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【開催レポート】産官学がもっとつながる。徳島大学SDGs×kundara innovation公開シンポジウム

去る2024年1月22日(月)、徳島大学常三島キャンパスで「SDGs×kundara innovation 公開シンポジウム」が行われました。
主催は徳島大学の「産官学連携」を担うチーム「研究支援・産官学連携センター」のSDGs推進部門。

産官学連携に光を見る徳島県内外のプレイヤーが集まり、新たな期待を胸に抱く時間となりました。サステナビリティ・ダイアログ(SDI)が基調講演及びファシリテートを担いました、本会の様子をお届けします。


産官学連携と”kundara”

私たちが暮らす現代において、新しい社会や経済への変革が世界的に進む中、新たなイノベーションの創出に向けたイノベーション・エコシステム(※)の構築が非常に重要だとして、さらなる産官学連携が期待されています。(文部科学省

※「イノベーション・エコシステム」とは、行政、大学、研究機関、企業、金融機関などの様々なプレーヤーが相互に関与し、絶え間なくイノベーションが創出される、生態系システムのような環境・状態のこと。

徳島大学も、産官学連携に取り組む大学のひとつ。医学部・歯学部・薬学部・理工学部などの学部/大学院を持つ徳島大学では、今回ご紹介するシンポジウムを主催した「研究支援・産官学連携センター」が中心となり、専門分野で活動する研究者と企業、研究者と行政をつなぐ働きによって、社会に新たな価値を生み出そうとしています。

研究支援・産官学連携センターでは、日々様々な支援が展開されており、そのひとつが、今回のシンポジウムのタイトルでもある「kundara innovation」です。「kundara innovation」は、産官学連携を促進するつどいの場。研究者同士、あるいは研究者と企業等による、イノベーションのための対話の場です。呼びかけ人である特任助教の有廣先生は「kundara」(くんだら)に込めた思いをこんな風に話します。

「kundara」とは、「時間を忘れて楽しいおしゃべりが続いている」状態を意味する阿波弁です。友達との会話から、話が膨らんでアイデアが出るように、研究者同士の交流や情報交換から、新たな研究の種やヒントが生まれることを目指しています。

徳島大学が「kundara」という愛称をもって大切にしているのが「おしゃべり」の時間。私たちサステナビリティ・ダイアログも、話す・聴くという対話の時間を大切にしているご縁から協働し、登壇者や参加者同士がおしゃべりする時間をふんだんに盛り込んだシンポジウムを開催しました。

当日の様子をお届けします。

基調講演:当社代表 牧原が登壇

基調講演は、サステナビリティ・ダイアログの牧原が登壇しました。

当社(SDI)代表 牧原ゆりえ 基調講演「人の中にあるニーズから、satisfierへの展開について―「ていねいな発展」を目指して、持続可能な社会貢献を考える―」

牧原が在籍したブレーキンゲ工科大学(スウェーデン)の修士プログラム「MSLS」(The Master's in Strategic Leadership towards Sustainability)創立には、このシンポジウムのテーマと同様に、持続可能な開発/発展のためのイノベーションへの希求や、多様な産学の関係者の思いが込められています。

スウェーデンの修士プログラム・MSLSの思いを紹介。

参加者の皆さまのひらめきに役立つことを願い、基調講演では、MSLSで大切にされている対話のフレームワークや、MSLSにおける産官学連携の実践事例についてお話ししました。

事例発表:産・学・コーディネーターの3者が登壇

次に、徳島大学の研究者と地元企業が連携した2事例について、産・学・コーディネーターの三者が事例発表を行ってくださいました。

事例1
建設機械・資材レンタルに関する顧客提案支援ソフトの開発
― 徳島の企業のニーズから、その業界のニーズを見つけ、イノベーションを創出する ―

喜多 真一 氏(喜多機械産業株式会社 代表取締役社長)
芳賀 昭弘 氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部保健学域医用画像物理学分野 教授)
矢野 慎一 氏(株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)技術移転部 アソシエイト)

事例2
農産廃棄物からサプリメント素材を調製する方法の開発
―企業の新領域へのチャレンジから、新たな関係構築と開発シーズを見つけ、イノベーションを目指す ―

山本 吉二 氏(株式会社ジェイテクト研究開発本部サステナブルシステム研究部 部長)
田中 保 氏(徳島大学大学院社会産業理工学研究部生物資源産業学域食料科学分野 教授)
垣田 満 氏(徳島大学研究支援・産官学連携センター 副センター長・研究推進部門/SDGs推進部門 部門長 准教授)

お話のなかでは、企業の責任者が産学連携に感じる魅力、研究者ならではの産学連携に感じる意義と葛藤、異なる他者をつなぐコーディネーターのパッション・・など、実践者ならではの思いを吐露していただきました。

お話を受けたのちには、「聴き手が一方的に情報を受けとり、そのまま帰る」というスタイルではなく、①登壇者のお話を聞いたすぐあとに、個人の学びや疑問をハーベスト(意図を持って記録)してもらい、②偶発的な対話の相手として「お隣さん」との対話をする。という「MokuMokuタイム」を実施しました。

MokuMokuタイムのおしゃべりの様子。たのしそうにお話しする方々のお顔が見られました。

参加者の方に、研究者の方が多かったためか、率直に疑問や学びを記録する量、そしてそれを率直に共有する姿が見られ、当初の時間をオーバーして、この時間を大切に過ごしました。

会場後方のグラフィック記録には、たくさんの質問と感想が寄せられました。

パネルディスカッション:シナリオなしの対話型

会場からのたくさんの感想や質問を受け、次のパネルディスカッションは、シナリオなしのライブ形式で行いました。
会場からは予想より多くの質問が寄せられたため、予定していた問いを変更し、当社の牧原から4つの質問を投げかけました。

①異なる分野の人と共創するときの醍醐味は何ですか。どんなことにワクワクやチャレンジを感じましたか。
②「異業種交流会はフワフワしていていいのか」という点について、垣田先生からコメントがありました。この点についてご経験からお話くださる方はお願いします。
③「ゴールの設定が大事だ」というお話が矢野さんからありましたが、ゴールが閃く瞬間とは、どんな感じがするのでしょうか。体験がある方がいらしたら、教えてください。
④今日のお話はニーズドリブン型のイノベーションについてお聞きすることが多かったと思います。大学の基礎研究を出発点にしたシーズドリブンの研究の可能性や、チャレンジについてお話ください。

登壇者の方々からは、共創の現場を想起させるような具体的で率直な意見が聞かれました。参加者の皆さんにとっては、ご自身の産学共創の可能性について考え始められた時間となったはずです。

さらに、登壇者の皆様からは、産学連携における「シーズ」等のキーワードについて「意味の捉え直しを対話とともにやろう」という投げかけもあり、今後の大学での対話のあり方についても議論されました。

ワークショップ:スキルとアイデンティティを表明しながら

最後は、登壇者も参加者も混ざって対話するワークショップの時間を過ごしました。

プログラムの最後には、登壇者も参加者も同じ地平で対話するワークショップを実施。当社制作のカードを用いて、参加者ご自身が自分の「スキル」や「アイデンティティ」を表明しながら、グループを組み進行しました。

産学共創で発揮される多様な力を可視化したカード。「これは得意」「これは苦手」と話せるからこそ、力の貸し借りの可能性が見えてきます。
産学共創の多様なプレイヤーの存在を可視化したカード

参加者の皆さんは、研究者、URA、TLO、企業、市民など、多様な特性やアイデンティティがあります。
産学共創の基本は相互依存ではなく、それぞれの役割を果たす個のシナジーであることから、まずは自分の働きの意味や、その働きについてのやりがいについて、同じ働きをしている人同士で話をしていただき、それを全体に共有していただきました。
それぞれのグループから聞かれることに特徴も見えていて、多様なステークホルダーがいることが感じられます。

その後は、同じグループに留まる人も、ご自身の意思で他の専門の方との出会いに足を運ぶ人もいらっしゃいました。

特に、当初「基礎研究」の実践者同士で集まった先生方が、「自分たちだけで話していても、イノベーションは起きない。どこかへ出かけよう」と話し、実際に席を移動されたシーンは印象的でした。今後このような動きが徳島大学で起きていくことの前兆のように感じます。

主催者・参加者の声

主催者の徳島大学研究支援・産官学連携センター 井内先生と有廣先生とは、センターの思いについて何度も対話をし、深く相互に理解した上で基調講演や全体のメッセージを作る「共創」のプロセスを楽しんでもらえました。

また、カードの制作などを通じて、産学連携への解像度の高いワークショップを作れたことについても、有廣先生から好評のお声をいただいています。

産学連携にはたくさんの役者がおり、同じ「コーディネーター」という領域でもTLO/URAでは普段のはたらきや個々の強みが異なります。研究者も同様に「基礎研究」の研究者と「応用研究」の研究者では産学連携へのアプローチも異なります。こうした多様性をいかしあうコラボレーションの仕掛けを提供できたことに、価値を感じていただきました。

参加者の皆様からも、
・産学連携の立役者である企業や研究者、TLOの努力への感銘の言葉
・ファシリテーターやグラフィッカーへのお褒めの言葉
・対話によって、自身の理解が深まったとのお声
・今後の対話へのさらなる展望
をお聞かせいただきました。

まとめ

登壇者も参加者もアクティブに動いた、本シンポジウムの一部をご紹介させていただきました。
一緒に話していくと、頭や心が動く。参加者の声に合わせて、登壇者の思いや考えも動く。興味関心のあるところへ、みんなが自ら動いて繋がっていく。

予定調和ではいかない、産官学連携の道のりを表しているように感じます。これからつくっていきたい景色を、多様な関係者と一緒に見ることが出来た1日となりました。

開催概要

【日 時】令和6年1月22日(月)13:00~16:30
【場 所】常三島キャンパス フューチャーセンターA.BA 
【参加費】無料
【対象者】徳島大学学生、教職員、地方自治体及び関係団体、企業等

【プログラム】
13:00 <開会挨拶>河村 保彦氏(徳島大学長)

13:10 <基調講演>「人の中にあるニーズから、satisfierへの展開について―「ていねいな発展」を目指して、持続可能な社会貢献を考える―」 
牧原 ゆりえ(一般社団法人サステナビリティ・ダイアログ 代表理事)

13:30 <事例発表1>
「建設機械・資材レンタルに関する顧客提案支援ソフトの開発 ― 徳島の企業のニーズから、その業界のニーズを見つけ、イノベーションを創出する ―」
喜多 真一氏(喜多機械産業株式会社 代表取締役社長)
芳賀 昭弘氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部保健学域医用画像物理学分野 教授)
矢野 慎一氏(株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)技術移転部 アソシエイト)

14:00 <事例発表2>
「農産廃棄物からサプリメント素材を調製する方法の開発―企業の新領域へのチャレンジから、新たな関係構築と開発シーズを見つけ、イノベーションを目指す ―」
山本 吉二氏(株式会社ジェイテクト研究開発本部サステナブルシステム研究部 部長)
田中 保氏(徳島大学大学院社会産業理工学研究部生物資源産業学域食料科学分野 教授)
垣田 満氏(徳島大学研究支援・産官学連携センター 副センター長・研究推進部門/SDGs推進部門 部門長 准教授)

14:45 <パネルディスカッション>
事例発表いただいた6名によるパネルディスカッション
ファシリテーター
牧原 ゆりえ(一般社団法人サステナビリティ・ダイアログ 代表理事)
宮崎 汐里 (一般社団法人サステナビリティ・ダイアログ SDダイアログホスト)
グラフィッカー
玉有 朋子氏(徳島大学 特任講師)

15:25 <ワークショップ>
全員参加型のワークショップ

16:25 <閉会挨拶>
吉田 和文氏(徳島大学理事・副学長(地域・産官学連携担当)/SDGs推進委員会委員長)


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