エンジンオイルの添加剤が酸化することでアッシュを生成する経路に関する研究
2020年10月23日 自動車技術会秋期学術講演会において発表された研究結果をまとめてみました。
【PM=粒子状物質】は、中国から風に乗ってやってくるPM2.5だけではありません。日本の中でも、日常的に発生しています。
その代表的なものは、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれています。
今でこそ、【PM・Nox法】があるので、排出量も極僅かになっています。
これには、自動車メーカー各社が高度な排気ガス浄化装置を開発したことでPMとNoxを同時に低減することが出来ています。
PMの排出を低減するために、DPF(微粒子捕集フィルター)の役割が大きいです。
DPFは10~50μmほどの目の細かいフィルターを利用して排気中のPMを捕集することで、大気中にPMの拡散を抑制しています。
DPFにPMが堆積すると、エンジンの排圧が上昇してしまうので、エンジン性能に悪影響を与えることになります。
これを解消するために、一定量PMが堆積すると、排気ガス温度を強制的に約600℃まで上昇させて、PMを燃焼、除去します。
PMの中には、【アッシュ】という金属成分を含む物質が微量、存在しています。
【アッシュ】は無機成分なので沸点が高く、排気温度を上昇させることで再生する過程においても、燃焼、除去されることがなく、DPFに堆積し続けます。
これによって、長距離走行の後にDPFの性能を出来るだけ維持させるために、【アッシュ】体積のメカニズムを解析することが求められていました。
これには、DPFに堆積した【アッシュ】の直接観察などから検討が進められていて、成分による変化する物性を考慮する必要があることから、DPF内に堆積した【アッシュ】の成分についても詳細な分析が行われてきました。
ですが、DPFよりも上流で生成されるメカニズムの研究はほとんどされてきませんでした。
特に【アッシュ】の成分については、エンジンオイルの燃焼によって生成されていますが、DPFの前段で、どのように生成されているのか、全く解明されていないので、【アッシュ】成分の生成過程を明らかにすることが求められています。
そこで、この研究は、オイルの燃焼からDPFに至る過程で【アッシュ】成分の生成メカニズムを明らかにすることを最終的な目的として、反応温度が【アッシュに与える影響を検討し、生成した【アッシュ】成分の分析を行って、【アッシュ生成反応】のメカニズムを検討しています。
【実験方法】
この実験は温度によって【アッシュ】の成分が及ぼす影響を検討するために、エンジンオイルに含まれる添加剤を、温度をコントロールしながら反応を見ることが出来る装置で酸化させて、生成される【アッシュ成分】を分析しています。
【アッシュ】はエンジンオイルに含まれる添加剤の燃焼によって生成されることから、代表的な添加剤Ca系のものを使用しています。
Ca系添加剤は、清浄効果や分散効果を得るために使用されています。
清浄剤は、エンジンなどの高温運転で沈積物やそれの元になる出発物質などを取り除き、エンジン内部を清浄します。
分散剤は、低温運転条件で生成するスラッジやカーボンを油中に分散させる働きをします。
エンジンオイルに含まれるCa系添加剤の中で代表的なCaサリシレートからはCaCO₃、CaスルホネートからはCaCO₃とCaSが初期過程で生成することが示唆されました。
温度を変化させて反応して生成される【アッシュ】成分を検討して得られた結果から、【アッシュ】の生成反応経路を検討しました。
その結果、【アッシュ】の主成分は、硫黄成分の有無にかかわらず温度が上昇するにしたがって、主成分が変化することが分かったのです。
硫黄分を含んだ場合でも、高温域ではDPF内に堆積した主たる【アッシュ】成分にならないことが示されました。
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