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【バトルフィーバーJ】第52話(完)
バトルフィーバーJ 52話「英雄たちの交響曲」を見た。
怪人製造カプセルくん、喋る
生きとったんかワレェ! と思わず声が出そうになってしまった。
今まで毎週のように休まず、新たな御子たちを世の中に送り出し続けてきた怪人製造カプセル。勝手にエゴスの科学力の粋を集めた巨大機械なのかと思っていたが、どうやら案外有機的な存在らしい。もしかして、怪人が生まれた時たまに流れていたコンピュータのような紹介音声はこのカプセルの発する声だったのだろうか。てっきりナレーションかなにかだと思っていた。
ヘッダーも御子たちもいない本拠地で、怪人製造カプセルはサロメと共に意気軒高の声を上げる。サタンエゴスが御子の父であるならば、カプセルはいわば母とも言える存在だ。バトルフィーバーへの恨みは確かにあってしかるべき。
バトルフィーバー隊を吸い込んで丸呑みにし、どろどろに溶かしてしまおうとするカプセル。その目的はずばり、「バトルフィーバー怪人」を作り上げることである。文武に優れた隊員たちの遺伝子を混ぜ合わせて、最強の用心棒を作り上げようというのがサタンエゴスのお考えなのだ。今まで散々愛し子たちを殺されておきながら、仇であるバトルフィーバー隊の実力を認め、駆逐するのではなく利用してやろうとするところがしたたかである。そんな合理的な判断ができる首領を戴き、部下達もその判断に徹底的に従うからこそ、エゴスの組織は世界に手広く成長できたのかもしれぬ。
サロメ、最後の変装
アジトへバトルフィーバーをおびき寄せる役目は、ひとり生き残った女幹部サロメに任される。私室の大きな籐椅子で髪にブラシをかけ、出動の支度をするサロメの姿。命令よりもわが身と命を優先する決意の暗示なのか……というのは深読みしすぎのミスディレクションで、来たる作戦のため外見を整えているに過ぎない。基地での派手な衣装やシックな黒の上下のみならず、時にはスーパーの客、時には試食を配るお姉さんなど、様々な格好に身をやつしては作戦に従事してきたサロメ。今回もまた自ら姿を変え、企みを果たさんとする。
頻発する地震や、無人車の逆走する坂道。小さな異変を次々に起こしてバトルフィーバーの興味を引いたサロメは、すぐにバレる変装と偽名でジャパンに取引を持ちかける。エゴス本拠地への地図を一億円で買わないか、というのがその内容だ。確からしさの演出のため、本拠地内部の写真まで用意する手の込みよう。
取引相手がサロメであることは当然すぐに看破され、写真も真正のものであると鑑定される。当然、わざとである。さらに作戦の成功率を上げるため、サロメはもうひと手間を惜しまない。ジャパンと別れた彼女はその足で南米へ向かう切符とパスポートを手配する。これによりジャパンたちは、サロメが組織を裏切り高飛びしようとしているのではないかと思い始める。
サロメの真意を確かめるべく、取引を了承するジャパン。取引場所へ向かおうとするサロメの車は、カットマンたちの激しい銃撃を受ける。尾行していたケニアとフランスが慌てて飛び込み、彼女を救出。この一芝居により、バトルフィーバーはサロメの足ぬけを完全に信じ込んでしまった。
エゴス本拠地に置かれた地震発生装置はサタンエゴスのパワーで動いており、いまに関東一円が海に沈むことになるのだという。南米まで安全に送り届けることを条件に、サロメは奥歯に隠し持っていたマイクロフィルムを渡す。この物理データを体内に身につけている感じがスパイものっぽくてわくわくしちゃうよなあ。ともあれ、その地図を頼りに一同はエゴスの本拠地へ強襲をかける。すべてはサロメとサタンエゴスの筋書き通りだ。
サタンエゴス様、飛ぶ
エゴスの本拠地である洞穴にたどり着いたバトルフィーバー一行。待ち構えた大勢のカットマンたちから浴びせられる銃撃を潜り抜け、行き止まりの岩壁を叩き壊して、とうとうサタンエゴスの御前へとたどり着く。それはつまり、怪人製造カプセルくんの口の真ん前と言う意味でもある。
外皮で全ての熱エネルギーを吸収してしまうカプセルにはペンタフォースも効かない。あっという間にカプセルに取りこまれた5人は、泡立つ泥沼のような空間で、今にもどろどろに溶かし尽くされてしまいそうだ。だが、ピンチの中にこそチャンスはある。絶体絶命かと思われたその時、彼らはカプセルの内部にある心臓部を発見。いくら外皮が強くとも、心臓を内側から攻撃されてはひとたまりもない。再度のペンタフォースにより、バトルフィーバーは無事脱出に成功する。
そしてそれは、怪人製造カプセルの最期も意味する。もはや新たな御子を生み出すことも叶わず、サタンエゴス様は御自らバトルフィーバー隊に手を下す覚悟をされる。座した体制のまま尻からロケットのように火を噴いて、まっすぐ真上に飛び出していく御姿がなんともシュール……。が、笑っている場合ではない。巨大化したサタンエゴス様はその超力で天変地異を巻き起こし、バトルフィーバーを翻弄する。たまらずジャパンはバトルシャークの出動を要請。バトルフィーバーロボに乗り込み、一世一代の巨大戦である。
普段使いの「クロスフィーバー」「電光剣唐竹割」に、ヘッダーロボ戦で見せた最大出力「バトルフィーバーパワー」。そして、最後の強敵であるサタンエゴスに対して繰り出されたのは、振りかぶった電光剣を真っすぐに投げつける「電光剣ロケッター」! 刃はサタンエゴスの胸元に深々と突き刺さり、緑色の体液を滴らせる。そのままこてんと前のめりに倒れたサタンエゴスは、彼のパワーで動いていた地震発生装置や構成員たちを道連れにし、大爆発を以て終焉を迎えるのであった。戦いが終わり、美しい夕日を眺めるバトルフィーバー隊。世界には平和が訪れたのだ。
サタンエゴスと御子
巨大化のすえ爆散したサタンエゴスだが、彼が今までの巨大ロボたちと異なっているのは、彼が死に際して体液を零した点である。御子の弟妹たる巨大ロボたちは、電光剣の一撃を受けて機械らしくすみやかに爆発していた。が、サタンエゴスが爆発する直前には、身体に電光剣が貫通し、緑色の体液があふれ出すさまがしっかりと映し出されている。最後まで即身仏のようなポーズのまま顔を見せることもなく、まして自在に動くことも無かったサタンエゴス。もしかして彼自身もエゴスの超技術で作られたコンピュータなのでは、などとうがった考えをしていたが、どうやらそういうわけではなさそうだ。緑色の血からして、どちらかというと彼自身も怪人に近い存在なのだろうか。だとすれば、人間のくびきから脱却し怪人へと華々しく進化した者たちのことを我が子と呼ぶのも頷ける。
バトルフィーバーJ 51話見た ヘッダー、復活からの再退場。物々しい儀式を経て蘇った「ヘッダー怪人」。指揮官そのものを生き返らせるのではなく、御子という形で産まれ直させることでしか新しい命を与えられないところにエゴス万能説の綻びがある。とはいえ指揮官の恨みは引き継いでいたし、→
— 望戸 (@seamoon15) June 3, 2024
御子が倒されたあとのサロメやカットマンの泣きぶりもひとしおではなく、エゴス的には人間だろうが怪人だろうが命のあり方としてそう違いはないのかもしれない。/基地襲撃にも冷静な将軍と、九ちゃんの冷凍噴射には恐れ入った。まさかの最終防衛ライン!
— 望戸 (@seamoon15) June 3, 2024
前々話で鉄山将軍に敗れたヘッダーは、前話で無事怪人と化し、サタンエゴスの御子となった。だが、その祝福を受けられなかった者もいる。
最後の最後まで身体を張ってサタンエゴスに仕えたサロメ。だが、彼女の末路はあっけない物であった。サタンエゴスが飛び出した衝撃でアジトは崩れ、柱や天井がばらばらと降ってくる。逃げ遅れたサロメは瓦礫の下敷きになってしまうのだ。
「サタンエゴス様ーッ、私もお連れくださいーッ!」
悲痛な叫びに耳を貸す者はいない。サタンエゴスははるか地上に行ってしまったし、バトルフィーバー達も自分たちが脱出することで精いっぱいだ。第一、彼らはさっきサロメを助けたことによって痛い目を見たばかりである。生き埋めになったサロメは、サタンエゴスの死に伴う大爆発により、おそらくそのまま命を失ったのだろう。怪人製造カプセルはすでになく、復活の儀式を執り行ってくれるカットマンたちもいない。ヘッダーのように御子として再生することもできず、彼女は人間として死んでいった。それが幸せなことなのか、不幸せなことなのか……。
と言うわけで、大変楽しく完走しました。
『ゴーカイジャー』かなにかで初めて姿を見た時には、あまりにも統一感のないスタイルに驚いたものである。それが今ではこの上なくチームワークのある集団に見えるのから不思議なものだ。二枚目と三枚目のバランスがいい具合に整ったプロフェッショナル集団。そして汀マリアのお人形みたいなかわいらしさったらない!
ヘッダーや怪人たちもいいキャラをしていたし、サロメは回を追うごとにどんどん格好良くなっていった。アクションも音楽も素晴らしかったです。