、新しい角度から最短ルートで目的地にたどり着くことがいいことだと、内容に多少の差はあれど、書かれていることが多い。
しかし、そういった本を読んだ人が誤解をしているなと個人的に感じることがある。(これは自分への戒めも込めている。)
それは努力を怠っていいとは書いていないということだ。どう努力すれば効率がいいかが書いてあり、努力することは否定していない。
むしろ努力は必要なこととして書かれている。
そして、そのことを改めてぼくに教えてくれたのは、
マンガ家つのだふむさんだった。
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つのだふむさんは、明日からLINEマンガで「りさこのルール」の連載を始めた新人マンガ家さんだ。
時は昨年の10/31に遡る。世の中が年に一度の仮装パーティーに盛り上がる中、Twitterでこんな投稿があった。
そして次の日の朝、予告通りに一枚の美人の絵が上がる。
正直な感想を失礼とわかりつつ述べるなら、
「んーーーー、かわいい??美人???」と思ってしまった。担当編集である佐渡島さんもこんなコメントをしている。
これは大丈夫だろうか…。余計なお世話で失礼でしかないのだけれど、ここから本当に美人になっていくことがあるんだろうかと思った。でも同時に絵が変わっていく様を興味本位でみたいと思う野次馬の自分がいた。
スラムダンクもジョジョもナルトもブリーチも作品が進むにつれてどんどん絵柄が変わっていく。そして一巻の絵と最終巻の絵を見比べてこんなに人はうまくなるのかといつも驚く。その過程をこれからTwitterで生で見れるのかとぼくは勝手にワクワクしていた。
そして約半年の月日が流れ、先日のふむさんの投稿にハッとした。
美人…。
そして、全然絵柄が違う。「半年でこんなにも変わるもんなんだ」と驚愕した。数字が振られている通り、この日までに実に169人の美人を描き続けてこの絵になったということである。
この瞬間、ふむさんはぼくの中でプロシュートの兄貴になった。
「努力をする」ということはこういうことなんだと言葉でなく、心で理解した。
ぼくは何か不断の努力を続けているだろうかと自分に問うた。サードドアだなんだと言って、楽な道に逃げて努力しない言い訳をしているんじゃないかと。
有名すぎるコピーライターの糸井重里さんも文章が上手くなりたいと教えを乞いにきた人にはとりあえず3年間毎日文章を書きなさいと言うらしい。
HUNTER×HUNTERのネテロも感謝の正拳突きを毎日1万回繰り返した結果、音を置き去りにした。
ふむさんはまだ半年なのである。たった半年間本気で継続することで人はここまで登ることができる。ただ必要なのはやり遂げるという強い意思だけだった。
この記事のサムネイルはふむさんの「りさこのルール」の登場人物りさこの絵だ。左が初期のりさこ、右が今のりさこ。もはや完全に別人。上達と一言で言ってしまうには凄まじいものがここにある。
努力を続けることができるのも一つの才能という意見もあるかもしれないけれど、きっとしっかり目標を据えて一歩ずつ走れば、人は走りきれるんだと思う。
小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道
これは野球選手イチローの言葉だ。
ふむさんもきっとこのままの足取りで“とんでもないところ”にいってしまうんだろう。
※追伸※
ふむさんが毎日あげている「美人一年」を全部まとめてみれるようにtogetterにまとめました。ふむさんの上がり続ける画力にももちろん注目なんですが、色んな画風に挑戦する過程で「あれ?知ってる?」みたいな美人が出てくるのも楽しいのでぜひみてみてください。