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Vol.47『さぁ皆さん、ご一緒に♪』は、なぜ寒々しくなるのか?

『ヒロインの口が、常に半開きなのが気になる(笑)』…某雑誌で、そんな趣旨の映画レビューを見かけたのは2004年、ミュージカル映画「オペラ座の怪人」(注1)が劇場公開された時の話。
先日、遅まきながらリバイバル上映された同作品を観てみると、確かにエミー・ロッサム演じるヒロイン(役名:クリスティーヌ・ダーエ)の口元は常に半開きの印象!

これを普通の劇映画として考えると違和感を覚えるのですが、この作品の場合は『無理からぬ理由』も推察されまして、それはなにかといいますと…
『この作品のセリフが、ほぼ「歌唱」であること。』
「歌唱」する際の、口やノドの使い方(開け方)は、普段のおしゃべりとは異なるという事に加えて、即座に ” 求められる美声 ” を、 ” 正確な音程 ” で ” タイミング ” を逃さず出すには、口元やノドを常時 整えておく(開けておく)必要があったからではないか?…と推察する次第で。

{※例えるならば「いつ号砲が鳴っても走れるように、常時 ” クラウチングスタートの姿勢 ” をして待っている」様な事です。
…ただ同じ演目でも、別キャストによる英国のロイヤルアルバートホールで上演された『25周年記念公演』のバージョンを観てみると、こちらのシエラ・ボーゲス演じるクリスティーヌ・ダーエの場合、確かに(セリフ以外の箇所で)口を開いてはいるものの、それに ” 顔の微細な表情を組み合わせることで、口を開けている事が気にならない ” というテクニックを駆使!?していて、実にお見事!}

さてここで話題は変わりますが、 ” アマチュアの合唱団 ” とか、 ” アマチュアの吹奏楽団 ” が開催する ” 自主公演(演奏会)の客席 ” にいると、たま~にステージからの
『それでは、次の曲は皆様も ご一緒に歌いましょう!』
…という呼びかけに遭遇する事があります。
そして…それからこの次に(結構な頻度で)起こりうる、最悪の展開が…
『誰も歌わない』という、ただただ気まずい、誰も得をしない「地獄の時間」の経過(笑)

なぜ、こんな不幸(笑)が生まれるのかといいますと…
(1)見ず知らずの集まりの中で、いきなり声を出すのは恥ずかしい
…という最大の要因に加えて、もう一つの要因が、先ほどから挙げている
(2)今まで口をつぐんでいた状態で、いきなり歌唱するのは難しい
…という事実。

かつてステージの演者側だった私自身の自戒も交えつつ考えてみると、ステージの演者側は、上記(1)の問題点には気づいていても、(2)の問題点には無頓着な(というか、そもそも気づいていない)ケースが多い様に見受けられます。
{先ほど挙げた「走る」という例え話で言うと『今までおとなしく座らせておいた人に向かって、いきなり「さぁ、今すぐ一緒に走ろう」と誘う』…そんな ” 傲慢なお誘い ” をしていることに ” 誘っている側が無自覚 ” という事です。}

そうは言っても、 ” ステージと客席が、同じ楽曲を演奏・歌唱すると盛り上がるのは事実 ” で、 ” 何物にも代えがたい瞬間に成り得る(場合がある)のも、これまた事実 ” ですので、どうしても ” 『それでは皆さん、ご一緒に♪』という演出 ” をしたい場合、演者側には
「 ” トーク ” 等々で場を和ませつつ、 ” 発声練習タイム!? ” を作って、観客を ” 歌唱モード ” に持っていく」

「該当楽曲スタート」
…それくらいの、配慮をして頂きたいものです。
(曲がり間違っても、
「パンフレットやプログラムに ” 歌詞 ” とか ” 楽譜 ” 載せといたから、あとは勝手に客が歌うだろう」
…という、 ” 手前勝手 ” で ” 安易な考え ” に留まらない事を願うばかりです。)

では、今週も締めの吃音短歌(注2)

「おはよう」と 「ございます」の 間奏に 今日も奏でる 苦悶の休符

※「おはよう」がスムーズに言えても、次の「ございます」の ” ご ” が言いにくい事が多々ありまして…周りから見ると ” 休符 ” に見えるかもしれませんが、それは ” 体が暴走している瞬間 ” なので、本当にキツイのです。

【注釈】

注1)ミュージカル「オペラ座の怪人」

ガストン・ルルーによる同名小説の舞台化作品。
アンドリュー・ロイド・ウェバーが音楽を手掛けたバージョンは、ロンドンのウェストエンド、ニューヨークのブロードウェイ双方で、歴史的なロングランを記録した。
あらすじは…
「1861年 パリのオペラ座で、コーラスガールの一人だったクリスティーヌ・ダーエは、代役として主演を務めあげた事がきっかけで、幼少時の遊び相手だったラウル子爵と再会する。再会を喜ぶ二人だったが、ラウルからディナーに誘われた途端にクリスティーヌの表情が曇る。クリスティーヌに歌唱を仕込んだのは、オペラ座を影から支配する謎の人物 ” ファントム ” だったのだ…」
…といもの。
2004年には映画化され、更に2024年6月14日から4Kデジタルリマスター版によるリバイバル上映が行われている。
※下記は映画予告編です(1分17秒)↓

注2)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注3)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注3)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。

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