記憶の中にだけ残る景色
木曜の夜、石川県珠洲市に行く急用ができた。
土曜の朝、絶賛苦戦中の原稿から一旦離れて気散じの旅へ出る。
現地は快晴、土砂降り、天気雨と空模様がくるくる変わる不思議な天気。用事を済ませた帰りに立ち寄った見附島で、感動的な景色に出会う。
虹、空、海、鳥居、そして見附島。
視界を遮るものは何もない。
異世界への入口のようにも見える、神秘的な光景が広がっていた。
虹は見事な半円を描き、雲の中でも色鮮やかに主張する。大きさは、首の可動域をフル活用してやっと全体像が見えるくらい。海を少し泳げば手が届きそうなスケールだ。
必死にスマホで撮影したが、虹はカメラに入りきらず色もぼやけてしまった。悔しいけれど、偶然出会った景色を完璧に写すことは難しい。あの美しさは私の脳内でのみ再現可能だ。
さまざまな場面を切り取り、形として残せるのが写真。
その場面に出くわした「瞬間」を残せるのが人の記憶。
きっとこれも、旅に出る理由の一つ。