小泉進次郎氏の農政思考を、農業現場から考える
小泉進次郎 自民党農林部会長のお考えが分かりやすくまとまっている記事です。特に新規就農・新規参入に対するお話が多くあります。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/09/shinjiro-koizumi-youngvoice-2016_n_12420990.html
文中にある「持続可能な農業」というキーワードは大変重要なポイントだと思っています。まずもって「農業従事者が」持続出来るような農業を考え、実現することが必要です。5年以内の離農率は3割で、理由はとにかく生活が出来ないから、ということをよく聞きますが、概ねその通りかなと感じます(離農率の実態は正直もっと高い気がしますが)。
農業は「売上 - コスト = 収益」という当たり前の構造を持つ仕事です。もう少し因数分解すると「(収量 × 単価) - (資材費+減価償却費) = 収益」となりますので、農業従事者にとって生活が出来る=収益が増える=持続可能な農業にするためには、
1. 収量を上げる
2. 単価を上げる
3. 資材費を下げる
4. 減価償却費を下げる
のいずれか(あるいは全部)を実現すれば良いということになります。
カインズやコメリが実現しているのは3(一部4)です。逆にガラスハウスなどは4と真逆です、でも1を飛躍的に実現するのよ、ということになります。有機栽培や無農薬栽培は2に繋がりうるけど1と逆行する、みたいなところがあります。
具体的に数字でご説明しますと、神奈川県経済指標という10aあたり「神奈川県のわりと優秀なプロ農家」が目指すべき数字というものがあります。例えば、トマト抑制栽培(いわゆる、加温して冬を越していく栽培方法)では、
(7,000kg × ¥357.6/kg) - (¥1,500,363 + ¥713,786) = ¥289,050
です。この収益を生み出すのにかかる労働時間が658.5時間なので、時給は「¥439」です。
どうでしょうか。この時給で「農業をやりたいですか?」と聞かれてもほぼ全てのひとはNOなのではないかなと思います。政府は「農業所得を倍にする」目標を掲げられていますが、それでも¥878です。農業の議論で欠落しがちなパラメーターが「時給」だと感じています。
時給から遡って追っていくと、やはりインパクトの大きい数字にもちゃんと着手すべきなのではないかなと思います。つまり、コストの見直しのみならず
・収量を大きく改善出来る栽培技術の確立
・単価を高く設定出来る付加価値の創造
を実現出来る農業体系をつくることが、持続可能な農業を実現するためには不可欠だと考えています。
マーケティング部分(単価・販売)の改善のみでもやはり限界があります。得てして既存の栽培体系では付加価値を上げようとすると(例えば無農薬・無肥料・有機栽培等)収量が下がる体系になっているからです。収量と付加価値とを両立出来るような(パッと聞くと、そんなうまい話はないだろうという)栽培技術の確立が日本の農業の根幹に必要であると、新規就農者の立場からは強く感じています。