対話の時間、一人ひとりの想い|「時の海 - 東北」プロジェクト2023年活動レポート
昨年、2023年は「時の海 - 東北」を始動して以来、最多のワークショップ開催の1年となりました。再び東北沿岸部を中心に南は福岡県、北は青森県と各地のみなさまのお力添えをいただき、2023年12月末には参加者総数2,517人を迎えることができました。
これもひとえに、各地の参加者のみなさま、多大なご協力をいただきました関係者のみなさまのおかげです。改めて、心より御礼申し上げます。
昨年の3月11日には、初めて東京でのワークショップを実現することができました。そちらは以下にレポートがまとまっていますので、ぜひご高覧ください。
さらに、昨年は、ワークショップの方法も新たに更新される機会に恵まれました。
そこで本記事では、2023年の「時の海 - 東北」プロジェクトの活動の様子を、新たに取り組んだ「参加者対話型」のワークショップ、そして各地の参加者の想いを中心にお届けします。
参加者同士で対話する時間を持つこと
福島県富岡町でのワークショップの準備の打ち合わせをしていたときのこと、共催パートナーの「時の海 - 東北」サポートコミュニティ in 富岡町のメンバーの方からいただいたご提案でした。
これまでのワークショップでは、参加者一人ひとりと宮島が対話し、お話を傾聴して想いを受け取るという方法をとり、そして許諾をいただいた方のみ設定した秒数とその想いを代読する形で他の参加者と共有してきました。
確かに、参加者がお互いに語り、傾聴し合い、想いを共有するという時間は、「時の海 - 東北」が大切にしている、一人ひとりの想いや、他者への想像力を耕していける時間になっていくのではないか。そんな期待を胸に、「時の海 - 東北」プロジェクトとしても初めての、「参加者対話型」のタイム設定ワークショップに取り組みました。
富岡町のワークショップでは、4〜5人で1グループをつくり、そこにモデレーター役の運営スタッフが1名入りました。そしてまず最初に、デモンストレーション作品をじっくり鑑賞することから始め、まずは参加者の感性で作品と出会ってもらうこと、そこからさまざまな想像を自由に巡らせてもらう時間を持ちました。暗がりに瞬く青い数字の光を前に、こどもも大人も自然と静かに集中して見入っている姿が印象的でした。
その後、各グループに戻り作品の印象などを自由に語らいます。そして、次に宮島から「時の海 - 東北」プロジェクトの経緯やアーティストの想いについて説明を行いました。
そして、いよいよタイム設定ワークショップの時間です。
まずは一人ひとり、自分の好きな場所でワークシートに決めた秒数と想いを書いていきます。
そろそろ書き終えた頃、再びグループに戻って、それぞれが決めた秒数とどのような想いを込めたのかを対話を重ねました。もちろん、ワークショップに参加するなかで、自分の想いの共有は控えたいという方はその想いを尊重しています。
わぁっと楽しげな声が上がるグループもあれば、じっと参加者の想いに耳を傾けているグループも。宮島はそれぞれの対話の輪に加わりながら、それぞれの想いに触れる時間を過ごしました。
ワークショップの最後には、各グループを代表して、お一人にご自身の決めた秒数、想いについて共有いただく時間も持ちました。
たまたま偶然、この日、この場所に居合わせた参加者同士。思いがけず受け取った誰かの大切な想いや今回過ごした対話の時間は、きっと完成した作品を前にしたときに思い起こされるのではないだろうか。そう感じられるくらい、あたたかく密度のある対話の時間が流れていました。
富岡町でのワークショップを経て、対話型のワークショップの手応えを感じたわたしたちは、実施規模や運営体制などの調整を図りながら、これまでのように「宮島との対話と参加者の想いを代読・共有する方法」と「参加者対話型」の二つの方法を用いてワークショップを展開。その後、八戸市、南三陸町、双葉町でのワークショップでも、現地の運営サポートのみなさまのご協力のもと、参加者対話型の方法でワークショップを開催しました。
さまざまな世代の人々が、久しぶりに会った友人と、または初めましての人と一緒に、秒数に込めた自分の想いを語る。そしてその話に耳を傾ける。その姿は、改めて一人ひとりが育み、背負い、慈しんできた物語があることを実感する光景でした。
数字に込めた想いとは
ここでは、2023年に開催した各地のワークショップのなかから、参加者の想いをいくつかご紹介します。
「時の海 - 東北」のタイム設定は、各地でのワークショップだけでなく、Webからも参加できる仕組みがありましたが、おかげさまで参加者総数が目標の3,000人に近づいてきたことから、昨年12月25日をもってWebから参加を終了しました。
「時の海 - 東北」プロジェクトに賛同しWebから参加してくださった方の想いも、いくつかご紹介します。
2024年の活動に向けて
2024年に入り、新たに二つの展開がありました。
【1】 公式ウェブサイトのリニューアル
まず一つは、東日本大震災から13年目を迎えた今年の3月11日に、「時の海 - 東北」プロジェクトのウェブサイトをリニューアルしました。
今回のリニューアルでは、これまで8年間にわたり取り組んできたワークショップや展示などの活動実績や、これからの活動の方針について「Vision:「時の海 - 東北」が目指すもの」を新たに追加しました。
また、これまでに「タイム設定」に寄せられた「参加者の想い」に触れていただけるよう新たにページを作成。「時の海 - 東北」が大切にしている、参加者一人ひとりの想いは、今後、不定期にはなりますが更新・公開していく予定です。
さらに、「応援する」ページでは、「時の海 - 東北」の活動に賛同し、資金支援をしてくださる「サポート・アーティスト」の参加方法をよりわかりやすく整理しました。
【2】 「時の海 - 東北」プロジェクトのオフィスを開室
今年4月には、福島県富岡町に有限会社宮島達男事務所の富岡町オフィスを開室しました。
「時の海 - 東北」プロジェクトの新たな活動拠点として、この場所を活用したワークショップの実施や新たな企画も行っていきたいと考えています。
そして、この場所を足場に、東北地域をはじめ、全国各地のみなさまへ「時の海 - 東北」プロジェクトの活動状況などを情報発信してまいります。
2024年も早5ヶ月が経ちました。タイム設定の残りの参加枠は、作品を購入設置する場所のコミュニティの方々を中心に参加いただく枠として、東北沿岸部を中心に今年もワークショップを計画中です。
ワークショップの開催情報をはじめ、プロジェクトの進捗状況などは、SNSやニュースレターなどで随時発信しています。
ぜひ、SNSのフォローもお願いいたします。
「時の海 - 東北」の作品完成に向けて、2024年も一歩一歩、着実に歩みを進めてまいります。
どうぞ引き続き、「時の海 - 東北」プロジェクトにお心をお寄せいただけると嬉しいです。