オーガニックについて、農業現場から考える

先日、とある会話の流れで「日本のオーガニック農産物は安全・安心だ」という話題になりました。個人的に「オーガニック」という言葉あるいはマーケットは、大変に複雑なトピックだと感じています。

全てを書き始めると膨大になるので、まずは安全・安心を担保する為の「仕組み」について考えてみたいと思います。

日本と外国では、有機(及び農業)に対する考えが全然違います。

日本では、有機農産物とはざっくりと「農薬や化学肥料を使わずに丁寧に育てられた農産物」というイメージがあるかと思います。厳密には、日本には有機JAS認定という制度があります。この認定要件の中に、農薬や化学肥料に関する使用規制があり、主に「食品安全」の観点からルール決めをしています。

http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html#kikaku

一方、国際的にはGAPという考え方があります。Good Agriculture Practicesの略で、主に「環境」の観点から持続可能な農業を遂行する為のルールが決まっています。

http://www.fao.org/prods/gap/

そして欧州が中心となってグローバルGAP認定という基準を作成し、農産物取り扱いのガイドラインとしています。

農業は自然環境に対する影響が(プラスにもマイナスにも)大きくなりうる為、欧米では地域の人々が農業に対してコミットする傾向が日本よりも強いように思います。

CSA(Community Supported Agriculture)という、地産地消の考え方をもう少し踏み込んで自分が住む自然・生態系をより良いものにする為に、積極的に地域の農業に関わる(主な関わり方は、地域の野菜を買うなど)考え方があります。

ここで問題となるのは、日本の認証と同等の基準を持つ(「有機同等性」と言われます)国以外には、日本の有機農産物は輸出が出来ません。

そしてさらに問題なのは、日本の認証は海外諸国と比べて非常に基準があいまいである、または緩い為、欧米・アジアへの輸出が難しいところです。

つまり、グローバルで農業マーケットを考えるとき、日本の有機農産物は非常にガラパゴスだということになります。

何故その差異が生まれるかと言えば、認証の前提となる観点が食品安全を起点にしているのか、環境持続性を起点にしているのかで違うからです。

環境持続性を観点とすると、土壌や水源に対する農薬や肥料の影響(つまり「アウトプット」)を具体的に考えなければならず、それに対して定量的な閾値を設けて生産プロセスに規制を設ける、という順番です。

逆に日本の場合は、食品安全を軸としていますが、「安全」の担保が徐々に「安心」の担保へとシフトしていき(実はここが一番悩ましいところ)、論理的・化学的観点というよりは有無を言わせず、「手段」として農薬・化学肥料を使わない事を前提としています。食品内や土壌内の残留肥料などの定量化はなされておらず、「化学的なものを使わないモノは安心である」という心理的な部分が根底にある設計になっているように思います。

そこで、農薬・化学肥料・有機肥料の役割やリスクについて考える必要が出てくるのですが、それはまた次回考えてみたいと思います。

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