マイコプラズマについて
お久しぶりです!
最近流行りのマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)についての記事です。マイコプラズマは別名「歩く肺炎」とか「オリンピック肺炎」と言われていますが、今年もまさしくオリンピック年です。
記事にした理由は、単純に僕がマイコプラズマ好きだからです。特に理由があるわけではないのですが、微生物学を履修した時からなんとなく好きなのです。
マイコは細菌に分類されるのですが、細胞壁はありません。(故に細胞壁合成阻害で抗菌作用を発揮するβラクタム系は無効なわけです)また細胞壁がないのでG染陰性です。さらにゲノム数最小という何とも変わった菌です。
細胞壁がないことに関係があるのか知りませんが、種の由来は「柔らかい皮」です。壁がないから柔らかいのでしょうか?
さて、マイコを疑うきっかけは「長引く高熱と乾性咳嗽(ときに湿性)」です。好発年齢は5歳~14歳が好発で、成人にも好発します。逆に5歳以下であれば稀なので、シックコンタクトがなければ僕はあまり疑いません。
非典型肺炎の例に漏れず、聴診所見に乏しく白血球数はあまり上昇しません。ここらへんはどの教科書にも書いてあることなので正直興味はありません。
面白いのは、滑走する為にtip構造を有していることです。
tipは気管上皮にくっついて、破壊してしまいます。故にマイコプラズマでは免疫応答で治療抵抗性になるわけです。細胞破壊の結果、LDHが上がるのは納得です。治療抵抗性マイコプラズマでステロイドを使用する理由はこれです。
治療はマクロライド系ですが、耐性株も多いです。耐性率は調べてみましたがよく分かりませんでした。耐性機序は塩基置換によるマクロライド親和性の低下だそうで、肺炎球菌のPBPと似ているなと思いました。(勝手な解釈なのであまり参考にしないでください)
普通耐性云々を考えるときは、培養結果のMICから判断しますが、このようにマイペースな細菌なので成長も超遅いです。古典的にはPPLO培地で1週間程度要します。なので臨床的経験から耐性であれば抗菌薬変更も考えますが、勝手によくなることも多いでしょう。
検査は咽頭ぬぐい液迅速抗原やFilmArrayが使用できます。ただ病態が下気道感染なので、こういった上気道系検査では特異度は高いですが感度に問題があります。確定診断をつけるのであれば、やはりLAMP法かペア血清でしょうか?詳しい人がいたら教えて下さい。
以上、マイコプラズマについて語ってみました。
色々可笑しな特徴のある細菌で、可愛く思えてきませんか?
(勿論罹患者には失礼ですが・・・)
疑わないと診断に至らない病気ですので、流行地域における呼吸器症状では必ず鑑別したい所です。