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サステナブル経営におけるビジネス指標と経営計画の立て方

今回は、サステナビリティの理念をどうやって実務に落とすのかを理解するため、ビジネス指標について書いてみたいと思います。
注: この記事は、私自身がサステナブル企業の元で働けるようになることが目的で整理したので、実務者向けの専門的な内容になっています。初心者向けの記事はまたいつか作ります。

この記事の内容は、サステナブル経営をしている企業数社のスタッフへの直接の聞き取りとChatGPTとの禅問答から導き出して、私なりに言語化したものです。なにか書籍などで確かめたわけではありませんが、おそらくこれが基礎になるのだろうと今感じています。もしどなたかご存知のことがあれば、ぜひコメントしていただければ嬉しいです!

調べて書く過程で、重視する指標が、現代日本において多くの日本企業で常識とされているものとは全く別物のようだ、とも気付きました。私も、これまでの経験を一旦リセットし、ビジネスの基礎の基礎=経営学の教科書に立ち返ってから知識をアップデートしていますが、読者の皆さんもそのようにしながら読んでいただくといいかなと思います。

この記事は、下記の記事も一緒に読んでいただくと、より理解が深まると思いますので、よろしければぜひ!

サステナブル経営において企業が最重視すべき指標(KGI)

考察の結果、行きついたのは下記2つです。

定量指標

全ステイクホルダーのNPS
(ネット・プロモーター・スコア=推奨度合いを図る指標)

定性指標

企業哲学の深み
具体的には、経営者やスタッフの個人的な経験、哲学や宗教観、歴史、社会問題、人間の本質などを考慮して、極限まで深め、それを、誰もが腹落ちできて共感できる分かりやすい言葉でストーリ仕立てで言語化したもの。
※測定方法は、こちらの記事をご覧ください。

2指標同士の関係性

NPSは現在価値、哲学の深みは将来的なポテンシャル、という見方をされるように見えます。
NPSが高く哲学が深ければ、短期的な急激な成長には繋がらなくても自然に売上最大化とコスト最小化に繋がるという考え方がベースにあります。そのため、売上とコストの数字そのものは、トラッキングは必要だが過度に追うべき指標ではなく、結果として後からついてくるもの、という発想だそうです。

「NPSを上げる」という行動の要素分解とKPI

独立要素ではなく、お互いに関連しあっていると思いますが、私の考察だと下記3つだと思います。
1. 「商品・サービスの質の磨き上げ」
2. 「関わる人全てとの対話の質の磨き上げ」
3. 「倫理観の磨き上げ」

商品・サービスの質の磨き上げ

キーワードは以下3つかなと思いますが、他にもあるかもしれません。
「パーソナライズ」
「クラフトマンシップ」
「地域文化密着」

この3つについて、KPIとなりうる指標のイメージです。

  • パーソナライズ
    提供サービスの全体像を100%としたときに、何%がパーソナライズされているか

  • クラフトマンシップ
    製品不良率、製品の寸法や仕上がりが設計基準内に収まっている割合、返品率・クレーム率、サービス待ち時間の平均、お客様による接客スキル評価、取引先のうちサステナブル型企業の割合、eNPS(従業員のエンゲージメント)など

  • 地域文化密着
    取引企業の中に、重視したい地域の企業が何%含まれているか、実施した施策の中に地域文化に関連するものは何%含まれているか

関わる人全てとの対話の質の磨き上げ

キーワードだと思うものを、以下3つ挙げてみました。
1. 透明性
2. 外部との共創
3. 長期的な人間関係の構築

これら3つについて、KPIとなりうる指標はこんな感じだと思います。

  • 透明性
    株主・取引先・消費者・外部パートナー・従業員それぞれに対して行った説明の回数、倫理的な説明に関する国際基準などを何%導入できているか

  • 外部との共創
    外部パートナー(他企業、NGO、自治体など)との共同プロジェクト数、ファンや他部署の意見を開発や改善に取り入れた回数、自社資金を使って社会のために行動したプロジェクト数(教育・地域支援・環境保護など)

  • 長期的な人間関係の構築
    関わる人それぞれの満足度スコア、リピート購入率、取引先との契約更新率、サプライヤーの納期遵守率、従業員の会社への共感度合いを測るスコア、適正な労働時間内に収まっている人の割合

倫理観の磨き上げ

これは、投資の世界でよく言われる「ESG」というものがキーワードになるかと思います。
1. 環境(Environment)
2. 社会(Social)
3. ガバナンス(Governance)

上記3つについては、すでに色々な国際基準(=KPIとなりうる指標)が登場しています。例えば、このようなものがあるようです。
GRIGlobal Reporting Initiative:国際的に認められたESG基準。
SASBSustainability Accounting Standards Board:業界ごとに特化したESG基準。

また、これらを非常に高い基準で満たした企業に対する認証「B Corp」というものもあります。

私も知ったばかりなので、これから勉強します。。ひとまず私の勉強用も兼ねてリンクをつけて、次に行きましょう。

サステナブル経営の元での意思決定と説明の仕方

ビジネスは、小さなアクションから会社全体を変えるような意思決定まで、日々意思決定と説明の連続です。そして、説明相手も、社内では直属の上司や部下から社長・全スタッフまで、社外では、クライアント、パートナー企業、最終消費者、株主まで様々です。
サステナブル企業で働いているスタッフの話をよく聞いてみると、この意思決定と説明の仕方が、短期利益追求型の企業と明確に異なると感じました。

そこで、ここでは、私がサステナブル企業で働いていると仮定し、「社内で新規事業を立ち上げるためにCEOと役員に計画を説明する」というシチュエーションを想定して、経営陣に送る説明資料の構成をまとめてみたいと思います。シチュエーションを限定しましたが、他の人や場面でも基本は同じなのではと感じています。
(下記の構成は、ChatGPTにOKと言ってもらったので、細かい点の工夫の余地はあれど、方向性としてはこうなのだと思います。)

事業の哲学

私個人や身近な人の実体験におけるストーリーテリングから始める。そして、哲学的に深く掘り下げて、世界観と本質的な提供価値を提示。それが、会社の哲学と合致していることを示す。他社事業との差別化や自社事業のポジショニングは、哲学のところになってくるので、競合他社と哲学がどう違うかを示す。

提供商品・サービスのビジネスモデル

哲学をもとに、ビジネスモデルの詳細設計を説明。その際、「NPSを上げるための要素分解」の項目で示した、「サービスの質」「対話の質」「倫理観」がどのようにビジネスモデルに反映されているか、細部まで詰めて話す。また、このビジネスのリスクについても分析してまとめる。

事業の数値計画

NPS、売上、コストの短期・中期の数値計画を示す。

NPS:社内の他の事業や競合他社と比較しながら、最初の1年は四半期ごと、その後は3年後まで示す。そのためのアクションプランも追記。

売上とコスト:NPSの数値計画に応じて、計算式を組んでシミュレーション。3年ぐらいで損益分岐点を越えるように作る。また、上・中・下の3パターンぐらいで数値予測を提示。
※「3年」と書いた根拠
ドイツの開発途上国のサステナブルビジネス向けファンド「GIZ」が、3年給付になっていることから。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

事業の効果測定方法

KPIとトラッキング方法を提示。「NPSを上げるための行動の要素分解とKPI」で上げたものなどを活用する。経営層への報告頻度と内容とともに合意する。重要KPIについては、数値計画として盛り込む。

短期的なアクションプラン

計画を達成するための短期的なアクションプランを、資金計画・人員計画とともに説明して、合意する。

トラッキングの進捗報告

合意した期間における進捗を報告する。報告において大事なのは、「達成したか未達だったか」ではなく、「なぜそのようになったのか」「今後どのようにアクションするか」「今後の数値計画に変更はあるか」の3点。これらを誠実に説明し、必要であればサポートをもらう。

あれ?「四半期決算」って?

ここまで読まれた方は、「こんなビジネススタイル、欧米の投資家は受け入れてくれないんじゃないの?」と思われたかもしれません。私も思いました。日本では、「欧米の基準に従って四半期決算を導入して、短期利益追求が加速した」「海外の機関投資家が短期利益を出すようプレッシャーをかけてくる」と言われがちですよね。
ここについて、アメリカ人のビジネスエリートとChatGPTに確認した結果、実は日本社会は誤解しているかもしれないということが分かってきました。

欧米企業が「四半期決算」を導入した目的

投資家は、企業にとって、いわば「出資してくれる仲間」ですよね。上記で説明した、「関わる全ての人」のうちの一部です。その人たちに対して透明性を高い次元で確保して対話の機会を増やし、信頼関係を築きましょう、ということが、「四半期決算」の導入目的のようなのです。年1回の株主総会だけでは、仲間との信頼関係なんて築けないでしょ、と。言われてみれば、そりゃそうだ、って感じです。そして、株主が適切に迅速に判断が下せるように、という目的もあるようです。ただ、ここで言う「迅速に」というのも、単に決算の数字を切り取って見切りをつけようとする投資家もいれば、企業の長期戦略・ギャップの理由まで決算書から読み取って判断する投資家もいると思います。
つまり、「四半期決算」はあくまでも色を持たないツールなので、どう使うかは使い手次第なのではと思います。長期利益を求める投資家はそのような説明と結果を求めるし、短期利益を求める投資家はそのように行動する。ただそれだけだと思います。

「機関投資家」とはなにか

「機関投資家」はネガティブな意味合いで語られることが日本社会では多い気がするし、実際私もそう思っていましたが、調べてみると、そのような意味合いは特にないようです。
参考までに、ググったら一番最初に出てきた野村證券の解説文をつけてみます。

機関投資家

顧客から拠出された資金を運用・管理する法人投資家の総称。

一般に機関投資家と呼ばれるグループをいくつか挙げると、「投資顧問会社」、「生命保険会社」、「損害保険会社」、「信託銀行」、「投資信託会社」、「年金基金」などが主なものである。

生命保険会社や損害保険会社であれば、加入者の保険料収入であり、投資信託会社であれば、投資信託を購入した人たちの提供した資金が元手になる。機関投資家は大量の資金をまとめて運用するので、市場に与える影響も大きいものがある。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ki/kikantou.html

つまり、機関投資家には色んな法人があって、長期利益や倫理観を大事にする投資家もあれば、短期利益を上げることを好む投資家もいる、ということだと思います。その後ろには、資金を拠出した個人がいるので、どのようなニーズをターゲットにした機関投資家か、ということで、性質が変わってくるものと思われます。そして、もしかしたら国や地域によって特性はあるかもしれませんが、同じ人間である以上、機関投資家には、元から、長期利益型〜短期利益型まで色々いた、という解釈が正しいのかなと思っています。

なぜ多くの日本企業の短期利益追求が加速したのか

これはあくまでも推測ですが、2つのことが起こって、それが短期利益追求の車輪がどんどん回るようになってしまったのではないか、と思っています。

  1. 多くの日本企業が「四半期決算」制度の本質を理解し損ねた
    なんらかのコミュニケーション不足や情報不足、あるいは当時の日本が置かれた状況により、多くの日本企業(当然全てではない)が、「短期で立てた目標を確実に達成しなければならないという制度だ」と誤解してしまったのではないかと思います。

  2. 短期利益追求型の機関投資家が、多くの日本企業に目を付けた
    長期利益追求型のサステナブル企業では、短期利益追求型の機関投資家は目的を達成できません。そのため、そのような企業の株は買わず、短期利益を追求できる企業を探します。その時に目についたのが、「四半期決算」制度を誤解した多くの日本企業だったのではないかと思います。

この2つがかみ合って、短期利益追求型の投資家が日本企業にどんどんプレッシャーをかけるようになった結果、多くの日本企業の短期利益追求が加速していってしまったのではないか、と考えています。もし長期的に考えて経営したいのであれば、そのような短期利益追求型の機関投資家を寄せ付けず、引き寄せたい機関投資家に魅力的に思ってもらわないといけないのだと思います。
とはいえ、企業には機関投資家を選ぶことは難しいので、企業側が武装する必要があります。その武装兵器になるのが、哲学とビジネスアクション、そしてコミュニケーションスタイルなのではないかと思います。投資家は結局、同じ価値観を持った仲間同士。「類は友を呼ぶ」のだと思います。

ただ、この見方だけが全てではないとも思いますし、理想論の可能性もあるとは思います。いくら四半期決算が色がないツールだとは言え、四半期で公表するということそのものが、経営者にとって心理的プレッシャーになっている可能性もあるし、「ギャップの理由はこうで、こういうアクションに取り組んでいて、その効果が出るのにこれくらいかかります。だから待っててください」と堂々と言える経営者も、そんなに多くはないかもしれません。私は経営者になったことがないから分かりませんが、SNSのいいね数が気になる心理に近いのかなと想像します。元々ただ自分の好きなことを発信するためのはずだったSNSでいいね数が可視化されてしまうことで、いつの間にかいいね数を集めることが目的になってしまう…これは、私も含め多くの利用者が経験していることだと思います。いいね数可視化によって、良い方向の改善に向かえばいいのですが、本心を抑えていいね受けすることばかり投稿するようになったり、いいね数をお金で買ったりする現象は、あちこちで見られます。頻度高く可視化されるからこそ、個人も企業も、そこに振り回されないようにするために、寄って立つ哲学や存在意義がより大事になる、ということなのかなと思います。それができる企業や経営者は多くないからこそ、そのようなビジネスはより輝くのだと思うし、企業価値が長期的に伸びていくのかなと思いました。

終わりに

大変長い考察にお付き合いいただき、ありがとうございました。サステナブル型のビジネススタイルについて、業務イメージが少し湧いたようであれば幸いです。私も、少しずつこのスタイルでマーケターとして働けそうなイメージがついてきました。

改めてになりますが、サステナブル経営の鍵は、NPSと企業哲学の深みです。私も含め日本人の多くは、今、古来から日本が大切にしてきた哲学を失いかけているように思います。それを取り戻して実務に生かすことそのものがサステナブル経営であり、日本復活の鍵になる気がしています。

このことに気付いたので、今後、日本の哲学者(特に江戸時代の商人の哲学者)についても学びながら解説予定です。

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このnoteでは、日本で誤解されていそうなサステナブル経営を、私も学びながら紹介しています。もし「学びになった!」と感じられたら、「スキ」やコメントを残していただけると励みになります。
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