スポーツ心理学 - Emotional Regulation
Key words
・ Emotion - 情動
・ Emotional Regulation - 情動制御
・ James-Lange theory
・ Cannon-Bard theory
・ ゾーン
Emotion とは?
Emotion, Feeling, Mood という3つの単語。
違う訳し方をすることもあるかもしれませんが、この note 内では
・Emotion = 情動(急激に生起し、短時間で終わる比較的強力な感情)
・Feeling = 感情(嬉しい、悲しい、怖いなど自分の中の気持ち)
・Mood = 気分(中長期的に緩やかに継続する感情)
と区別します。(平凡社, 1981)
情動の種類
感情心理学の開拓者 Paul Ekman は、「幸福」「悲しみ」「恐怖」「怒り」「嫌悪」「驚き」を6つの基本情動と提唱しました。
(近年では、この6つに「軽蔑」が加わることもあるようです)
それぞれの情動は、身体的・行動的な反応を引き起こします。
例えば「恐怖」という情動は、冷や汗が出るという身体的反応、逃避という行動的反応を伴います。
'ジェームズ=ランゲ説' と 'キャノン=バード説'
この2つはどちらも、情動の起こり方と性質についての理論です。
まず、ジェームズ=ランゲ説について。
この説は情動が起こるまでの道筋を
【刺激】→【身体反応】→【情動】 と考えます。
「楽しい」から「笑う」ではなく、「笑う」から「楽しくなる」という考え方です。
スポーツの現場で使われる筋弛緩法や呼吸法は、
【身体をリラックスさせる】→【心もリラックスした状態になる】
【呼吸を整える】→【心が落ち着く】
というジェームズ=ランゲ説の考え方に基づいて行われています。
一方でキャノン=バード説は、情動と身体反応は同時に独立して起こると考えます。
→【大脳が活性化】→【情動】
【刺激】→【脳の視床が活性化】
→【視床下部が活性化】→【身体反応】
また、末梢神経の伝達速度が比較的遅いため、
【情動】→【身体反応】の順ともされます。
ジェームズ=ランゲ説とは反対の「楽しい」から「笑う」という考え方です。
スポーツと情動
この動画は、テニス選手の「怒り」が情動として表れている場面が切り取られたものです。
アスリートは、試合中も試合の前後もさまざまな情動を経験し、それらの情動はパフォーマンスにも影響します。
スポーツの中で「怒り」という情動はネガティブに捉えられがちですが、100%悪いものでもなく「怒り」によって普段以上のパワーが出ることもあります。
大切なのは、次に紹介する 'Emotional Regulation' (情動制御) です。
Emotional Regulation(情動制御)
情動制御とは、内的な情動の種類や強度、タイミングと継続時間、どのように表現するかを調整・変化する過程のことを言います。
情動のコントロールは意思決定や集中力に影響し、特にプレッシャーのかかる状況下のパフォーマンスでカギになります。
チームスポーツと個人スポーツの中での情動制御
チームスポーツでは、個人の情動がチーム内の他の選手やチーム全体に影響を与えます。
そこで、一人一人の情動というよりも、チームで共有する情動をいかにコントロールするかというリーダーシップが、チームスポーツでの情動制御で重要です。
一方個人スポーツでは、アスリート自身がパフォーマンス中に、どれだけ自分自身の情動を自分自身でコントロールできるかが重要です。
パフォーマンス中、孤独や自己疑念のような感情をコントロールしながら、突発的な怒りなども自分自身で対処することが求められます。
情動制御できるようになりたい…
スポーツの場面で情動制御をうまくできるようになるために、まずは自分自身の 'Emotional Trigger' を認識することが必要です。
自分の情動が動かされる状況や出来事は何か
その状況・出来事でどんな感情になるか。
自分のパフォーマンスにどんな影響が出るか。
どうすればその情動をコントロールできるか。
このような自己分析を行い対処法を予め準備しておくことで、いざ情動が動かされてもパフォーマンスに集中できるのではないでしょうか。
授業では、この自己分析のほかに「セルフトーク」「イメージトレーニング」「マインドフルネス」「リラクゼーション」が、スポーツの中で情動制御を助ける方法として紹介されました。
あとこの動画も紹介されたので貼っておきます。
The IZOF Model (Hanin, 2000)
「IZOF」は 'Individual Zones of Optimal Functioning' の頭文字をとったもので、アスリートは 'ゾーン' と呼ばれる、それぞれの最高のパフォーマンスを引き出す独自の精神状態があるという理論です。
リラックスしすぎても緊張しすぎても最高のパフォーマンスは生まれない。
緊張感があった方がパフォーマンスが上がる選手もいれば、緊張感があるとパフォーマンスが下がる選手もいる。
このような、パフォーマンスと精神状態の関係について説明しています。
アスリートは、自分がどんな精神状態にいると最高のパフォーマンスを発揮できるのか知ることが大切です。
そして、筋弛緩法や呼吸法、イメージトレーニングなどを行うことで、ゾーンに近づいたり、ゾーン状態を保ったりすることが可能になるでしょうとのことでした。
以上、心理学の授業初まとめでした。
何か学びがあれば嬉しいです!