第4回 非常勤特別職の解任について
ちょっと間が空きました。
今回は、非常勤特別職の解任についてという、ちょっと穏やかではない話題です。
誤解していただいては困るのですが、解任したいから調べたというわけではありませんので念のため。
さて、学校運営協議会制度というのがあります。
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地方教育行政の組織及び運営に関する法律
第四十七条の五 教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校ごとに、当該学校の運営及び当該運営への必要な支援に関して協議する機関として、学校運営協議会を置くように努めなければならない。ただし、二以上の学校の運営に関し相互に密接な連携を図る必要がある場合として文部科学省令で定める場合には、二以上の学校について一の学校運営協議会を置くことができる。
2 学校運営協議会の委員は、次に掲げる者について、教育委員会が任命する。
一 対象学校(当該学校運営協議会が、その運営及び当該運営への必要な支援に関して協議する学校をいう。以下この条において同じ。)の所在する地域の住民
二 対象学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者
三 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第九条の七第一項に規定する地域学校協働活動推進員その他の対象学校の運営に資する活動を行う者
四 その他当該教育委員会が必要と認める者
3 対象学校の校長は、前項の委員の任命に関する意見を教育委員会に申し出ることができる。
4 対象学校の校長は、当該対象学校の運営に関して、教育課程の編成その他教育委員会規則で定める事項について基本的な方針を作成し、当該対象学校の学校運営協議会の承認を得なければならない。
5 学校運営協議会は、前項に規定する基本的な方針に基づく対象学校の運営及び当該運営への必要な支援に関し、対象学校の所在する地域の住民、対象学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者その他の関係者の理解を深めるとともに、対象学校とこれらの者との連携及び協力の推進に資するため、対象学校の運営及び当該運営への必要な支援に関する協議の結果に関する情報を積極的に提供するよう努めるものとする。
6 学校運営協議会は、対象学校の運営に関する事項(次項に規定する事項を除く。)について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる。
7 学校運営協議会は、対象学校の職員の採用その他の任用に関して教育委員会規則で定める事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。この場合において、当該職員が県費負担教職員(第五十五条第一項又は第六十一条第一項の規定により市町村委員会がその任用に関する事務を行う職員を除く。)であるときは、市町村委員会を経由するものとする。
8 対象学校の職員の任命権者は、当該職員の任用に当たつては、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする。
9 教育委員会は、学校運営協議会の運営が適正を欠くことにより、対象学校の運営に現に支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合においては、当該学校運営協議会の適正な運営を確保するために必要な措置を講じなければならない。
10 学校運営協議会の委員の任免の手続及び任期、学校運営協議会の議事の手続その他学校運営協議会の運営に関し必要な事項については、教育委員会規則で定める。
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第10項に「任免」という言葉があります。
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義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律等の施行について(通知)
平成29年3月31日28文科初第1854号
第四
(2) 学校運営協議会
2 留意事項
⑥ 学校運営協議会の適正な運営を確保するための必要な措置について
教育委員会は、学校運営協議会の運営が適正を欠くことにより、対象学校の運営に支障が生じ又は生ずるおそれがある揚合には、学校運営協議会に対する指導・助言や委員の交代を行うなど、学校運営協議会の適正な運営を確保するために必要な措置を講ずること。
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地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)
平成16年6月24日16文科初第429号
第3 留意事項
2 第2項関係(学校運営協議会の委員)
(3)学校運営協議会の委員は、特別職の地方公務員の身分を有することになるものであること。なお、委員については、児童生徒や職員等に関する個人的な情報を職務上知り得る可能性があることから、教育委員会規則において守秘義務を定めるなどの適切な対応が必要であること。
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国でも地方公共団体でも悪い癖(すみません)だと思うのですが、増築だらけの家屋のような通知で、全体像は前の通知を併せて読まなければならないというのは何とかならないものでしょうか。
さて、法の第10項に「教育委員会規則で定める」とありますので、教育委員会規則を見てみましょう。
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山口市立学校における学校運営協議会の設置等に関する規則
https://www1.g-reiki.net/yamaguchi/reiki_honbun/r245RG00000763.html
(委員の解任)
第13条 教育委員会は、委員から辞任の申し出があったときのほか、次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、委員を解任することができる。
(1) 第7条の義務に違反したとき。
(2) 委員が心身の故障により職務を遂行することができないとき。
(3) その他解任するに相当する事由が認められるとき。
2 校長は、委員が前項各号のいずれかに該当すると認めるときは、速やかに教育委員会に報告しなければならない。
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解任の理由が書いてあります。
ただ、この規則ですが、実は文部科学省による規則(例)が示されておりまして、
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学校運営協議会規則の例(H29.4.1法改正後)
https://manabi-mirai.mext.go.jp/torikumi/chiiki-gakko/%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E9%81%8B%E5%96%B6%E5%8D%94%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E8%A6%8F%E5%89%87%E3%81%AE%E4%BE%8B.pdf
(委員の解任)
第17条 教育委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合は、委員を解任することができる。
(1)本人から辞任の申出があった場合
(2)第9条に反した場合
(3)その他解任に相当する事由が認められる場合
2 教育委員会は、委員を解任する場合には、その理由を示さなければならない。
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(例)といっても、各省レベルでどのくらい審査をしているのかわかりません(税条例(例)では結構初稿の段階では誤りがあって改正期日が近くなると(おそらく地方公共団体からの指摘もあるのだとは思いますが)だんだんと精度が上がっていきます。)が、言い回しは別として、解任規定はほぼすべての学校運営協議会についての教育委員会規則に規定されています。
さて、比較のために近いところで学校評議員に関する規定ぶりを見てみましょう。
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学校教育法施行規則
第四十九条 小学校には、設置者の定めるところにより、学校評議員を置くことができる。
2 学校評議員は、校長の求めに応じ、学校運営に関し意見を述べることができる。
3 学校評議員は、当該小学校の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有するもののうちから、校長の推薦により、当該小学校の設置者が委嘱する。
(中学校等には準用規定あり)
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ん、設置者?今回の話題とは直接的には関係がない(と思われる)ので、今回は省略しますが、そうなの?という感じがします。
この省令には解任の規定がありません。一般的に非常勤特別職の解任はどうすればいいのでしょうか。
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学校評議員の委嘱について(通知)(平成27年1月15日26文科初第1038号)(抄)
学校評議員の身分取扱いについては設置者の定めるところによるものであり(「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について」(平成12年l月21日付け文教地第244号文部事務次官通知)参照)、これは学校評議員の委嘱を校長に委任した場合にあっても変更されるものではない。このため、公立学校においては、教育委員会が学校評議員の身分を地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第3項第3号に基づく特別職地方公務員と位置づける場合には、地教行法第26条(現第25条)第2項第4号の規定に該当することから、校長へ学校評議員の委嘱を委任することはできないことに留意が必要である。
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『位置づける「場合には」』ってどういうことでしょう。ボランティアでない(報酬を支払う)場合という理解でいいのでしょうか。
ここで地方公務員法第3条第3項第3号に基づく特別職地方公務員という文言が出てきます。
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地方公務員法
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第3条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
3 特別職は、次に掲げる職とする。
(2) 法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの
(3) 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職
(この法律の適用を受ける地方公務員)
第4条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。
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第4条の規定があることから、非常勤特別職については地方公務員法上の懲戒は適用されないと解されます。
ではどうするのかというと、なんともな規定がありました。
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地方自治法(抄)
附 則
第9条 この法律に定めるものを除くほか、地方公共団体の長の補助機関である職員、選挙管理委員及び選挙管理委員会の書記並びに監査委員及び監査委員の事務を補助する書記の分限、給与、服務、懲戒等に関しては、別に普通地方公共団体の職員に関して規定する法律が定められるまでの間は、従前の規定に準じて政令でこれを定める。
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地方自治法附則第9条には「地方公共団体の長の補助機関である職員」(旧規定では「補助機関たる」となっています)と定めていますが、この「職員」には、副知事、副市長、専門委員等が含まれているものと解されています。(昭和29年5月19日行政実例)
で、この「政令で定める」の政令はどこかといいますと、「地方自治法施行規程」(規程という名前ですが政令です)というのがあり、その中にこのような規定があります。
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地方自治法施行規程
第13条 都道府県の専門委員は、次に掲げる事由があつた場合においては、懲戒の処分を受ける。
(1) 職務上の義務に違反し又は職務を怠つたとき
(2) 職務の内外を問わず公職上の信用を失うべき行為があつたとき
2 懲戒の処分は、免職、500円以下の過怠金及び譴責とする。
3 免職及び過怠金の処分は、都道府県職員委員会の議決を経なければならない。
4 懲戒に付せられるべき事件が刑事裁判所に係属している間は、同一事件に対して懲戒のための委員会を開くことができない。懲戒に関する委員会の議決前、懲戒に付すべき者に対し、刑事訴追が始まつたときは、事件の判決の終わるまで、その開会を停止する。
第17条 第13条の規定は、市町村及び特別区の職員の懲戒について準用する。この場合において、同条第3項中「都道府県職員委員会」とあるのは、「市町村及び特別区職員懲戒審査委員会」と読み替えるものとする。
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「免職」の下が「500円以下の過怠金」というなかなかのギャップがある規定です。余談ですが、「500円以下の過怠金」で検索すると、なんとも香ばしいやりとりが検索結果で出てきます。
これを審査する市町村及び特別区職員懲戒審査委員会の規定は、このようなものがありました。
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京都市職員懲戒審査委員会規則
https://www1.g-reiki.net/kyoto/reiki_honbun/k102RG00000116.html
(審査の要求)
第5条 市長は,本市の職員に免職又は500円以下の過怠金の懲戒に当たるような行為があると認めたときは,証拠書類を添えて,書面により委員会に審査を要求しなければならない。
札幌市職員懲戒審査委員会規則
https://www.city.sapporo.jp/ncms/reiki/d1w_reiki_nonframe/H323902500022/H323902500022_j.html
第1条 地方自治法施行規程(昭和22年政令第19号)第17条第1項の規定に基づき、本市に職員懲戒審査委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
第2条 市長は、その所属の職員で免職又は500円以下の過怠金及び譴責の懲戒に当たるような行為があると認めたときは、証拠書類を添え書面をもつて委員会に審査を要求しなければならない。
前項の譴責とは、戒告、出勤停止、減給及び停職をいう。
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あれ?札幌市のこの規定ぶりはこれでいいのでしょうか…
ともかく、学校評議員を解嘱するには、以上のような手続が必要と思われます。
(条文や解釈を追っただけですので、誤り等がありましたらご指摘いただければ幸いです。)
ご意見ご感想お待ちしています。