Scenting Director 原 三由紀-Scenting Design Academy 卒業生インタビューVol.1(後編)
卒業生maoが Scenting Design Academyの講師・卒業生にこれまでと、今、これからを聞いていきます。
今回ご紹介するのは、株式会社TREBLEの代表を務める原 三由紀さんです。TREBLEは企業や個人のブランディングのコンサルティングを行う会社で、三由紀さんはブランディングのためのアートディレクション、香りを使ったScenting ディレクションなどを行っています。また、ご自身でアロマブランド『indulgem』を手掛けています。三由紀さんには手がける事業やブランドのこと、Scenting Design Academyを受講した理由などお話を伺いました。三由紀さんはディレクターコース、デザイナーコース(座学)を修了されています。卒業生maoとは、ディレクターコース受講1期生として同級生です。
インタビューの様子を前後編に分けてお届けいたします。
(前編はこちら)
自分の中でずっと大切だった「香り」というもの
――Scenting Directorの仕事に楽しさを感じながらも香りのブランド『indulgem』を立ち上げた経緯を教えてください。
私が香りを事業の柱にしたのは、競合がどうとかビジネスとして可能性があるとか思ったのが理由であると同時に、純粋に香りがずっと好きでずっと癒されて支えられてきたことが大きな理由なんです。私、香りの力を心から信じているんですよね。
社会人になって1年とちょっと経った時に体調を崩したことがあるんです。精神的にちょっとバランスを崩しかけていたんですが、私はそれがすぐ体調に出たことに気づいたんです。異変を感じてすぐに病院に行ったので、決定的な病気にならずにメンタルも壊さずに戻ってこられた。自分の限界が来る前にそろそろやばいぞと気づくこと、そのときに思いっきり自分を甘やかすことが大事だって思ったんです。私にとって自分を甘やかすのに、1番効果があったのが香りでした。
――香りへの思いが『indulgem』を立ち上げるきっかけになっているんですね。
そうなんです。寝る前に自分の好きな香りを焚いて、癒しの音楽をかけ、ゆったりストレッチして。アロマの良い香りに包まれながら早めに眠る…それだけのことだったんですが一番自分を甘やかすことができて、限界ギリギリのところから戻ってこられたんです。だから、香りには絶大な信頼を置いています。香りを新規事業にしたのには、ビジネス的な観点はもちろんあるんですが、香りを絶対的に良いと思っている、香りを信じている、という私の信念のようなところから来ているところも大きいです。香りのすばらしさを伝える仕事ならやりたいと純粋に思えたんです。
――その想いをブランドに反映させたのですね。
そうなんです。ブランドの名前が『indulgem(インダルジェム)』というのですが、甘やかすという意味をもつ “indulge” と、自分を意味する “me” の2つの単語を合わせた造語で、”自分を甘やかそう” をコンセプトとするブランドです。私の香りに対する絶対的な信頼を体現しているのが、このブランドなんです。『indulgem』はコンセプトからキャッチコピー、デザイン、ビジュアルやツール、香りまで、全部自分でやっているので、自分の好きと強い思いがすべて込められた、こだわりにこだわった仕事を超えた意味を持つブランドになっています。
――『indulgem』の今後は?
『indulgem』は心から大事に思っているブランドなんですが、起業から今まで、法人向けの香りづくりの仕事をメインにやってきたので、ブランドの方にはそこまで力を入れてこられなかったんです。せっかくこだわってつくった思いのこもったブランドなので、今後はもうちょっと広げるところにも注力していきたいと思っています。最初は精油を販売することにこだわっていたのですが、いくつか商品を販売して精油を使い慣れていない人にも使ってもらうためには、商品を日常で使える生活雑貨や化粧品に寄せていく必要があると感じるようになりました。今は新商品としてボディクリームをつくっています。
――前回はロールオンの商品でしたね。次はボディクリームなんですね。
精油のことに詳しくなくても気軽に使って、気が付いたら自然の香りを身にまとっていたとなればいのかなと思って、ボディクリームを商品化することにしました。テクスチャーを0から開発しています。
ボディクリームができたら、来年はこれまでより「人に知ってもらう、広げていく」ところを意識した活動をしていこうと思っています。
――ボディークリームができたら三由紀さんの美容が好きっていうところの好きと香りへの想いが詰まった商品になりますね。
そうなんですよね。結局好きなことに足を突っ込むっていう感じになってきていますね(笑)。
私にとっては個人向けの商品の方が、より展開していくのは難しいと思っているので大きなチャレンジになると思います。
ワークショップで気づいた新たな香りの役割
――事業の今後はどのように考えていますか
法人向けのサービスは順調に広げていけている実感があるので、このまま徐々に広げていきたいと思っています。
そういえば、この前香りを使ったワークショップを開いたんですが、色々と発見がありました。”香りって、自己理解や相互理解にすごく貢献するんだな” ってワークショップを通して実感したんですよね。
――どんなワークショップだったんですか
個人ブランディングと香りのワークショップです。
個人がより自分をブランディングしていくのを、香りの力を借りて実現していくような内容です。なりたい姿の言語化、自己理解に香りを使うことで、ワークショップに参加してくださった方が劇的に変わる瞬間に立ち会えたんです。
今回のワークショップは自分に対してでしたが、一緒に働く誰かに対して香りを活用すれば他者理解にも活かせるなと思ったんです。企業研修に活用することで、チームビルディングや会社の理念の浸透などにも活かせるはずです。香りで会社をブランディングするのとは別の角度で、香りをツールにして企業活動に貢献することもできるんだなと気づきました。
――三由紀さんのお話を聞いていると「香り」ってツールであり言葉なんだなと実感します。
そうそう!なんかね、みんな香りをかぐと饒舌になるんですよ。ワークショップでは、つくった香りに最後に何か一つ精油をプラスするっていうのをしたんですよ。一人一人と話して香りにどういう要素を足したいか聞いて、プラスする精油を決めていったんです。自分自身を表す香りをつくるワークショップだったので、香りにもうちょっとこういう要素を足したいというのは、そのまま自分にプラスしたい要素と言い換えられると思うんです。
ある方が最初に自分の目指す姿を表す香りとしてつくった香りは華やかな香り。話を聞きながらプラスワンの精油を選んでもらうと、もうちょっと地に足がついたしっかりした香りを入れたいとおっしゃるんです。それは "ただ華やかなだけではなく、しっかりしたところも欲しい" という、その方自身が自分に求める要素なんですよね。
間に香りを挟むと、みなさん上手に言語化ができるようになるんだな、と感じました。それは発見であり、驚きであり、香りの可能性だなとあらためて思ったんです。
香りを使ってできること、私がまだ気づいていないだけできっと世の中にいっぱいあるんだろうなと思うようになりました。可能性は無限にあるなと。それを見つけて提案していけたらこんなにおもしろい仕事はないなと思っています。
――なんだかわたしまでワクワクしてきました。
そう思うとすごく可能性を感じません?
今後、香りの事業でどうやって自社の独自性を出していけばいいんだろうなとぼんやり考えていたんですが、ワークショップをしたことで視界が開けてきた感じが今はあります。TREBLEでしかできない香りの活用の仕方を発見していくこと、それが独自性になるんだなと今は考えています。
Scenting Designを広げて社会に還元したい
――最後にディレクターコースの受講を検討している方にメッセージをお願いします。
私は、自分を癒してくれて支えてくれたのが香りだと思っています。香りの良さを伝えたい、香りの可能性を広げたい、もっといろんな人に香りの恩恵を受けてほしいという気持ちがあるんです。ビジネス的に広げたいっていうのももちろんありますが、単純に香りが好きという気持ちも大きいですね。
香りが好き!興味がある!という方は、自分で楽しむのももちろん良いんですが、それを少し学びに繋げるだけで、香りの良さを人に伝えることができるようになります。同じ香り好きのみなさんと一緒に香りの良さを伝えていけたら嬉しいなと思います。
あと、香りを仕事にするとなるとデザイナーコースを思い浮かべる方が多いと思うんですけど、ディレクターコースはかなりおすすめです。生活やビジネスに役立てていくというのを考えるとディレクションの知識はめちゃくちゃ力になってくれると思っています。
――このインタビューを読んでくださっている方に伝えたいことはありますか。
今日絶対に言おうと思っていたことがあと1つあるんです!
アカデミーを受講する時は、そもそも起業した後だったので、ある意味、恵さんたちと同じ仕事をこれから広げていこうとしている存在なわけです。規模は全然違うけど、ある意味、競合です。実は自分が仕事としてすでにやっているって大きな声で言わない方がいいのかな?と思いながらアカデミーの門を叩いたんですよ(笑)。ただ、授業を受けてすぐに気づきました。アカデミーの講師の方々は、香りの価値や影響力を高めるために、同じ志で広めていく人、活躍する人を輩出したい、という思いでアカデミーを立ち上げています。自分たちのノウハウも信じられないくらいオープンに、私たちに教えてくれるんです。
出し惜しみをまったくしないで、ああするといいよ、こうするといいよって教えてくれます。私たちが活躍できるように本当に惜しみなく情報を提供してくれます。
私の事業も応援してくれていることを感じられて、すごくありがたいなといつも思っています。私もScenting Designを広げて社会にもアカデミーにも還元していきたいと心から思っています。こうやって応援してくれる人と出会えただけでも、アカデミーに通ったことに意味があったと思えます。
――講師の方々からScenting Designという文化を本当に広げたいっていうのが伝わりますよね。
そうそう!このScenting Designの文化を日本に広げる手伝いをしてね、その代わり惜しみなく知識も技術も精油も安く(笑)提供します、というスタンスですよね。純粋な気持ちで学びたい人には本当に良い学校です。私はそこにすごく感謝しているし、アカデミーを学びの場として選んで良かったと思っています。
あとは、勉強している友達ができるのもよかったです。ここまでマニアックに香りが好きな友達って普通にしていたら出会えないので(笑)。一緒にハーブを使ったレストランに行ったり、農家さんのツアーに参加したり、香りのあるお店やインスタレーションを見学に行ったりしています。同じ興味関心がある友達に出会えたのも、一人で勉強しているだけでは得られなかったことだなと思っています。
――三由紀さん、ありがとうございました。
(前編はこちら)
◯株式会社TREBLE HPはこちら
◯『indulgem』Webサイトはこちら
◯原 三由紀さん Instagramはこちら
◯『indulgem』Instagram はこちら
[取材・文]卒業生mao(Scenting Design Academy 卒業生)