「自分の思う幸せ」を追求していいんじゃないの?
買ってしばらく読めずにいた「きのう何食べた?」の14巻をやっと読めた。
1巻につき1〜2シーンは本当にいいセリフが入っているので,毎回どきどきしながら読んでいる。
この作品のメインとなるものは,シロさんやケンジなど登場人物が作る数々の料理なのだけれど,それを囲む人たちの人間ドラマも同じくらい,いやそれ以上に緻密に,丁寧に描かれているのが本当に好きだ。
いろいろ事件はあるけれど,基本的には慎ましく生きる人々。
でもその中で色々な人間関係のトラブルに出くわしたり,うまくいかなかったり,「世間一般の呪い」にかかりかけたりする。
よしながふみの描く「一般人」のリアリティは凄まじい。
定型的な幸せの型を信じ,それに当てはまらない人を攻撃し,容赦なく人に呪いをかける。
「この日本で現在,本当にありえている行為」の描き方が緻密すぎて,あるある!と同意してしまう反面,つらくも感じてしまうのだ。
その呪いを受けるのはゲイカップルのシロとケンジだけではない。その周りにいる,「ごく一般の人々」とふだん呼ばれる人々(今回はシロの所属する弁護士事務所で働く志乃さんカップルなど)にも向けられている。
わたしたちは日々,なにかにつけて呪いを受けるような環境に属しているのだ。
でも,みんなその呪いをときに優しく溶かし,ときに全力で跳ね返していく。
世間一般が思う幸せではなく、「自分はどうしているのが幸せなのか」「誰といるのが幸せなのか」という、自分が思う幸せを求め、分け合い、生きていく。
そんな人々の姿が本当に好きだし,それに毎回救われている。
今回出てきた料理の中で特に試したかったのはトマトとニラ入りの麻婆豆腐と,豚の角煮。
こういうの読むと自炊する気が起きるんだよなあ…!早速試してみよう。
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