冬の日
無人駅で一対の雪だるまを見た。ベンチの上にちょこんと乗った彼等の存在は、私の心を捉えて離さなかった。
首に提げていたカメラを構え、シャッターを2、3度切る。本音を言えば、このまま持って行ってしまいたかったのだが、それは叶わないと分かっていた。
触れれば、たちまちその形を失ってしまうだろう。今の私と彼の関係のように。
1時間に1本の電車が来たのは、眼前の風景を撮り終えた頃だった。乗り込む直前、バイバイと小さく手を振った。
がらんとした車内で私は撮影した写真を見返していた。
きっといつものようにあの人は温かく迎えてくれるだろう。現像している彼の横顔を思い浮かべるだけで頬が緩んでしまいそうだ。
ふと車窓の外に目を遣ると、雪がまたチラチラと降り出していた。
冬の足音が聞こえる。
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